在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

良質な医療とは

良質な医療とは何でしょう?僕自身の解は、自分が患者だったら受けたい医療に尽きます。「自分が提供するサービスは、少なくとも自分が受けたいサービスでなければいけない、それがプロとしての最低限の一線だ」これを自戒としていつも診療をおこなっていま…

腰椎圧迫骨折について

腰椎圧迫骨折は、高齢の女性で非常によく見られる病状です。最近では、芸能人で松本伊代さんが圧迫骨折を受傷したと報道がありました。女性の身体は、40前後から大きく変化していくので、圧迫骨折は決して高齢者に限られた病気でないことを思いしらされまし…

パーキンソン病を科学する

中枢神経における神経細胞において ドパミン神経細胞の減少によりセロトニン神経細胞からドパミン放出されるようになります。これによりドパミンの減少が代償されるかに思えますが、 セロトニン神経細胞はドパミンの貯蔵できないという性質を持ちます。 これ…

湿潤療法再考(最高)について

高齢者の在宅医療において褥瘡というのは大きな問題となります。自身で身体の向きを変えられない+栄養状態の不良により皮膚が腐る(医学的には少し不適切ですが、一般の方の理解の為にあえて、こう表現します)。こうした褥瘡含めた傷に対して以前は消毒とガ…

高齢者の誤嚥性肺炎

患者さんの最期の時が近づくと発熱などを起こし息苦しくなることもあります。 意識状態が悪くなると抗生物質の投与と絶飲食となります。点滴をされるとこれを自己抜去しないよう身体拘束される場合が多いです。 こんなイメージです。こうした拘束は患者さん…

パーキンソン病を科学する

ドパの特徴として長期投与にて効かなくなる、効かない人が生じることが大きな特徴です。これは上図のように、投与初期には個人差少なく、血中濃度も変動が少ないのですが、長期投与にて急激な血中濃度の上昇と個人差が大きいことが示されます。いわゆるウェ…

胃薬の功罪

高齢の患者さんはポリファーマシーと呼ばれ沢山の薬を飲んでます。日本人は病院が好きであり、薬が好きです。そして患者さんが飲んでいる薬の代表として胃薬があります。その一つプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸の分泌を抑える胃薬です。この薬のおかげで、…

人生の最期が看取り難民とならないために

現在の日本における「人生の最期」の迎える場所として、実際には病院で臨終を迎える事例が80%、自宅で迎えるケースは12~3%という割合です。信頼できる統計では1951年は在宅死が82.5%、病院死が17.5%です。もちろん、現在の死因として癌などの…

パーキンソン病を科学する

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"96erm","text":"そして在宅医療に移行するのは、通院困難となる工夫が求められる時期から、どうやっても難しい時期に治療を委ねられます。","type":"unstyled","depth":0,"inlineStyleRanges":,"entityRanges":,"data":…

7月8日の逗葉薬剤師会での講演について

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"8.71.11"}">7月8日に逗葉薬剤師会にて講演させて頂きます。本会は薬剤師さん向けにて、一般の方は聴講できませんが、かなりコアでマニアなお話しを予定しております。在宅医療 | さくら在宅クリニッ…

家で看取るということについて

脳外科医として長らく仕事をしていた私の仕事の本質は、手術でした。 これに異論はありません。 ただ、現実の仕事は日本の高齢化の縮図の科でもありました。 脳卒中の7-8割は脳梗塞であり、ほとんどが保存的治療です。 つまり外科的介入はないのです。 脳卒…

パーキンソン病を科学する

パーキンソン病治療薬の王様がドパ製剤であるなら、ドパミンアゴニストはクイーンと呼べるでしょう。 メリットとしては ・動作などに対する底上げ効果が挙げられます デメリットとしては ・増量による幻視 ・麦角系製剤では心臓弁膜症 ・非麦角系製剤では突…

高齢者が首を寝違えた

高齢者が朝になって首の痛みや首が回らなくなったことを自覚し、「首を寝違えたようだ」と言って来院することがあります。 それは首の寝違えではなく、頚椎の偽痛風(Crowned dens syndrome)かもしれません。 今回は、頚椎の偽痛風を疑うポイントについて解…

偽痛風に関すること

「偽痛風(ぎつうふう)」はピロリン酸カルシウムが関節内に沈着する結晶性関節炎です。 高齢者に多い疾患(発症年齢はほとんどが60歳以上)なので、高齢者の発熱時には、鑑別に挙げておく必要があります。 病院勤務医時代に、入院患者の偽痛風の院内紹介が…

パーキンソン病を科学する

ドパ製剤の利点は ・効果発現がわかりやすい・診断的治療に有用 ・ほかの薬剤と比べて安価 ・幻覚のリスクが比較的低い であり、デメリットとしては ・消化器系副作用を来しやすいことより対策は、少量から開始する、増量しすぎない が重要です。在宅医療 | …

高齢者の入浴中の突然死を防ぐためにできること

冬場は高齢者が入浴中に突然死する事故が多いと言われています。 今回はそのメカニズムを解説し、そうならないためにはどうしたら良いのかについて解説します。 脱衣所や浴室が寒くなっていると、血管が収縮し、血圧が上昇します。 →お風呂に入り、体が温ま…

下腿浮腫に関係する薬3つ

むくみは内科的な原因(心不全、腎不全、低栄養など)であることが多いですが、整形外科で処方される薬が原因のこともあります。 処方される薬で、下腿浮腫に関係する薬をまとめてみます。 ①リリカめまい、傾眠などの副作用が有名ですが、浮腫の副作用もあり…

パーキンソン病を科学する

ドパの脳内への到達率は極めて低いものです。 空腸から血管内へ入るのにも様々な物質と競合します。さらに血管内から脳内へ入るには血液脳関門と呼ばれる関所を潜り抜ける必要があります。こうして脳内へ到達するのはわずか1%程度であり、ドパの分解阻害剤…

在宅診療での腸閉塞の診断:超音波所見編

腸閉塞は在宅診療において見逃してはならない病態です。そしてこれは、超音波で比較的容易に分かります。腸閉塞では腸管拡張しており、また、ケルクリング襞がkeyboard signを呈しています。さらに腸管内容物が行ったり来たりする、to and fro がみられます…

パーキンソン病を科学する

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"71ihp","text":"これらは、ドパが脳内へ到達しにくいことを示すものでありドパのやっかいな性質を示すものです。因みに、ヘリコバクターピロリに感染しているとドパが体内に到達しにくいと言われています。","type":"un…

訪問診療で最も大切なことは?

訪問診療で患者さんに聞く質問で一番大事なのはなんでしょう? 私は「食事はとれていますか?」だと思っています。 バイタルサインが正常で、食欲が低下していなければ、在宅療養は続けられると大まかに判断できます。 一方、食欲が低下していれば、感染症が…

パーキンソン病を科学する

上記グラフではドパはパーキンソン病の運動症状進行自体には毒にも薬にもならない?とも考えられます。 しかし、 ドパ(薬物)で運動 ①さびつかせない(脳・筋) ②心肺機能 ③悪い代償機構をリセット にてドパ製剤は有効とかんがえます。在宅医療 | さくら在宅ク…

パープルバッグ症候群

長期に尿道カテーテルが留置されている患者さんで、尿バッグが紫色であることを気にしている患者さんがいました。 これは、紫色採尿バッグ症候群(Purple Urine Bag Syndrome)とよばれていますが、特に気にする必要はありません。 尿バッグが紫色になる機序…

パーキンソン病を科学する

パーキンソン病は脳内でのドパミン不足にて生じる病態です。但し、ドパミンを直接投与しても脳内には届かず前駆物質であるドパ処方にて脳内のドパミンを補充する治療がパーキンソン病の主たる治療です。そして、ドパはパーキンソン病治療において50年間不動…

Give me liberty, or give me death !( われに自由を与えよ,しからずんば死を)

,"data":{"dynamicStyles":{"line-height":"2.16"}}},{"key":"cai7k","text":"最近の例では90代の女性で、認知症があり、勝手に歩かないように言ってもすぐに忘れて歩き出してしまうとのことでした。ちなみに、転倒して胸椎圧迫骨折を受傷した既往があり、転…

アムロジンについての深いい話

,"data":{"textAlignment":"left","dynamicStyles":{"line-height":"2.16"}}},{"key":"5gs7f","text":"①GERD(胃食道逆流症)\nもともとGERDがある人はカルシウム拮抗薬で増悪する(45.4%)。アムロジピンで多く(61.3%)、ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサ…

パーキンソン病を科学する

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"8.71.11"}">パーキンソン病の病態は非常に明解で、神経細胞からのドパミン減少に伴いドパミン受容体への興奮が減少することによります。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku…

ベルソムラ錠からデエビゴ錠への変更について

昨今、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の問題(依存、認知機能低下、転倒リスク増など)が言われるようになってきており、それに代わる睡眠薬として、より副作用が少ないタイプの睡眠薬を処方しています。 そのなかの一つに、オレキシン受容体拮抗薬があります。覚…

パーキンソン病を科学する

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"8.71.11"}">パーキンソン病の症状を呈する疾患は上記のように必ずしもパーキンソン病に限りません。次回より類似症状を呈する疾患及び治療に関して説明していきます。https://www.shounan-zaitaku.c…

敗血症は皮膚を診る

敗血症の定義は、「感染症で臓器障害が起きていること」です。 敗血症は早く対応しなければならず、そのためには、臓器障害が始まっている徴候を見抜かなければなりません。バイタルサインに加えて、身体所見としては、意識障害、尿量低下、皮膚の所見に注目…