在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ダイエットより大切なこと~高齢者医療は脱水との戦いです

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…

認知症を科学する

胃薬は漫然と継続処方されやすいくすりですが、高齢者においては弊害もある薬であることの認識が必要です。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

ダイエットより大切なこと~高齢者医療は食べれないことに対する戦いです

いつの時代もダイエットは、流行っています。 僕自身学生時代はラグビー部所属していたので、ケガをしないよう筋トレで体重増やしていた時期と、研修医時代に体重が8-10kg落ちた時期を除き多少の増減はありますが、最近20年は±1.5kg以内の変動です。 しかし…

認知症を科学する

高齢者とりわけ軽度認知症(MCI)とされている方において認知症が悪化したとして 相談受ける場合の多くは、せん妄と呼ばれる病態です。これは認知症いわゆるアルツハイマー病の増悪とは明らかに異なります。せん妄とアルツハイマー病の違いは、上記資料に示し…

抑制の悪魔

高齢になると認知機能の低下により歩きまわるという行動が多々見受けられます。またこうした患者さんに勝手に歩かないように言ってもすぐに忘れて歩き出してしまいます。さらにこのような患者さんは転倒して圧迫骨折や、転倒リスクは高いのです。本当にこの…

認知症を科学する

認知症に移行する前状態として軽度認知症(MCI)と呼ばれる病態が存在します。 このMCIに認知症薬を投与すると、どうなるか? 結果は副作用出現率が認知症薬>プラセボという結果でした。 つまり、MCIに対しては治療薬存在しないということが現実です。 またMC…

高齢者の夜は長い

ご高齢の患者さんの悩みの一つに眠れないというのがあります。高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間が…

認知症を科学する

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"8ujj3","text":"認知症のような症状を呈する疾患をまず除外します。","type":"unstyled","depth":0,"inlineStyleRanges":,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"ccgkc","text":"そして、65歳以上の記憶力は病歴と心理検…

認知症の妙薬2

前回運動による認知症予防効果について触れたのですが、逆の研究結果がBMJ. 2017 Jun 22;357に掲載されています。 内容は認知症を発症した患者とそれ以外の参加者の間で、追跡期間中の1週間あたりの総運動時間、低強度の運動をした時間、中~高強度の運動を…

認知症を科学する

高齢化に伴い認知症患者が増えるのは、説明可能ですが 資料見て頂くと分かる通り、血管性・詳細不明の認知症は横ばいにも関わらずアルツハイマー病の患者数が激増してます。 特に1999年から激増しており、この年は世界初の認知症治療薬であるアリセプトの処…

認知症予防の妙薬その1

アルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」のニュースが駆け巡りましたが、治療効果、治療適応、費用などまだまだ夢の薬でないというのが実感です。自身、年齢と認知機能のギャップのある方には、個人的によく3つの質問を20年近くしています。それは職…

認知症を科学する

まず、認知症という病気は存在しません。 これは、あくまで言葉の定義上の問題ですが、認知症は症候群です。分かりやすく言えば認知症は、様々な病気から成立する病態を含めた病気と定義されます。 ICD-10という国際傷病分類の定義を紐解きますと上記資料の…

コロナ感染症後の後遺症

コロナ感染後には様々な後遺障害が生じることが、徐々に報告されていますが、とりわけ慢性疲労症候群に移行す場合が非常に多いということです。そうした中で神奈川県立循環器呼吸器病センターの登録医療機関となることができました。 益々、勉強することが増…

ヒートショック現象

写真は逗子在住山内明徳様撮影 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

認知症を科学する

脳外科医として働いていた頃に認知症はどうでしょうか?という質問を星の数ほど経験しました。 そして、一般の方だけでなく認知症を専門領域とされている精神科、神経内科、脳外科の先生方も認知症に関する理解はかなり偏っている。 診断方法、鑑別etc そこ…

傷みに関する新しい治療 ハイドロリリースについて

在宅医療から少し離れますが、痛みに関する治療はとても難しいことです。治療を難しくしている要因は様々です。例えば、外来あるあるとして「肩から頭がズーンと重く痛いのです」という患者さんが来ます。何故痛いのか、どうしたらよいのか説明と治療に関し…

高齢者の薬剤管理

在宅の患者さんに対して薬を取りに行ってもらう、薬を管理するのは中々大変なことです。こうした場合、薬剤師による居宅療養管理指導を受けることができます。これは、薬剤師が自宅あるいは施設に伺い、副作用がでていないか、薬がきちんと飲めているかなど…

胃薬の功罪

高齢の患者さんはポリファーマシーと呼ばれ沢山の薬を飲んでます。日本人は病院が好きであり、薬が好きです。そして患者さんが飲んでいる薬の代表として胃薬があります。その一つプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸の分泌を抑える胃薬です。この薬のおかげで、…

良質な医療とは

良質な医療とは何でしょう?僕自身の解は、自分が患者だったら受けたい医療に尽きます。「自分が提供するサービスは、少なくとも自分が受けたいサービスでなければいけない、それがプロとしての最低限の一線だ」これを自戒としていつも診療をおこなっていま…

3/25 Zoom勉強会「褥瘡を科学する」行わせて頂きます

先月「認知症を科学する」という勉強会を開催させて頂き、沢山の方に御視聴頂きました。 対象は、医療に関わるスタッフへという目線でしたので、やや細かい数字を入れ込みましたので皆さまの満足度が大変気になるところではありましたが、、、 加齢に伴い、…

「湿潤療法」について

高齢者の在宅医療において褥瘡というのは大きな問題となります。自身で身体の向きを変えられない+栄養状態の不良により皮膚が腐る(医学的には少し不適切ですが、一般の方の理解の為にあえて、こう表現します)。こうした褥瘡含めた傷に対して以前は消毒とガ…

自分の最期は決められる時に決めておく

人の最期は、だんだんと花が枯れるように元気がなくなります。そして、最後には自分の意思を伝えることが難しくなります。そして、これからの超高齢化社会において最後をどうするかとても大きな問題となります。私が生まれた1970年代において一年間に亡くな…

治す医療から支える医療へ

脳外科医の仕事は、病院でしか行えない『治す医療』最たる領域だと考えます。 そこには、患者さんの価値観や生き方を反映させることは難しい場合多いのです。 一方の在宅医療では治せない病気、加齢に伴う心身衰弱で介護や医療が必要となる『支える医療』だ…

安易な抗生剤の使用を止めるべき理由

日本人は無類の薬好きです。高齢者で薬を内服していない患者さんを診るのは年に数回くらいかもしれません。そして安易な投薬の危険に関してバイオアベイラビリティの観点から。バイオアベイラビリティとは、服用した薬剤が全身循環に到達した割合を示した値…

介護用ベッドを借りる方法

在宅医療をするには介護保険に精通しておかなければなりません。在宅医療の患者さんは基本的に外来に通うことが難しい患者さんです。なので、当然ベッドでの生活が多くなります。ここで、当然のようにベッドと書きましたが、畳の上に布団を敷いて寝起きする…

高齢者が食べれなくなったら

老衰の末期や末期がんなどで食べられなくなった患者さんを自宅で診ている場合に食べれなくなったら何もしないという選択があります。但し、こうした選択が中々踏み切れない場合があります。やはり何もしないという選択は心情的に選択しにくいものです。そう…

高齢者の肺炎

訪問診療を受けている患者さんは、寝たきり状態であったり、認知症、脳梗塞の既往があったりで、誤嚥性肺炎を起こしやすい方が多いです。実際、高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎であるといわれています。誤嚥性肺炎を予防するためにできることを以下に書い…

高齢者の風邪

一般的に風邪にはPL顆粒(総合感冒薬)がよく処方されると思いますが、この薬は高齢者には特に危険です。PL顆粒1g(1回分)にはプロメタジンメチレンジサリチル酸塩という副作用が多いため今ではあまり使われなくなった第一世代の抗ヒスタミン薬が13.5mg入…

正しいリハビリテーション

新版 間違いだらけのリハビリテーション 「起立-着席運動」のすすめ | 三好 正堂 |本 | 通販 | Amazon リハビリは30年前と比べて治療成績が悪くなっているとのことです。 筆者はその理由は、額に汗する地道な治療が少なくなってきたためではないかと言います…

漢方エトセトラ

人は認知機能が衰えると怒りっぽくなります。例えとして不適切かもしれませんが、ブレーキ性能が下がるのでしょう。こうした時によく使用する漢方に抑肝散という漢方があります。この漢方は不安神経症にも効きます。 印象的なエピソードとして、国内で最も高…