在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

在宅医療での高齢者の不穏症状を軽減!薬剤の減薬と予防策 #在宅医療 #高齢者

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

がん緩和ケア医療を科学する17

">モルヒネが呼吸困難に効くという根拠論文は下記ですが Effects of morphine on the dyspnea of terminal cancer patients J Pain Symptom Manage. 1990 Dec;5(6):341-4. その際の条件として 呼吸回数は41回(平均)、SpO2は95%(平均)でした。 またADLはベッ…

せん妄のリスクを下げる効果的な対策法とは? #せん妄 #リスク #対策

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

がん緩和ケア医療を科学する16

肺がん・肺転移の患者さんの呼吸困難に対して モルヒネは呼吸困難のエビデンスが多く蓄積されているが、モルヒネのみ投与とせず必ず鎮静も併用することが重要です。 モルヒネの内服から持続皮下へ早めにスイッチすることが肝であり、タイミングは内服できな…

がん緩和ケア医療を科学する15

医療用麻薬の使い方に関して私見ですが 1.内服できるかどうか 2.オピオイドナイーブか、既に使っているのか 3.時期:治療中か、抗がん剤を終了し時か、終末期か 4.症状:痛みの度合い、痛みの性状 5.状態:腎機能障害、肝機能障害などの患者さんの身体状態、…

心不全患者の苦痛を取り除く新たなアプローチ #さくら在宅クリニック #慢性心不全の終末期

以前の経験した患者さんです。 90代の男性で5年前に心筋梗塞を患いカテーテルの治療受けましたが、左心機能不全にて治療抵抗性の慢性心不全でしたが、ご自宅で生活させていました。その後発熱に伴う意識障害、体動困難にて入院となり高齢の奥様に説明し急変…

がん緩和ケア医療を科学する14

神経障害性疼痛への対処法として、リリカ、タリージェ、サインバルタを使いこなすことが必要と考えます。 ※リリカ、タリージェの鎮痛機序は、疼痛を引き起こす神経伝達物質の抑制でありサインバルタの機序は下行性抑制系の賦活化です。➤使用方法としては、タ…

転倒リスクを減らす在宅医療の取り組み #高齢者 #転倒予防

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

がん緩和ケア医療を科学する12

*チトクロームP450による分解であり、CYPによる薬物相互作用がない 肝臓でグルクロン酸抱合される *ヒドロモルフォンの代謝物に活性がないため体内に蓄積されない *患者さんが飲みやすい(間違えにくい) *呼吸障害にも効果あり(私見) ">#癌疼痛患者への…

高齢者の在宅医療における不穏症状対策:薬剤選択の重要性 #在宅医療 #不穏症状

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

がん緩和ケア医療を科学する11

">*モルヒネの特徴 代謝産物であるM3G,M6Gは眠気、呼吸抑制を起こす。 腎代謝にて腎機能障害にて蓄積あり注意が必要です。 *オキシコドンの特徴 代謝に活性なく腎不全患者さんにも使える Μレセプターを介した眠気、悪心、嘔吐、便秘は存在する CYP代謝であ…

せん妄に対する薬物治療でベンゾジアゼピン系の注意点 #せん妄 #薬物治療 #ベンゾジアゼピン

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

がん緩和ケア医療を科学する10

癌疼痛患者にどのオピオイドを選択すればよいのか? 本邦で使用できるオピオイドは現在6種類ですが、それぞれのオピオイドには特徴が存在します。 まず、オピオイド使用に関しては私見ですが下記の確認が必要と考えています。 1.内服できるかどうか 2.オピオ…

脊椎圧迫骨折の診断に重要な病歴とは?

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

がん緩和ケア医療を科学する9

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)が改訂されました。 ポイントとしては、 新規薬剤のバリエーションが増えました。取り分けナルサスなど自身がファーストラインで使用するオピオイドなどが収載されています。 ほかにも弱オピオイドに分類さ…

驚異的な回復力!陰圧閉鎖療法で完治した難治性褥瘡 #陰圧閉鎖療法 #完治

画像は、昨年5月頃体動困難にて筋層に達する褥瘡を生じた方です。 当クリニック介入まで4カ月様々な治療にて褥瘡が完治せず、当クリニックに相談あり治療開始。 まず当クリニックとして陰圧閉鎖療法(VAC療法)行う方針としました。 4カ月の経過で全く治癒しな…

がん緩和ケア医療を科学する8

鎮静を実際に開始した際に、それを評価するスタッフとの共通言語が必要になると考えています。これにより、より鎮静が必要である、鎮静が深くなりすぎているなどの判断を行います。 具体的には苦痛の程度は、 STASにて意識水準を評価します。 またRASSにより…

心不全や腎不全のある高齢者には注意が必要な痛み止め! #セレコックス #NSAIDs

年をとると色々な箇所が痛くなります。腰痛などは、大なり小なりあると考えます。こうした際に痛み止めをどうするか。NSAIDsと呼ばれる痛み止めには胃潰瘍などを生じさせるリスクあり胃薬が必要です。痛み止めのロキソニンは切れ味は良いですが、その分副作…

がん緩和ケア医療を科学する7

では、持続鎮静に関して在宅医療に限らず専門家達はどんなスタンスで行っているのでしょうか。amano J, et al. J Pain Symptom Manage. 2018; 55:785-791.にょりますと 予後数日のがん患者の治療抵抗性の苦痛に持続的な深い鎮静を行う場合 徐々に増量して 結…

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015で警戒されるH2ブロッカーの影響 #血中濃度上昇 #せん妄

ガスター等のH2ブロッカーを長期間使用することで、高齢者の認知機能が低下するリスクが報告されています。これは中枢神経にもH2受容体存在することが、その理由です。ただし、こうした薬剤は脳内への移行はしにくいのですが、腎機能障害などにより排泄が遅…

がん緩和ケア医療を科学する6

">鎮静に関して理解する前にて用語の理解が必要です。 間欠的鎮静とは夜間のみ鎮静など一般的と考えます。 持続的鎮静とは調節型鎮静のように苦痛に応じて少量から調整する鎮静であり、 苦痛の強さに応じて苦痛が緩和されるように鎮静薬を少量から調整して投…

在宅医療での脱水評価にポケットエコーが役立つ! #在宅医療 #ポケットエコー

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…

がん緩和ケア医療を科学する5

よく聞かれる質問として鎮静による予後への影響、いわゆる鎮静により生命予後が短くなりますかという問いがあります。 Morita J Pain Symptom Manage2005の報告では 鎮静を行った患者群と行わなかった患者群との比較観察研究では観察開始から死亡までの生命…

老衰末期状態の高齢者に対する対策としての食欲不振治療

いつの時代もダイエットは、流行っています。 僕自身学生時代はラグビー部所属していたので、ケガをしないよう筋トレで体重増やしていた時期と、研修医時代に体重が8-10kg落ちた時期を除き多少の増減はありますが、最近20年は±1.5kg以内の変動です。 しかし…

がん緩和ケア医療を科学する4

鎮静の対象症状は?という問いに鎮静の対象は非常に多岐にわたります。一般的にせん妄、呼吸困難などが対象と想起しがちです。 Maltoni J Clin Oncol 2012からの報告では、痒み、嘔気なども対象となるものです。 せん妄54%、呼吸困難30%、続いて精神的苦痛19…

安心して眠れる高齢者のための睡眠薬選びのポイント

ご高齢の患者さんの悩みの一つに眠れないというのがあります。 高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。 高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間…

がん緩和ケア医療を科学する3

苦痛緩和と鎮静に関しては、苦痛緩和と鎮静に関しては 救急やICU、精神科医療、緩和ケアの分野でその目的は大きく異なります。 緩和ケアの分野での鎮静の目的は 臨死期には、標準的な緩和治療に反応しない耐え難い苦痛が出現する場合があり、意識を保ったま…

在宅医療の革新、クーデックエイミーで麻薬投与が簡単!

在宅医療において癌患者さん、慢性心不全の患者さんなどで麻薬や鎮静の薬を精密に投与する必要が生じます。こうした患者への投薬行う場合、今までは機器をレンタルして投薬を行っていましたが、在宅でも使用できる機器が登場しました。 名称はクーデックエイ…

がん緩和ケア医療を科学する2

在宅診療で持続鎮静するための重要な約束ごとして 関係者全員の同意が必要です患者さんが判断できない状態だったらどうするか?ご家族の同意が必ず必要です。 鎮静に関しては、呼びかけで反応できる程度の鎮静(調節型鎮静) or 深い鎮静(持続型鎮静)が存在す…

在宅医療のケアとサポート | リウマチ性血管炎患者の事例

在宅医療は医療的側面が下がり、ケアやサポートという比率が高医療です。 ただし、病状によっては医療的な側面が上がります。 上記の画像はリウマチ性血管炎にて膝上より下肢切断を診断された患者さんです。 北関東でお一人で住まわれていて、息子さんのいる…