在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

認知症の行動・心理症状に対する薬物療法

施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりし…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 58

大腸がんのステージ別治療として 0期は粘膜内にとどまるものであり、内視鏡切除にて5年生存率は95%です。 Ⅰ期は腸管壁の固有筋膜層までの浸潤、リンパ節転移なしで外科的切除により5年生存率は90%です。 Ⅱ期漿膜への露出または周囲への浸潤してリンパ節転移…

在宅医療における尿路感染症について

JAMAに在宅診療(外来)での尿路感染症の診断と管理に関するレビューが掲載されています。いわゆる膀胱炎を含む尿路感染症に遭遇する機会は、すべての外来診療を行う医師にとって、きわめて多いものと思われます。非常に重要な知見が含まれていると思い、まと…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 57

今回から、大腸がんについて詳述していきます。 がん死亡数は男女合同で第2位(男性3位 女性1位)であり、がん罹患数は男女合同で1位の疾患です。 大腸がんの予後は化学療法の進歩にて劇的に改善してます。 過去15年の治療薬の進歩で予後が改善しました。 生存…

急変の前に対応するために

状態が悪いと連絡があり往診してみると、すでにショック状態になっていることがあります。ショック状態が放置されると、心肺停止状態になりいわゆる急変してしまいます。 急変していると、最大限の医療資源を投入したとしても、救命することは難しくなります…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 56

胃切除後の合併症として重要なものを挙げると ①ダンピング症候群は早期と後期に分けて考える必要があります ◆早期は食物が小腸へ突然入ることにより生じます 症状としては、動悸、冷や汗、ふらつき等が挙げられます ◆後期は高血糖による症状で、次に反応性の…

GPT-4×在宅診療:GPT-4にて患者さんとのコミュニケーションを更なる深化へ

GPT-4×在宅診療:GPT-4にて患者さんとのコミュニケーションを更なる深化へ LINEにGPT4搭載させてみました(*患者様専用QRにて提示のQRは読み込めない形に編集しおります)。 仮説・目的は、患者さんとのコミュニケーションをAIにてより深くできるか?であり、…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 55

胃がんの化学療法における治療の副作用は 殺細胞薬による骨髄抑制とそれに伴う発熱性好中球減少症・感染症に注意が必要です。 S-1:嘔気、倦怠感、下痢、骨髄抑制、肝障害 オキサリプラチン:末梢神経障害、アレルギー反応、嘔気・嘔吐、骨髄抑制 シスプラチン…

高齢者が首を寝違えた

高齢者が朝になって首の痛みや首が回らなくなったことを自覚し、「首を寝違えたようだ」と言って来院することがあります。 それは首の寝違えではなく、頚椎の偽痛風(Crowned dens syndrome)かもしれません。 今回は、頚椎の偽痛風を疑うポイントについて解…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 54

胃がんのステージ別治療として 1期は胃壁の固有筋膜層浸潤まで及びリンパ節転移2個までです。 この場合外科的切除ないし内視鏡切除で治癒率は90%と非常に高くなります。 3期は周囲への浸潤及び多数のリンパ節転移ありであり、外科的切除+補助化学療法とな…

偽痛風に関すること

「偽痛風(ぎつうふう)」はピロリン酸カルシウムが関節内に沈着する結晶性関節炎です。 高齢者に多い疾患(発症年齢はほとんどが60歳以上)なので、高齢者の発熱時には、鑑別に挙げておく必要があります。 病院勤務医時代に、入院患者の偽痛風の院内紹介が…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 53

胃がんの治療総論を述べます 切除が治療の原則ですが、切除不能例に関して 化学療法感受性のがんであり半数以上の患者に著効しますが、2nd ライン以降は効果が下がるのが特徴です 臨床試験での生存期間中央値は約13カ月です 乳がん同様、HER2陽性胃癌にはト…

高齢者の入浴中の突然死を防ぐためにできること

冬場は高齢者が入浴中に突然死する事故が多いと言われています。 今回はそのメカニズムを解説し、そうならないためにはどうしたら良いのかについて解説します。 脱衣所や浴室が寒くなっていると、血管が収縮し、血圧が上昇します。 →お風呂に入り、体が温ま…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 52

今回から胃がんについて述べていきます まず一般論として ・罹患率が大腸がんに次いで2位 ・内視鏡治療や胃切除術が治療の基本 ・個別化治療の開発が期待される ・ヘリコバクターピロリ感染が原因の多くを占める ・症状がある患者は進行がんが多い 切除不可…

下腿浮腫に関係する薬3つ

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"dou7e","text":"処方される薬で、下腿浮腫に関係する薬をまとめてみます。","type":"unstyled","depth":0,"inlineStyleRanges":,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"d7jk6","text":"①リリカ\nめまい、傾眠などの副作用…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 51

がんは落ち着いていて経過観察されている場合において、在宅医療医注意すべきことは何でしょうか? まず、治療後がんが根治されているかどうか確認が必要です。 具体的には、治療の晩期毒性としての リンパ浮腫、放射線性肺臓炎、末梢神経障害、不妊症、血管…

在宅診療での腸閉塞の診断:超音波所見編

腸閉塞は在宅診療において見逃してはならない病態です。そしてこれは、超音波で比較的容易に分かります。腸閉塞では腸管拡張しており、また、ケルクリング襞がkeyboard signを呈しています。さらに腸管内容物が行ったり来たりする、to and fro がみられます…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 50

乳がんの治療の副作用に関してホルモン療法においては タモキシフェン SERMs(selective estrogen receptor modulator):抗エストゲン薬 エストロゲンに競合拮抗するので、更年期症状、血栓症、子宮体がんリスクがあります。 アロマターゼ阻害薬(AI剤)、LHRHア…

訪問診療で最も大切なことは?

訪問診療で患者さんに聞く質問で一番大事なのはなんでしょう? 私は「食事はとれていますか?」だと思っています。 バイタルサインが正常で、食欲が低下していなければ、在宅療養は続けられると大まかに判断できます。 一方、食欲が低下していれば、感染症が…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 49

乳がんの治療の副作用について詳述します まず一般論として、殺細胞薬 は骨髄抑制による発熱性好中球減少症・感染症起こします。 各論としてアンスラサイクリンは嘔気、嘔吐、倦怠感、骨髄抑制心毒性(ドキソルビシン500mg/m2以上で増強する)に注意が必要です…

Give me liberty, or give me death !( われに自由を与えよ,しからずんば死を)

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"62iam","text":"最近の例では90代の女性で、認知症があり、勝手に歩かないように言ってもすぐに忘れて歩き出してしまうとのことでした。ちなみに、転倒して胸椎圧迫骨折を受傷した既往があり、転倒リスクは高い方です。…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 48

乳がん治療の代表的な薬を説明します 分子標的薬として トラスツズマブ(ハーセプチン)はHER2陽性乳がんの特効薬であり、比較的副作用が少ない特徴があります。 ベルシズマブ(パージェタ)はトラスツズマブとの併用で効果があります。 ベバシズマブはVEGF阻害…

パープルバッグ症候群

長期に尿道カテーテルが留置されている患者さんで、尿バッグが紫色であることを気にしている患者さんがいました。 これは、紫色採尿バッグ症候群(Purple Urine Bag Syndrome)とよばれていますが、特に気にする必要はありません。 尿バッグが紫色になる機序…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 47

がんの個別化治療とは端的に表現するとがん種横断的な遺伝子異常に対して阻害剤の投与と換言できると考えます。 その一例としてNTRK融合遺伝子陽性固形がんを対象としたEntrectinib(ロズリートレク)の臨床試験結果(第1/2期)は、がんに対する治療は臓器別でな…

アムロジンについての深いい話

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"aath7","text":"①GERD(胃食道逆流症)\nもともとGERDがある人はカルシウム拮抗薬で増悪する(45.4%)。アムロジピンで多く(61.3%)、ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)で少ない(12.5%)※\n機序は、血管平滑筋を…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 46

治療の標的になる遺伝子異常として肺の非小細胞がんと例に考えると Driver mutaion(ドライバー遺伝子変異):癌化と癌の増殖に重要な特定の遺伝子変異 においては分子標的薬が有効です。 具体的には遺伝子産物の働きを抑制し腫瘍の増殖を抑える高い効果を示し…

ベルソムラ錠からデエビゴ錠への変更について

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がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 45

ここで乳がんにおいて特に進歩の著しい個別化治療:Precision Medicine≒がんゲノム医療について述べていきます。 従来の治療選択は臓器ごとに化学療法などの治療選択が行われいました。 しかし、がんゲノム医療においては、がんのゲノムを調べてそれに基づく…

敗血症は皮膚を診る

敗血症の定義は、「感染症で臓器障害が起きていること」です。 敗血症は早く対応しなければならず、そのためには、臓器障害が始まっている徴候を見抜かなければなりません。バイタルサインに加えて、身体所見としては、意識障害、尿量低下、皮膚の所見に注目…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 44

乳がん治療の代表的な薬を説明します ・ホルモン薬 タモキシフェン:SERMsは閉経前の患者様に使います(selective estrogen receptor modulators) 特徴としては下記です l抗エストロゲン作用:更年期障害 l部分的エストロゲン様作用:血栓症、子宮体がんのリスク…