在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者さんの意識障害

慢性閉塞性肺疾患 (以下COPD)の患者さんが意識障害を生じている場合は、かなり緊急度の高い病態です。ただし、こうした患者さんは恒常的に血中二酸化炭素(CO2)の濃度高く酸素投与に注意が必要とされています。その理由は正常の人は血中CO2濃度の上昇によって…

褥瘡を科学する9

トップドレッシング(2次ドレッシング)使用の際は、資料が示すように湿潤環境、感染管理に考慮することが必要です。 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com) #在宅医療医に必要な褥瘡治療に関する知識 #逗子、葉山、横須賀市、鎌…

高齢者の誤嚥性肺炎の診断スコア

在宅医療における高齢者において肺炎は非常に起こりやすい感染症の一つです。人は無意識に嚥下をしてますが、これは何も食事をしているときばかりでなく、寝ている時も唾液などを無意識に嚥下しています。嚥下をするという機能も脳からの命令で行われている…

褥瘡を科学する9

トップドレッシング(2次ドレッシング)使用の際は、資料が示すように湿潤環境、感染管理に考慮することが必要です。 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com) #在宅医療医に必要な褥瘡治療に関する知識 #逗子、葉山、横須賀市、鎌…

ヒルドイドは乾燥剤として作用する

ヒルドイド(ヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドソフトクリーム)が皮膚に対し乾燥剤として作用していることがよく分かる症例を提示したいと思います。 90代男性。両足関節前面に非常に強い乾燥があり、痒みもあった患者さんです。皮脂欠乏性湿疹の診断で、ヒ…

褥瘡を科学する8

ドレッシング材の選択において、滲出液の量をめやすにドレッシング材を選択することが重要です 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com) #在宅医療医に必要な褥瘡治療に関する知識 #逗子、葉山、横須賀市、鎌倉市、横浜市の在宅医…

痛みのない傷の処置を目指して

当クリニックでは、褥創や傷を洗浄する際には水道水で良いと考えてますが、より痛みが生じないように、生理食塩水で洗うことを推奨しています。 生理食塩水は血漿浸透圧と同等な浸透圧を持ち、組織に対する刺激が少ないためです。 病院でよく行われているの…

褥瘡を科学する7

資料の様にドレッシング材を使用することも可能です。重要なことは、各ドレッシング材の特徴や創部の状態に合わせた大きさのドレッシング材を使用することです 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com) #在宅医療医に必要な褥瘡治…

リウマチ性多発筋痛症の診断と治療

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"8hhjd","text":"第95回日本整形外科学会学術総会において、「リウマチ性多発筋痛症の診断と治療 杉原 毅彦先生 聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科」という教育研修講演がありましたので、忘備録として…

褥瘡を科学する6

ドレッシング材を使用する際に重要なことは、各ドレッシング材の特徴や創部の状態に合わせた大きさのドレッシング材を使用するということです。 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com) #在宅医療医に必要な褥瘡治療に関する知識 …

褥瘡を科学する5

疼痛緩和を目的としたドレッシング材は上記資料のようなものがあります。 日本で販売されているドレッシング材は疼痛緩和する効用ありませんが、粘膜部をシリコーンにすることで角層傷めず、痛みを最小限にするドレッシング材が多く発売されるようになりまし…

認知症の行動・心理症状に対する薬物療法

施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりし…

褥瘡を科学する4

浸出液を吸収し保持するドレッシング材として資料のような被覆材が挙げられます。 これらの被覆材は、余分な浸出液を貯留させないように、創面の浸出液を吸収します。また、吸水力に優れ、かつ浸出液を保持し湿潤環境を保ちます。深さある創に充填することも…

踵部の褥瘡に関するクッション材の提案(在宅医療における褥瘡管理)

アルツハイマー型認知症の患者さんで誤嚥性肺炎起こし、ベッド上での生活が長くなり踵部に黒色壊死を生じてしまいました。 まず、黒色壊死部は肉芽形成を阻害する蓋のようになってしまいますので、ゲーベンにて融解させ 踵部の黒色壊死をゲーベンにて処置し…

褥瘡を科学する3

資料の褥瘡被覆材の重要な特徴として浸出液を吸収し保持するドレッシング材であることが挙げられます。 これにより余分な浸出液を貯留させず、創面の浸出液を吸収します。さらに吸水力に優れ、かつ浸出液を保持し湿潤環境を保ちます。また深さある創に充填す…

プレタールという薬~誤嚥性肺炎、認知症予防への期待

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"9.14.2"}">プレタールという薬は本邦から開発された抗血小板剤であり、この薬の第三相試験(その薬が本当に効果あるか、悪いことが起きないか実際の臨床で使用する試験です)において私もデータ処理な…

在宅医療における褥瘡を科学する2

褥瘡の状態によっては、壊死組織の除去が必要な場合もあります。こうした場合は、壊死組織を自己融解させる外用薬が有用な場合があります。以前と比べ、褥瘡治療の道具は格段に増えており、これらの特性を理解し、適切な治療が行えるようにしていかなければ…

在宅医療におけるイレウス(胃十二指腸より下の閉塞)嘔気・嘔吐への対応 ~とてもつらい腹部膨満感の原因と対処~腹水だけではない

消化器がんに限らず、婦人科、泌尿器科がんなど幅広く腹水貯留は生じます ただしがん患者さん腹部膨満感の原因は腹水だけでないことを常に念頭におく必要があります。 その一つがイレウス、サブイレウスであり腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金…

在宅医療における褥瘡を科学する1

今回から在宅医療において切っても切り離せない褥瘡を科学的考察させて下さい。 まず、ドレッシング材は上記の様に何種類かに分類できます。 示したドレッシング材は 創面閉鎖し、創面に湿潤環境形成するドレッシング材であり 粘着性のドレッシング剤が創周…

在宅診療における敗血診断

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 100

膠芽腫の治療とりわけ、化学療法に関して詳述します N Engl J Med 2005; 352:987-996にて発表されたStuppレジメンは衝撃的な内容でした それまで数十年間殆ど変化の無かった膠芽腫の治療において生存曲線を10-20%押し上げるものでした。 またそれ以外の治療…

在宅医療における高齢者の失神について

高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。 高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 99

膠芽腫の治療について詳述します 切除については 全摘画像で見える腫瘍部分を全摘する→ミクロの腫瘍が必ず残存する 全摘が不可能であれば部分切除、生検 切除した後は術後化学放射線療法を行います。これについては治療において2005年以降大きなパラダイムシ…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 98

膠芽腫(GBM)glioblastomaについて詳述します ・成人の原発性悪性腫瘍で最多です ・不整形なリングエンハンスメントを示します ・浸潤性に増殖し正常能脳との境界は不明瞭、画像の範囲を超えて浸潤します 原発性膠芽腫(primary GBM)とは、初めから膠芽腫であ…

在宅医療において患者さんが不穏・せん妄になったら

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 97

脳腫瘍について詳述します 患者数は、圧倒的に転移性>>原発性です。 転移性とは脳に転移してきた腫瘍であり、原発腫瘍としては肺、乳>消化器>原発不明の頻度となります。 ※予後は原発腫瘍の状態で決まる 原発性とは脳から発生した腫瘍であり、 膠芽腫な…

在宅医療における慢性心不全の終末期医療

以前の経験した患者さんです。 90代の男性で5年前に心筋梗塞を患いカテーテルの治療受けましたが、左心機能不全にて治療抵抗性の慢性心不全でしたが、ご自宅で生活させていました。その後発熱に伴う意識障害、体動困難にて入院となり高齢の奥様に説明し急変…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 96

泌尿器がんにおいて在宅医療医が注意することは、下記に挙げられます 腎がん ü画像で偶然発見される ü切除後は健常人と同じ ü分子標的薬と免疫療法の副作用に注意 尿路上皮がん ü再発が多い ü進行がんは胃がんなどの経過と同様に予後不良生存期間中央値1年 …

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 95

精巣がんは、過去には若年男性死因の第一位でしたが現在は転移がんも化学療法で根治可能 *一部のハイリスクは予後不良 (non-seminomaで縦郭原発、肺以外の臓器転移、腫瘍マーカー異常高値) SeminomaとNon-seminomaに分類 Seminoma 腫瘍マーカー:HCG,LDH と…

在宅医療と抑制

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…