在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

高齢者の脱水評価にポケットエコーが活用される

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…

心不全を科学する5

slow pathwayとfast pathwayは急性心不全にどれくらい関与するかに関して、下記の様な研究結果があります。 これより、多くが2つのpathwayにて心不全が増悪することが分かります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtub…

高齢者の栄養管理に関する在宅医療の課題

いつの時代もダイエットは、流行っています。 僕自身学生時代はラグビー部所属していたので、ケガをしないよう筋トレで体重増やしていた時期と、研修医時代に体重が8-10kg落ちた時期を除き多少の増減はありますが、最近20年は±1.5kg以内の変動です。 しかし…

心不全を科学する4

肺うっ血の生じる機序は、体循環の血漿量減少=身体が脱水と勘違いに伴いレニンアンギオテンシン系↑にて水分が貯留する方向に走るslow pathway 体循環の血漿量減少=身体が脱水と勘違いに伴い、人体の血液の90%を貯留している静脈プールから血液の移動centra…

高齢者の不眠に対する適切な治療方法

ご高齢の患者さんの悩みの一つに眠れないというのがあります。 高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。 高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間…

心不全を科学する3

心不全においてうっ血の生じる機序は、体循環への駆出が足りない=脱水と勘違いしてレニン=アンギオテンシン系↑ これにより、水が蓄積し=肺うっ血が起こります You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMk…

運動量が認知症予防に有効か?専門家の意見#アデュヘルム

前回運動による認知症予防効果について触れたのですが、逆の研究結果がBMJ. 2017 Jun 22;357に掲載されています。 内容は認知症を発症した患者とそれ以外の参加者の間で、追跡期間中の1週間あたりの総運動時間、低強度の運動をした時間、中~高強度の運動を…

心不全を科学する2

心不全と脱水は、体循環として循環する血液量が足りていない(必要量を1.0とすると、循環量は0.9のような状態)のですが、病態は全く異なります。 これは、単純組織から戻る血液も足りてない状態です。 つまり肺循環が足りていない、体循環も足りていない=脱…

認知症リスク低下の秘訣

アルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」のニュースが駆け巡りましたが、治療効果、治療適応、費用などまだまだ夢の薬でないというのが実感です。自身、年齢と認知機能のギャップのある方には、個人的によく3つの質問を20年近くしています。それは職…

心不全を科学する1

本日より心不全の病態を科学してまいります。在宅医療は医療的介入(治す医療)よりケアが主体となる医療(苦痛の除去、栄養管理等)と考えがちです。 しかし慢性心不全治療は新しいパラダイムへ入り、在宅医療において慢性心不全に対しては治療により劇的に症状…

ヒートショックの危険性に警鐘!在宅医療の入浴基準とは? #ヒートショック現象

日本家屋は非常に寒い。木造家屋が多いためお風呂やトイレなど肌が露出する場所での気温が非常に低い場合が多い。元野球監督であり評論家である野村克也さんがお風呂場で亡くなっているのが見つかったなども記憶に新しいところです。推定でヒートショックで…

がん緩和ケア医療を科学する42

在宅医療においては、抗がん剤治療並行している患者さんも多くいます。 その為、抗がん剤治療後の副作用に対する知識も必要です。 抗がん剤治療後の副作用:脱毛、倦怠感、嘔気・嘔吐 特に手足の痺れは、よく言われる症状です 何故しびれが起こるのかについ…

危険な薬剤投与!高齢者の注意すべき薬事情#

日本人は無類の薬好きです。高齢者で薬を内服していない患者さんを診るのは年に数回くらいかもしれません。そして安易な投薬の危険に関してバイオアベイラビリティの観点から。バイオアベイラビリティとは、服用した薬剤が全身循環に到達した割合を示した値…

がん緩和ケア医療を科学する41

がんの悪液質に対する対処法としての王道、ステロイドの使用方法は 下記評価が重要です 1.倦怠感の原因が一次的的倦怠感であることをアセスメントする 2.ステロイドの効果的な投与時期かどうかをアセスメントする 3.コルチコステロイドを基本的に使う 使用に…

要支援や要介護1でも介護用ベッドを借りる方法

在宅医療をするには介護保険に精通しておかなければなりません。在宅医療の患者さんは基本的に外来に通うことが難しい患者さんです。なので、当然ベッドでの生活が多くなります。ここで、当然のようにベッドと書きましたが、畳の上に布団を敷いて寝起きする…

がん緩和ケア医療を科学する40

がんのつらい症状~倦怠感の解消には下記が重要です ①倦怠感の原因が悪液質であることをアセスメントする※二次的な原因の有無を評価 貧血・電解質異常・脱水・感染 ②悪液質にはステージが存在する 前悪液質・悪液質・不応性悪液質に分かれる※悪液質とはがん…

在宅医療における老衰と末期がん患者の栄養管理

老衰の末期や末期がんなどで食べられなくなった患者さんを自宅で診ている場合に食べれなくなったら何もしないという選択があります。但し、こうした選択が中々踏み切れない場合があります。やはり何もしないという選択は心情的に選択しにくいものです。そう…

がん緩和ケア医療を科学する39

エドルミズの作用機序とは? エドルミズの作用機序は エドルミズ自体が、グレリン様作用薬=胃から分泌される内在性ペプチドであり 体重・筋肉量・食欲・代謝を調節する複数の経路を刺激します。 但し、不応性悪液質の時期にはエドルミズは効かないものであ…

サブスタンスPと誤嚥性肺炎の関係:驚きの事実に迫る #サブスタンスP

訪問診療を受けている患者さんは、寝たきり状態であったり、認知症、脳梗塞の既往があったりで、誤嚥性肺炎を起こしやすい方が多いです。実際、高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎であるといわれています。誤嚥性肺炎を予防するためにできることを以下に書い…

がん緩和ケア医療を科学する38

がんのつらい症状~倦怠感には新しい治療選択としてエドルミズが使用できます。 倦怠感の原因となる悪液質の症状は3段階に分かれます 前悪液質 悪液質 不応性悪液質 に分類する中で エドルミズは悪液質この時期に使用します 不応性悪液質の時期においては、…

アップルウォッチでの歩行解析可能

「高齢者の歩行ー下肢障害の要因としての歩行動態とその予防法への試みー 橋本健史先生 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター」という講演があり下記に簡単にまとめてみました 高齢者の歩行の解析結果を示されましたが、高齢者のリハビリに応用できそうです…

がん緩和ケア医療を科学する37

がん終末期に起こる吐き気の原因と対策について 在宅医療にて一番注意しているのは腸閉塞(イレウス・サブイレウス)です。 1.腸閉塞(イレウス・サブイレウス)に対してはステロイド投与、胃管チューブの挿入、オクトレオチド投与などにて対応します。※PT…

高齢者への風邪薬処方に注意!抗ヒスタミン薬の危険性とは

一般的に風邪にはPL顆粒(総合感冒薬)がよく処方されると思いますが、この薬は高齢者には特に危険です。PL顆粒1g(1回分)にはプロメタジンメチレンジサリチル酸塩という副作用が多いため今ではあまり使われなくなった第一世代の抗ヒスタミン薬が13.5mg入…

がん緩和ケア医療を科学する36

便秘治療薬機序によりざっくり下記のように分類されます 酸化マグネシウム:便の中の水分を増量させる センナ:腸の動きを促進させる モビコール:腸液の分泌を促す薬 スインプロイク※医療用麻薬の便秘に特化した便秘薬 スインプロイクはオピオイドだけでな…

がん緩和ケア医療を科学する35

がん患者の6割が抱える便秘トラブルはどのように解決すればよいのでしょうか。 終末期のがん患者さんの8割は便秘に悩まされます。 便秘による腹痛をがんによる腹痛と間違える =オピオイド増量にて更に便秘が増悪は時に陥りがちな対応です。 ・なぜ便秘は見…

認知機能の衰えと怒りっぽさの関係を解説!不安神経症に効く漢方とは? #抑肝散 #認知機能衰え

人は認知機能が衰えると怒りっぽくなります。例えとして不適切かもしれませんが、ブレーキ性能が下がるのでしょう。こうした時によく使用する漢方に抑肝散という漢方があります。この漢方は不安神経症にも効きます。 印象的なエピソードとして、国内で最も高…

がん緩和ケア医療を科学する34

横隔膜下の担癌患者さんにおいてのつらい症状の一つにて浮腫があります。 原因に関しては リンパ浮腫、静脈うっ血性浮腫、深部静脈血栓症 が挙げられます。 具体的には、浮腫とは血液、リンパ液の水分が漏出したものです。 ガンによる浮腫の特徴は進行が早い…

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の功罪と在宅医療医に必要ながん治療に関する知識

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がん緩和ケア医療を科学する33

顎骨壊死とは聞きなれない言葉ですが癌治療の中で起こりうる症状として その認識と対応が必要です あごの骨の細胞が死に、骨が腐った状態となることであり ※根本的な治療法はないことがとても重要です 一旦発症すると治療困難であり予防が重要です *徹底し…

高齢者必見!カルシウム薬で「高Ca血症」のリスクが高まる! #骨粗鬆症 #内服チェック

腰椎圧迫骨折は、高齢の女性で非常によく見られる病状です。最近では、芸能人で松本伊代さんが圧迫骨折を受傷したと報道がありました。女性の身体は、40前後から大きく変化していくので、圧迫骨折は決して高齢者に限られた病気でないことを思いしらされまし…