在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

腰痛に関する考察~多裂筋の委縮の観点から

 

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腰痛に関する考察

 

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腰痛に関する考察
腰痛患者さんのMRIを撮影すると多裂筋の委縮が著明です。
報告では腰痛患者さんの80%に多裂筋委縮が生じているとされています。
腰痛と多裂筋の委縮を明快に説明した、正書、論文は残念ながら見つけられませんでした。
これは、腰痛=廃用性委縮も機序として推測されますが、何故多裂筋は特異的に委縮するのでしょうか?
あくまで私見ですが、一つの機序として椎間関節の変性肥厚は重要な要因と考えます。
高齢腰痛患者のXrayでは例外なく椎間関節は変性しています。
手術など見る椎間関節は、岩のようです。そして、この近傍を脊髄神経後枝内側枝が走行しています。
この神経は傍脊柱筋、臀部、大腿外側部を支配しており、腰痛の潜在的原因となります。
この神経の肥厚した椎間関節による絞扼は、後部皮神経絞扼症候群(POCNES)とも呼ばれ、当然神経絞扼に伴う
委縮は生じると考えますが、皆さんは如何と考えますでしょうか?
そして、後部皮神経絞扼症候群(POCNES)には筋膜リリース(ハイドロリリース)は無力と考えます。
こうした傷みはルートブロックなど対処的には奏功すると考えます。
また、手術で絞扼解除も一つですが、こうした場合は関節を破壊する手術にてPLIFなどの固定が必要となり、
かなり侵襲性高く外科的な治療の限界を示す一例です。
関節の肥厚変性は、加齢現象であり病気ではありません。
この辺りが人知の限界とも私は考えますし、ルートブロックで対処的に対応するのも一つと考えます。
手塚治のブラックジャックのこんな一節を思い出します
「人が人の身体をどうにでもできるなど、思い上がりも甚だしい」