在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

サブスタンスPと誤嚥性肺炎の関係:驚きの事実に迫る #サブスタンスP

訪問診療を受けている患者さんは、寝たきり状態であったり、認知症脳梗塞の既往があったりで、誤嚥性肺炎を起こしやすい方が多いです。実際、高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎であるといわれています。誤嚥性肺炎を予防するためにできることを以下に書いていきます。

誤嚥性肺炎はサブスタンスP(嚥下反射に関与する神経伝達物質)の減少が本態です。
サブスタンスPがキーワードになります。

大脳基底核脳梗塞を起こしやすい部位)に脳梗塞がおこる

大脳基底核にある黒質線条体から産生されるドーパミンが減少

迷走神経から咽頭喉頭、気管の粘膜に放出されるサブスタンスPが減少

嚥下反射、咳反射の低下

誤嚥する

つまり、誤嚥性肺炎を起こしやすい人は大脳基底核脳梗塞などの障害がある方で、誤嚥性肺炎を予防するためには、脳梗塞を予防すること、またサブスタンスPを増加させればよいことが分かります。

①口腔ケア

口腔ケアは、口腔内の細菌を減らすというよりも、口腔内の刺激でサブスタンスPを放出させることで、嚥下反射、咳反射を改善させるようです。
施設入所中の高齢者で、口腔ケアによって2年間の肺炎発生率を40%減少させることができたという報告があります。歯のない患者さんでも効果があるようです。

②薬剤 

ACE阻害薬(ARBでは×)はサブスタンスPの分解を阻害し咳嗽の閾値を下げることで誤嚥性肺炎を予防します。脳血管障害の既往がある高血圧患者に3年間ACE阻害薬を投与し、肺炎が1/3に低下したという報告があります。
アマンタジン(シンメトリル®)は大脳基底核からドーパミンを遊離させることで、誤嚥性肺炎を予防します。アマンダジンの投与で脳血管障害の既往がある患者で、肺炎が1/5に低下したという報告があります。
シロスタゾール(プレタール®)は抗血小板作用で脳梗塞を予防し、さらにサブスタンスPを増加させることで、誤嚥性肺炎を予防します。シロスタゾールの投与で脳血管障害の既往がある患者で肺炎発症率が40%に低下したという報告があります。
漢方薬の半夏厚朴湯もサブスタンスPを増加させることで誤嚥性肺炎を予防します。

これらの薬剤は、誤嚥性肺炎の予防のために処方するというよりは、副次的な効果をねらって処方します。

胃ろう増設患者は胃液逆流改善効果があるモサプリドクエン酸塩(ガスモチン®)の食前投与により肺炎が予防できるという報告もあります。

逆に、抗精神病薬、抗コリン薬は嚥下機能を低下させるため、できだけ処方を控えることも重要です。またPPIも肺炎を増加させると言われています。

③ワクチン

肺炎球菌ワクチン+インフルエンザワクチン接種

④食事

水や汁物は誤嚥しやすいのでとろみをつけるのが基本。
食事の温度が体温に近いと誤嚥しやすいです。熱い食物は熱いなりに,冷たい食物は冷たいなりに食べることによってサブスタンスPが口腔から放出されて,嚥下反射は改善されます。
また、カプサイシン(赤唐辛子に含まれる成分、カプサイシンプラス®)は強力にサブスタンスPを放出させます。メンソール(ミント)、黒コショウ臭覚刺激(黒コショウのアロマパッチ)を利用するのもいいかもしれません。

⑤摂食嚥下リハビリテーション

嚥下体操(パタカラ体操など)。

⑥体勢

胃食道逆流を防ぐために、食後2時間臥位にならない、30°ギャッチアップする、頸部前屈にするなどが言われています。

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