在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

ハイドロリリースとは

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#ハイドロリリース#腰痛#緊張型頭痛#非特異的疼痛

あるきっかけでハイドロリリースと非特異的疼痛に関して筋膜へのアプローチにて劇的に症状改善を目の当たりして、これを科学的説明と再現性ある治療の合理的説明により、敷衍したいと考えております。これからすこし腰痛、頭痛などへのアプローチ法としてのハイドロリリースに対し、科学的アプローチ行ってみたいと思います。

未破裂脳動脈瘤と診断された患者様へ

脳の病気 – 千葉徳州会 脳神経外科

未破裂脳動脈瘤について

未破裂脳動脈瘤とはクモ膜下出血の原因となる脳動脈瘤であり、脳動脈瘤の破裂前における状態を指します。脳動脈瘤とは脳動脈の血管壁が薄くなったりもろくなることで生じるものであり、そこが膨らんで血液が入り込みコブのような形状になります。このコブのことを指します。

動脈瘤の原因は現時点では、まだ明らかになっておりませんが、高血圧や喫煙、遺伝などが関連していると考えられています。この脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血となり、くも膜下出血脳卒中の中でも最も予後が悪いとされています。脳動脈瘤が破裂しくも膜下出血になると約1/3の方は死亡、約1/3の方は後遺症を生じ、残りの約1/3の方しか社会復帰できない恐ろしい疾患です。

 

症状

動脈瘤が破裂した際の最も特徴的な症状は「これまでに経験したことがないような激しい頭痛」です。未破裂脳動脈瘤の多くは無症状であり、脳ドックや検査で偶然に見つかるケースが殆どです。大きさや部位によっては周辺の神経を圧迫することで、例えば視野障害や複視や呂律障害といった症状がでる場合もあります。

手術適応

必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。一般的には、約5㎜前後以上の大きさの脳動脈瘤については、治療を前向きに検討することを推奨されています。しかし、部位、形状、年齢、健康状態、家族背景など患者様のあらゆることを加味したうえで治療の適応を判断する必要があるため、専門医の受診をお勧めします。

治療方法

もし治療が妥当と判断された場合は、「開頭クリッピング術」か「血管内コイル塞栓術」か、より安全に出来ると判断した治療法を選択して、それぞれの治療法の内容とリスクを十分に説明したうえで、クモ膜下出血予防目的で治療にあたるようにしています。

 

開頭手術:クリッピング

動脈瘤の根本を金属のクリップで挟み、破裂・出血を止める治療法です。直接術部を見ながら行うため、確実性が高く、同じ部分の再発リスクは低いといえます。

血管内治療:コイル塞栓術

コイル塞栓術は血管内治療の別称であり、足の付け根から細いカテーテルを入れて、X線透視画像を見ながら、脳の血管にまで到達させ、瘤の中にコイルをくるくると詰めていきます。このコイルにより瘤内の血液が血栓化し、瘤内に血液が流れ込んでくることを防ぎます(=脳動脈瘤の破裂を防ぐ)。また脳動脈瘤頸部(正常血管との境界)が広い場合は、コイルが正常血管に逸脱してしまう可能性があるため、金属の筒状の“ステント”を併用することで、頸部が広い脳動脈瘤でもコイルが逸脱しなくなります。

 

治療実績

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千葉徳洲会病院脳外科 治療成績

 

難治性疼痛に対する脊髄刺激療法(SCS)を開始いたします

千葉徳州会 脳神経外科 – 厚生労働省 千葉徳州会病院 沖縄徳州会 脳神経外科

下肢や上肢に関する疼痛で手術により、改善しない場合も残念ながら存在します。

こうした患者さんに対し、薬物治療だけでなくもう一つの選択肢として脊髄刺激療法(SCS)を開始いたしました。

以下は、脊髄刺激療法(SCS)に関して述べております。

脊髄刺激療法(SCS)とは

脊髄刺激療法(SCS)では、脊髄の硬膜外腔に直径1.4mm程度の、細くて柔らかい電極(リード)を挿入し、臀部もしくは腹部に植え込んだ刺激装置(ペースメーカに類似したIPG)に接続して、脊髄に弱い電気刺激を与えます。
痛みの感覚は、痛みの信号が神経から脊髄を通って脳に伝わることで認識されます。SCSを行い、脊髄に微弱な電気を流すことにより、痛みの信号を脳に伝えにくくします。

脊髄刺激療法(SCS)の対象疾患は

SCSは、神経の異常による痛みや血流障害による痛みなど、慢性難治性疼痛に効果があると言われています。

  1. 腰部脊柱管狭窄症
  2. 腰椎手術後症候群(FBSS)
  3. 末梢血流障害(ASO、バージャー病、レイノー病など)
  4. 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
  5. 帯状疱疹後神経痛

脊髄刺激療法(SCS)の効果

SCSにより、痛みが半分程度にやわらぐと言われています。
痛みが緩和することで、鎮痛薬を減らして副作用を軽減できたり、夜間熟睡できる、子供を抱っこできるようになる、など、生活の質が向上することが報告されています。

※SCSは痛みを緩和するためのものであり、痛みの原因を取り除く治療ではありません。
※効果には個人差があるため、通常、効果を判定するための刺激試験(トライアル)を行います。

脊髄刺激療法(SCS)の流れ

SCSでは、電極(リード)を試験的に挿入し、試験刺激期間中に患者さんご自身で効果を判定することができます(トライアル)。
試験刺激期間で効果を得ることができたら、体内に刺激装置を植込みます(本植込み)。
試験刺激期間で効果を得ることができなかった場合、挿入したリードを抜去します。

脊髄刺激療法(SCS)の注意点

  • 通常の生活で注意することは特になく、入浴や軽い運動、水泳なども問題ありません。しかし、一部の機器の使用や治療法の併用で、刺激装置が影響を受けることがあります。
  • SCSは痛みの原因を取り除く治療ではなく、痛みを緩和させるための治療です。痛みが和らぐことはあっても、痛みが無くなってしまうことは期待できません。
  • 刺激装置は腹部など目立たない場所に植込まれますが、患者さんの体格によっては、植込み部分が多少盛り上がることもあります。

病院HPに2019.6-2020.6までの手術実績を更新しました

  • brainkenichi.com

  • 病院HPに2019.6-2020.6までの手術実績を更新しました。
  • 当科にチームとして赴任して最初の一年間の手術治療実績を病院HPに挙げました。
  • 動脈瘤治療は初年度のみで72件行っております。今後も当科の特色である血管内治療による低侵襲治療に注力して参ります。
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コロナウィルスとクモ膜下出血

https://brainkenichi.com/

コロナウィルスと脳卒中の関係については、今後改めて述べさせて下さい。

ここでは、コロナとクモ膜下出血の関係について。

まず、フランスからは「くも膜下出血患者さんが激減している」と報告されていました。(J Neurosurg Sci. 2020 Apr 29. doi: 10.23736/S0390-5616.20.04963-2. )
ではコロナウイルス蔓延で、くも膜下出血は減るのでしょうか?
恐らくこれは減るのでなく、搬送が減っているのだと考えられます。
この論文では、くも膜下出血患者さんの搬入が減っている原因として、「コロナ感染を恐れて患者さんが病院を受診しない」ことが想定されています。つまり、病院でのコロナ感染を恐れるあまり、本来早期に受診して治療を受ければ救われるはずの方が、自宅で命を落としているのではないか、と想定されているのです。
マスコミでは毎日のようにコロナ感染の増加や、院内感染が報道されています。注意喚起のためなのでしょうが、全国の病院数から考えれば院内感染が起きたのはごく一部で、ほとんどの病院では院内感染を起こさずうまく診療ができていることになります。
しかも一旦院内感染を起こした病院は、再発予防が徹底されますから、むしろ安全になっていると考えられます。

以上を考えれば、脳卒中の症状が出ているのに、極めて低い感染リスクを恐れて病院にかからず、手遅れになるというのでは本末転倒だと思います。

以上より脳卒中を疑う症状(手足や顔の麻痺、言語障害、激しい頭痛など)がある場合には、ためらわずに救急車を呼びましょう。