在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ベルソムラ錠からデエビゴ錠への変更について

昨今、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の問題(依存、認知機能低下、転倒リスク増など)が言われるようになってきており、それに代わる睡眠薬として、より副作用が少ないタイプの睡眠薬を処方しています。 そのなかの一つに、オレキシン受容体拮抗薬があります。覚…

心不全を科学する

不整脈により発症する心不全として重要なものは、高頻拍性心不全である上室性頻拍症・心房細動とかんがえます。不整脈により心不全が生じているか否かは、正確には頻拍を元に戻すことによって心機能が回復するか否かです。そしてこの場合治療としてアブレー…

敗血症は皮膚を診る

敗血症の定義は、「感染症で臓器障害が起きていること」です。 敗血症は早く対応しなければならず、そのためには、臓器障害が始まっている徴候を見抜かなければなりません。バイタルサインに加えて、身体所見としては、意識障害、尿量低下、皮膚の所見に注目…

心不全を科学する

心不全×不整脈のナゼ? 不規則性(心室性期外収縮:PVC) 左室非同期性運動(完全左脚ブロック) 頻拍(上室性頻拍) 房室解離 心房細動 心不全患者さんに上記のような不整脈はつきものですが、これについて次項以降詳述していきます #高齢者心不全 #高齢者の不整…

排便性失神繰り替かえす高齢者について

最近の症例ですが、排便に伴い意識消失がある患者さんを施設入所中の患者さんにおいて経験しました。 排便の状況としては毎日少量ずつ出て、3~4日に1回大量に出る。便の性状は硬めで、摘便が必要なこともある。排便後に意識がもうろうとすることが月に1回く…

心不全を科学する

高齢者の血圧管理において」、大動脈弁狭窄症患者さんの血圧管理はどうすればよい?という問題があります。心臓の出口が狭く血圧を上げることにより、体循環を維持している側面あり、大動脈弁狭窄症=失神は非常によくあるエピソードです。 SEAS研究では BP …

高齢者の薬の量の調整について

高齢者は腎機能が低下している方が多く、腎臓で代謝される薬を内服した場合、薬の血中濃度が上がってしまうため、腎機能によって薬の量を調整する必要があります。腎機能が低下しているかどうかが分かるのは血清クレアチニン値ですが、クレアチニンは筋肉の…

心不全を科学する

起立性低血圧により生じる心血管イベントは下記のようになります。 ü心血管病の増加 ü心不全の入院増加 ü心血管死の増加 これらを予防するためには,下記を守ることが重要です。 1.血糖コントロール 2.弾性ストッキング 3.食後すぐに動かない 4.避けるべき薬…

めまいがハイドロリリースで改善?

私、某SNSでハイドロリリース研究会なるものを主催しておりメンバーは、もうすぐ1000人近くとなります。ただ、海外の文献などの共有をかなりしているので、非公開研究会としております。最近下記のようなハイドロリリースの応用がYou tube上にありました。 …

心不全を科学する

失神の原因として低血圧の基準値規定が必要です 男性の場合は以下 早朝家庭血圧108/68以下 夜間血圧87/50以下 女性の場合は以下 早朝家庭血圧90/68以下 夜間血圧84/49以下 問題となるのは反射性失神です、この場合起立性低血圧基準として以下が規定されます …

ヒルドイドは保湿剤なのか?

ヒルドイドソフト(ヘパリン類似物質軟膏)は保湿剤としてよく処方されています。 また、美容目的に処方を希望する人が急増したことにより、必要な人に届かなくなるなど、社会問題にもなりました。 そもそも、ヒルドイドソフトは保湿剤なのか?について、夏…

心不全を科学する

高齢者の失神についてthe SynABPM 1 studyは、興味深い結果を示しています。 早朝家庭血圧125以上 1回でもBPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い 早朝家庭血圧125以下 2回以上BPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い 特に超高齢者はガイ…

高齢者に対するモビコール配合内用剤の使用について

高齢者の便秘について浸透圧性下剤としては酸化マグネシウムを処方し、特に問題は感じていませんでしたが、昨今、高マグネシウム血症の問題が言われるようになってきています。 ※血清マグネシウム濃度と症状 高齢者の便秘について浸透圧性下剤としては酸化マ…

心不全を科学する

高齢者心不全において、失神という病態は非常によく遭遇する病態です。 では、血圧低下とは何でしょうか?そもそも血圧とは何でしょう? まず、血圧は心拍出量×末梢血管抵抗にて規定されます。 末梢血管抵抗↓にての血圧低下の典型は敗血症によるseptic shock…

レビー小体型認知症の自律神経症状

レビー小体型認知症の症状は以下の5つに分けられまず。 重要な順に、1. 自律神経不全型(迷走神経・交感神経節)2. せん妄型(脳幹網様体)3. パーキンソン型(中脳黒質)4. 精神病型(扁桃体~辺縁系)5. 軽度認知症型(大脳皮質) レビー小体がたまる…

心不全を科学する

心不全を予防するために行うべきこととして、高血圧の管理が重要です。 血圧はどれくらいに維持すればよいか?という疑問があります。 SPRINT Research Group.において 厳格降圧群と標準降圧群での比較が行われましたが、心不全で厳格降圧群の有意な効果を認…

在宅診療においてせん妄の治療への習熟は非常に重要です

せん妄への対応如何は、認知症患者さんを自宅で診れるか否かの重要な要素でもあります。そうした中でお勧めの良書、というかこれを頼りにせん妄に対する治療行っています『せん妄診療実践マニュアル 井上真一郎 羊土社』。本の帯には、「日本をリードする岡…

心不全を科学する

利尿薬の作用を規定する因子は、下記に挙げれます。特に吸収は重要であり、利尿剤はアルブミンに乗り腎臓へ向かいます。つまり低栄養状態では、殆ど効かないので、次項で述べますが注意点が色々あります。特に担癌患者の腹水では、殆ど低栄養であり利尿剤が…

高齢者の栄養管理

高齢者の栄養管理は、とても重要です。食べてくれない、食欲ないという頻繁に起こります。こうした時に経管栄養剤を処方します。なかでも、イノラスは1ml当たりのカロリーが経腸栄養剤の中では最も高く、栄養状態を短期間で改善させたいときに処方しています…

心不全を科学する

心不全における利尿薬の使い方はどうすればよい? 利尿剤の理解には、腎臓の生理学を理解する必要があります。正常な腎臓100ml/分の水分が糸球体から濾過99%再吸収します。なので尿量を増やすためには、糸球体濾過量を増やす、再吸収量を減らすことが必要と…

高齢者の転倒・骨折

超高齢化社会において、転倒・骨折などは非常に頭の痛い問題です。病院などでは、抑制同意書などを入院時に取得し夜間帯などはベッドから自身で動けなくなるようにします。実際の現場は、非人道的な印象を受けますが、他に方法が無いのが実情です。もし、転…

心不全を科学する

心不全×腎機能障害の治療はどうすればよい? eGFR 30までは治療は標準治療のまま。 eGFR 30 以下ではACE阻害薬はInitial Dipを起こすことに注意が必要です。 #高齢者心不全 #在宅診療 #心不全患者の腎機能障害 #心不全の新しい治療 在宅医療 | さくら在…

褥瘡に対する湿潤療法について

褥瘡に対してガーゼ保護する意味は無い!ということは度々触れてきました。自身も手術後の創部に対して、創部の治癒閉鎖を心配される症例に対してはカラヤヘシブという創傷被覆材を用いていました。但し、この被覆材は高価であり薬局などで購入できるもので…

心不全を科学する

心不全×腎機能障害の治療?としてsglt2阻害薬が選択肢として増えました。 Sglt2阻害薬は、どう扱えばよい?という問いにInitial Dipは4%程度生じる。また下記RCTから使用する腎機能障害の目安を参考にできます。 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (…

高齢者の寝たきり原因の治療の弊害~カルシウム製剤の補充

高齢者を寝たきりにする原因として重要なものの一つに骨折があります。具体的には大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨が折れる病気)、腰椎などの脊椎の圧迫骨折があります。こうした骨折、とりわけ大腿骨頸部骨折は、保存的治療という選択は難しく、手術する場合…

心不全を科学する

心不全×腎機能障害をどうすればよい? 腎機能評価の最も簡便なマーカーは?eGFR(糸球体濾過量)≒有効ネフロンのGFR×ネフロン数です。 心不全に伴う腎機能障害は、慢性と急性で区別する必要があり 慢性心不全により腎機能障害が生じる理由は、 交感神経系の賦…

パーキンソン病の日中傾眠ついて

最近のパーキンソン病(以下PD略)の経験ついて 80台の男性で無動(動けない)にて、横紋筋融解症にて搬送されPDの診断にて自宅へ戻り、その後のPDに対する治療行っていました。 病期はハネムーン期(治療初期で治療が奏功する時期)にてL-DOPAをMAO-B、ドパミンア…

心不全を科学する

心不全×腎機能障害の治療は、どのように行うべきか?重要ことは うっ血の解除、心拍出量の担保、心不全の標準治療の導入です。 標準治療の導入により一時的にeGFRは低下します。これはInitial Dipと呼ばれる病態であり、輸出細動脈が開き、一時的にお盆の底…

高齢者の皮膚のかゆみ~老人性掻痒症

高齢者の皮膚のかゆみはしばしば遭遇する問題です。とりわけ寒い時期なると症状が悪化します。年をとると、何故こうした症状が生じるのでしょうか。理由として高齢者は皮脂が少なく、容易に乾燥します。こうした症状に関しての ポイントは皮脂を落とさないこ…

心不全を科学する

メトホルミンには、心不全リスク抑制は下記にように多岐にわたります。 ※乳酸アシドーシスに注意しながら適切に使用すれば、非常に有用な薬剤となります。 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら在宅クリニックは逗子、葉山…