脳梗塞になった患者さんの家族へ説明する際に、血栓を溶かす薬は使いましたか?
こうした質問をよく受けます。
因みに、上の図は血栓を溶かす薬の機序です。
血栓を溶かす薬はtPAという名称です。
脳梗塞急性期に行うtPA静注療法は2005年から日本でも行えるようになりました。
では、tPAはどのぐらい効くのでしょうか?
1995年アメリカの国立衛生研究所(NIH)の研究によって、この治療による予後改善効果が認められたのです。
tPAの投与を受けたグループでは状態の良い患者さんが39%、偽薬を使ったグループでは26%と、状態の良い患者さんがtPAの投与により13%増加していました。
おそらく「たった、それだけ?」というのが正直な印象ではないでしょうか。
理由の一つは血栓が溶けない場合があることです。
tPAは大きな血栓には太刀打ちできないのが現実です。
もう一つの理由は血栓を溶かす=効き過ぎによる脳出血が起きるためです(全体の6.4%)。
但し、この治療の最大の利点は「CTスキャンさえあれば、医師が一人いればどこでもできる」ことです。
それまで血栓溶解を行っていなかった中小の病院でも、CTさえあれば、一人の医師がやる気になればできるのです。
これは、国土が広大で医療機関へのアクセスに時間がかかるアメリカなどでは、非常によい治療です。
但し、アメリカなどに比べると日本では医療機関へのアクセスは良く救命センターや脳卒中センターなども多く存在します。
自分の患者さんは、誰よりもよい結果をだしたい。
次回はtPAが効かない場合、大きな血栓をどうすればよいか書きたいと思います。