在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

褥瘡は、この世から無くなるのか?

褥瘡は、ただの皮膚の傷ではありません。哺乳類が陸上に上がれたのは皮膚のおかげであり、母なる海を体内に止めおく重要なバリアーの破綻が褥瘡です。当然、このバリアーの破綻は感染の原因となります。そして体圧管理、湿潤療法など行っても残念ながら褥瘡が良くならない方もいます。これは、全身状態や栄養状態、血糖コントロールが悪かったり、血流障害があったりするために、褥創の治りが遅くなるというのが大きな要因だと思います。

介護者(家族や介護職員)・医療者などの中には、褥瘡はあってはならないと考える方がいて、褥瘡ができるとことさら騒ぎ立てる方がいます。そもそも褥瘡がどうしてできるのか考えてみると、食事が摂れなくなって栄養状態が悪くなり、寝たきりで動けなくなり一か所に圧力がかかることで起こるのです。

これは、つまり老衰の過程なのです。人は老衰に逆らうことはできません。いろいろな対策をしても治らない場合、「褥瘡とともに生きる」という選択もあると思います。

肺炎で亡くなるのは受け入れられるが、褥瘡が感染して亡くなるのはいけないというのはおかしいのです。褥瘡を含めて、トータルで高齢者をみなければいけません。在宅医療で可能なことは行うが、人智の及ばない褥瘡もあることを認識することも重要なことと考えます。