在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

レビー小体型認知症におけるパーキソニズム

パーキンソン症状は、筋肉に力が入りその力が思うように抜けない固縮と、勝手に動いてしまう振戦が代表です。固縮とは簡単に言えば身体が固まったような状態を示す言葉であり、振戦とは震えているような症状です。そしてレビー小体型認知症においては固縮が生じますそれも歯車様固縮と呼ばれる固縮です。肘などを他動的に動かそうとするとカクカクと歯車のような動きを生じます。

そしてパーキンソン症状の治療薬は、パーキンソン病には良く効きますが、レビー小体型認知症によるパーキンソン症状には効果があまりありません。そしてレビー小体型認知症における特徴の一つとして薬剤に対する過剰反応が挙げられます。このためレビー小体型認知症パーキンソン病の治療薬を投与すると効果ない為増量されていきパーキンソン病薬の副作用が出てきます。これがレビー小体型認知症の症状を増悪させ興奮・易怒の出現やや幻覚・妄想の悪化などが出現します。

レビー小体型認知症パーキンソン病の病態は似ており、蓄積する変異タンパクの溜まる場所の違いが異なるだけです。

自律神経障害として交感神経の働きが悪くなっていくことも共通した症状です。心臓に分布する交感神経末端が減少していることを、MIBG心筋シンチで確認することが、レビーであることを確認する一番良い方法だと言われています。MIBG心筋シンチで交感神経末端の減少が確認できる疾患は、レビー小体型認知症パーキンソン病です。

レビーとパーキンソン病は、最初にレビー小体が現れる脳の領域が違います。パーキンソン病は中脳の黒質領域に限局して変性が起りますが、レビーの多くは大脳など広い範囲でレビー小体が認められるようです。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影

褥瘡を科学する

痛緩和を目的としたドレッシング材は上記資料のようなものがあります。

日本で販売されているドレッシング材は疼痛緩和する効用ありませんが、粘膜部をシリコーンにすることで角層傷めず、痛みを最小限にするドレッシング材が多く発売されるようになりました。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

 

認知症とパーキンソン病(症候群)関係

医者になって最初の年に神経内科の先生が脳外科をローテーションしており、その際に色々と教えて頂くこと多かったのですが、その時に印象的な質問されました。

パーキンソン病って認知機能障害ある?」その際に「あると思います」と答え褒められてことを記憶してます。多分、研修医の時に褒められた記憶がほぼ無いので覚えているのでしょう。ただ、その後脳外科医として日々の臨床の中で認知症の患者さんを沢山診るようになり感じたことは、何でこんなにパーキンソン類縁疾患が多いんだ、ということでした。パーキンソン症状(パーキンソニズム)は大きくは錐体外路症状と言い、脳幹部や小脳・大脳基底核領域の障害で起こる運動障害の総称となります。

錐体外路症状を引き起こす病気の多くは、変性疾患と呼ばれます。

変性疾患の代表例がパーキンソン病です。パーキンソン病は中脳黒質領域の非常に狭い範囲の神経細胞に変異タンパクが蓄積することにより生じます。

錐体外路症状を起こす変性疾患の多くは、パーキンソンに良く似た症状が出ますので、パーキンソン類縁疾患と呼ばれることが多いです。脊髄小脳変性症・多系統萎縮症(昔はオリーブ核橋小脳変性症・線条体黒質変性症などと呼ばれていました)・進行性核上麻痺など皆さんには、聞き覚えが無い難病と呼ばれる珍しい病気が多いです。

パーキンソン病で機能障害を起こす細胞はドーパミンで働きを示す細胞です。このためパーキンソン病の治療薬は、脳内のドーパミンを増やしたり、ドーパミンの働きを良くする薬が使われます。パーキンソン病でも、不要な領域のドーパミンが増え、興奮しやすくなったり妄想が活発になったりします。逆に認知症の方の興奮などを抑える抑制系の薬は、このドーパミンの働きを押さえ、パーキンソン症状を悪化することがありました。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影

 

褥瘡を科学する

f:id:neurosamasama:20220124154619j:plain浸出液を吸収し保持するドレッシング材として資料のような被覆材が挙げられます。

これらの被覆材は、余分な浸出液を貯留させないように、創面の浸出液を吸収します。また、吸水力に優れ、かつ浸出液を保持し湿潤環境を保ちます。深さある創に充填することも可能です。

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褥瘡は、この世から無くなるのか?

褥瘡は、ただの皮膚の傷ではありません。哺乳類が陸上に上がれたのは皮膚のおかげであり、母なる海を体内に止めおく重要なバリアーの破綻が褥瘡です。当然、このバリアーの破綻は感染の原因となります。そして体圧管理、湿潤療法など行っても残念ながら褥瘡が良くならない方もいます。これは、全身状態や栄養状態、血糖コントロールが悪かったり、血流障害があったりするために、褥創の治りが遅くなるというのが大きな要因だと思います。

介護者(家族や介護職員)・医療者などの中には、褥瘡はあってはならないと考える方がいて、褥瘡ができるとことさら騒ぎ立てる方がいます。そもそも褥瘡がどうしてできるのか考えてみると、食事が摂れなくなって栄養状態が悪くなり、寝たきりで動けなくなり一か所に圧力がかかることで起こるのです。

これは、つまり老衰の過程なのです。人は老衰に逆らうことはできません。いろいろな対策をしても治らない場合、「褥瘡とともに生きる」という選択もあると思います。

肺炎で亡くなるのは受け入れられるが、褥瘡が感染して亡くなるのはいけないというのはおかしいのです。褥瘡を含めて、トータルで高齢者をみなければいけません。在宅医療で可能なことは行うが、人智の及ばない褥瘡もあることを認識することも重要なことと考えます。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影

褥瘡を科学する

f:id:neurosamasama:20220122163220j:plain資料の褥瘡被覆材の重要な特徴として浸出液を吸収し保持するドレッシング材であることが挙げられます。

これにより余分な浸出液を貯留させず、創面の浸出液を吸収します。さらに吸水力に優れ、かつ浸出液を保持し湿潤環境を保ちます。また深さある創に充填することも可能です。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

褥瘡に対する体圧管理について

褥瘡は、そもそも論で体位変換できない状態の部位に持続的に圧力がかかることにより生じます。なので、褥瘡治療に対し、湿潤療法を熱心行ったとしても、かかる圧力を減じなければ根本的にはいつまで経っても褥瘡はよくなりません。褥瘡予防のために頻回に体位変換するのは、言うは易しで非常に大変なことです。こうした場合、高機能エアマットレス(以下エアマット)体圧測定器の使用がお勧めです。

まず、エアマットについてですが、エアマットを使うことで、局所が沈み込み、接触面積を増大させて体圧を分散させることができます。

2度褥瘡くらいであれば、エアマットに変えるだけで治ってしまいます。

エアマットの注意点としては、適切な体重設定がされているかに注意を払う必要があります。また、電源が切れて入れなおした時に初期設定に変わってしまい、そのままになっていることもあります。

こうしたエアマットを使い適切な除圧がなされていれば、2時間ごとの体位変換は必要ありません。これで、ご家族の介護疲れがなくなります。

また「ハンモック現象」にも注意が必要です。これは、エアマットの上のシーツをしわのないようにピンと敷くと、ハンモックのようになり体圧が上がってしまうことを言います。したがってシーツはだらしない感じでだらだらに敷くというのがポイントです。

さらに、おむつを重ねたり、ガーゼを厚くあてるたりする(そもそもガーゼは必要ないのですが)と体圧が上がってしまうので、おむつはできるだけ少なく、薄くするのがポイントです。体圧の面から考えれば、創傷被覆材もできるだけ薄いものが理想です。

体圧測定器

 

体圧測定器は3万円くらいしますが、体圧を測定しないと、何が正しくて何が間違っているのか分かりません。仙骨部に褥瘡ができていた場合、ベッドに寝ているのが悪いのか、イスに座っているのが悪いのかは、体圧を測定しない限り分かりません。イスに座っているのが悪い場合、いくらベッドにエアマットを入れても褥瘡は治りません。

また、除圧目的にクッションなどを入れているのをよくみますが、それが正しいのかどうかも体圧を測ってみないと分かりません。(クッションなどを入れる場合には、圧が一点に集中しないように、圧が全体にかかるように入れます。ちなみに円座は当たっている部位の体圧が上がってしまうため推奨されません。)ぜひ体圧計を購入して、いろいろな場面で測定してみると良いです。

体圧を測定して50mmHg以下なら大丈夫です。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影