在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者における亜鉛不足と健康リスク

亜鉛が不足すると出現する症状として 脱毛、皮膚炎②貧血③味覚障害③食欲不振④下痢 何か在宅医療・高齢者には、いくつか必ず当てはまるような症状です。特に慢性肝疾患、糖尿病、腎不全、慢性炎症性腸疾患があると、亜鉛欠乏に陥りやすいと言われています。慢…

心不全を科学する50

心不全における利尿薬の使い方はどうすればよい? 利尿剤の理解には、腎臓の生理学を理解する必要があります。正常な腎臓100ml/分の水分が糸球体から濾過99%再吸収します。なので尿量を増やすためには、糸球体濾過量を増やす、再吸収量を減らすことが必要と…

褥瘡治療の革命

脳外科医として勤務医をしていたころ、創部感染の問題は時起こっていました。脳卒中患者の褥瘡も頭を悩ませる問題です。研修医の頃は、毎朝傷を消毒してガーゼ交換することが至上の命題であり、唯一の病院内での存在意義でもありました。そうした頃に創処置…

心不全を科学する49

心不全×腎機能障害をどうすればよい? 腎機能評価の最も簡便なマーカーは?eGFR(糸球体濾過量)≒有効ネフロンのGFR×ネフロン数です。 心不全に伴う腎機能障害は、慢性と急性で区別する必要があり 慢性心不全により腎機能障害が生じる理由は、 交感神経系の賦…

食生活と不定愁訴の関係性を考える#食生活

勤務医時代に私と同世代の方が、めまいがする、足ジンジンする、耳鳴りがするので調べて欲しいと外来に来られてました。私自身、体調不良というものを現在まで殆ど経験したことがなく、正直型通りの画像、検査などにて問題ありませんとしておりました。ただ…

心不全を科学する47

心不全×腎機能障害をどうすればよい? 腎機能評価の最も簡便なマーカーは?eGFR(糸球体濾過量)≒有効ネフロンのGFR×ネフロン数です。 心不全に伴う腎機能障害は、慢性と急性で区別する必要があり 慢性心不全により腎機能障害が生じる理由は、 交感神経系の賦…

在宅医療でのホルター心電図必要性とは?#不整脈診療

在宅医療における不整脈診療 当クリニックでもホルター心電図での不整脈検査をしばしば行っております。 当クリニック採用のホルター心電図は24時間タイプでなく、7日間タイプで、非常に小型であり、当クリニックで不整脈を初めて指摘され、そのまま治療に移…

心不全を科学する47

心不全×腎機能障害の治療は、どのように行うべきか?重要ことは うっ血の解除、心拍出量の担保、心不全の標準治療の導入です。 標準治療の導入により一時的にeGFRは低下します。これはInitial Dipと呼ばれる病態であり、輸出細動脈が開き、一時的にお盆の底…

先生あとどれくらいですか?~家族から聞かれる質問に対して

患者さんの家族からよく聞かれる質問に「先生あとどれくらいですか?」という質問があります。そうした時「患者さんは最後最期まで聞こえてますから、そばに居てあげて下さい」と言うようにしてます。ただし、医学的にはある程度の時間を予測することができ…

心不全を科学する46

メトホルミンには、心不全リスク抑制は下記にように多岐にわたります。 ※乳酸アシドーシスに注意しながら適切に使用すれば、非常に有用な薬剤となります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9Uws…

リスクを冒してでも歩行を許可するべき理由 #廃用予防

勤務医時代に入院に際して全例取させられていたのが、身体抑制に関する同意書でした。これは手術あとに、麻酔の影響などにより前後不覚となる場合が往々にしてあり、これを取得することはある程度、理に適っていると思います。但し、脳卒中を主に治療してい…

心不全を科学する45

You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q #体循環#肺循環#心不全##心不全#HFpEF#BNP#ARNI#DM 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら…

膝関節注射の方法:正しい刺入点と注意事項

膝関節注射(ヒアルロン酸注射)の方法について解説します。 ①膝は伸展位とします。伸展位では、膝蓋骨が動くようになるので注射するスペースができます。 ②膝蓋骨の位置を指で触って確認します(写真の〇)。 ③膝蓋骨を動かしながら、膝蓋骨の裏のスペース…

心不全を科学する44

心不全を予防するために行うべきこととして、糖尿病の管理が重要です。 その理由として 直接要因(炎症・酸化ストレス)は 心肥大、微小血管障害であり 間接要因は 虚血性心疾患、腎機能障害です。 心不全×糖尿病の治療薬として重要なのはSGLT2阻害薬? DPP4阻…

リハビリテーションの新たな可能性:起立-着席運動の効果とは? #リハビリ #症例紹介

新版 間違いだらけのリハビリテーション 「起立-着席運動」のすすめ | 三好 正堂 |本 | 通販 | Amazon リハビリは30年前と比べて治療成績が悪くなっているとのことです。 筆者はその理由は、額に汗する地道な治療が少なくなってきたためではないかと言います…

心不全を科学する43

HFpEFの降圧目標は、どのように設定すべきでしょうか。 下記に示すように降圧剤の使用に関しては慎重になった方がよい?データもあります。 HFpEFは血圧を下げ過ぎてもよくないかもしれません。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https…

亡くなる人は浴槽内が圧倒的!ヒートショックの恐怖とは?#入浴中の突然死

ヒートショックの原因として寒い脱衣所や洗い場では交感神経が高まり、血圧上昇により心血管イベント(心筋虚血、不整脈、脳内出血)が増加するとされています。しかし、実際脱衣所や洗い場で亡くなる人はわずか(3.4%)であり、浴槽内で見つかることが圧倒的に…

心不全を科学する42

HFpEF治療においてMRAは重要ですが、そのRCTであるTOPCATのサブ解析は?結果として良い結果はだせませんでした。しかし、サブ解析をみると北米の結果は良く、東欧・ロシアが結果の足を引っ張っているの明らかです(そもそも飲んでいないというかもという疑い…

冬のヒートショックが危険!1年間2万人が命を落とす衝撃の事実#ヒートショック

高齢者においては入浴中に亡くなることは非常に多いことは、最近知られるようになりました。ちなみに熱中症の死亡者数は、最大でも2000人以下とされています。一方冬のヒートショックで死ぬ人は年間2万人と概算されています。 日本では夏に暑くて亡くなる人…

心不全を科学する41

ARNI(エンレスト)のエビデンスとして、PARADIGM-HF試験にて サクビトリル/バルサルタンは心血管死+心不全入院を有意に抑制を証明しました You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q …

がん患者の口内炎治療

がん患者さんは、抗がん剤や放射線治療などにより、口内炎(口腔粘膜炎)ができやすい状態になっています。口内炎の治療はというと、一般的に軟膏や痛み止めなどになりますが、効果はいまひとつです。たかが口内炎といえども、担癌患者さんは自分に体調にと…

心不全を科学する40

極論でまとめるARNIの効果の効果は、 早期からの効果+長期予後改善効果=心不全の新薬!となります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q #体循環#肺循環#心不全##心不全…

認知症治療におけるアリセプトの限界と可能性

アリセプトは、神経伝達物質のうち、アセチルコリンの働きを良くします。これによって短期記憶障害を改善されます。しかしアリセプトの本来の作用は、短期記憶障害の改善だけではないと私は考えます。アリセプトは、短期記憶障害以外にも改善が確認される場…

心不全を科学する39

ARNI(エンレスト)とは、サクビトリルであり サクビトリルとはネプリライシン阻害薬のことです。 サクビトリルは、ANP,BNP,アンギオテンシンⅡ,ブラジキニンなどの様々な血管作動性ペプチドを分解する酵素です。 つまり、この心保護作用のある物資の分解阻害に…

アリセプトの誕生秘話:日本発の認知症治療薬の誕生背景

認知症治療薬として現在日本で使用可能な薬は4種類ありますが、その先駆けとなった薬は日本発の薬であるアリセプトです。アリセプトは杉本八郎博士が開発し、彼はこの薬の開発で、薬の世界のノーベル賞と言われる英国ガリアン賞・特別賞や恩賜発明賞などを受…

心不全を科学する38

ARNI(エンレスト)の機能は、ざっくり説明すると心保護効果のある物質の分解を阻害することです。また、これに+αの効果あることを次回以降説明してまいります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB…

高齢者の転倒リスクを17%低減!高強度のバランス訓練が効果的#

転倒に対する運動介入の効果 Sherrington C, Whitney JC, Lord SR, Herbert RD, Cumming RG, Close JC. Effective exercise for the prevention of falls: a systematic review and meta-analysis. J Am Geriatr Soc 56: 2234-2243, 2008. この論文は、高齢…

心不全を科学する37

慢性心不全治療は新しいパラダイムへ入り、ESCガイドラインも変更されました。この中で特に注目したいのがARNIです。ARNIがファーストラインに入ったがARNIとは?次回よりARNIに関して少し述べていきます。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟…

高齢者の疼痛に劇的な改善!#高齢者の頸部肩臀部の痛み

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は、急性発症の頸部、肩、臀部などの著しい痛みとこわばりを特徴とします。私自身、脳外科医としての勤務医時代には脊椎の手術と外来も行っていたのでこうした症状の患者を沢山診ておりました。本疾患は…

心不全を科学する36

DAPA-HFはsglt2阻害薬におけるHFPeP(心不全)への科学的根拠を示した研究です。 ここで、一つ気を付けるべきは、重症心不全=NYHAⅣレベルでは明確なエビデンスはないという点です。つまり、あまり悪くなると治療は難しいといことです。 You Tubeにて在宅診療の…