在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者の発熱対応:急変時の緊急連絡要請 #在宅医療

脳卒中などで意識状態が清明でない患者さんなどにおいて、発熱は常につきまとう症状です。人は寝ている間も無意識下に嚥下しています。これは唾液もそうですし、食事した際の食べ物や胃液が逆流してくる場合も同様です。こうした患者さんに都度検査や抗生剤の使用を行うことは患者さんの負担になり、菌交代などによりかえって悪いことを引き起こします。ただし、施設や自宅で患者さんを診ている場合、どの様な時に連絡すればよいかがとても心配です。基本的には「38℃以上になれば連絡してください」というのが安心頂け目安となると考えます。但し、他バイタルと協同して患者さんの重症度を評価する必要があります。具体的には38℃以上の熱がでている方がいた場合、脈拍や呼吸数に注目する必要があります。具体的には脈拍が90回/分以上だったり、呼吸数が20回/分以上の場合は、重症の可能性があります。これはSIRS(全身性炎症症候群)の診断基準です。因みに最近のスマートウォッチ(アップル ウォッチ)は酸素飽和度(体内の酸素取り込み量)も計れます。さらに心電図機能まで、私自身もこれらの機能がどれほど有用か調べるため、人生で初めて腕時計をつける習慣ができました。スイムの100mあたりのスプリットタイムまで記録してくれる優れものです。

SIRS(全身性炎症症候群)の診断基準は下記であり

  • 体温>38℃または<36℃
    ②心拍数>90/分
    ③呼吸数>20/分またはPaCO2<32 torr
    ④白血球数>1,2000,<4000/mm3または未熟顆粒球>10%
    の2項目以上をみたす病態と定義され、4項目のうち3項目が自宅や施設でも評価可能です。SIRSは敗血症の診断に古典的に用いられていた指標(現在はqSOFAを使う)ですが、熱が出ている際の重症判断のスクリーニングに使うのが良いです。

なのでどの様な時に連絡すればよいですか?という質問には「体温が38℃以上でなおかつ、脈拍が90回以上、あるいは呼吸数が20回以上であれば連絡してください」が本当は答えたいところです。

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#在宅医療

#高齢者の発熱

#SIRS(全身性炎症症候群)の診断基準

#qSOFA

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逗子、葉山、横須賀、鎌倉を撮影される山内様の写真です

 

心不全を科学する55

高齢者の失神についてthe SynABPM 1 studyは、興味深い結果を示しています。

早朝家庭血圧125以上

1回でもBPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い

早朝家庭血圧125以下

2回以上BPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い

特に超高齢者はガイドラインに準じた降圧は生命予後を短くするという研究も提出されています。たかが血圧、されど血圧にて管理は慎重に行う必要があります。

 

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#高齢者心不全

#高齢者の失神

#在宅診療

心不全患者の血圧管理

心不全の新しい治療

逗子、葉山、横須賀、鎌倉在宅医療

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ケアマネージャーの勉強から得た気づき#保険制度

自身、勤務医時代に介護保険医療保険の明確な違いを理解できていませんでした。以前の施設で勤務していた時にデータ整理の際に10年間で約1万人の脳卒中診療に携わり、7千人の脳梗塞患者を診ていたことを知りました。その中でかなりの患者さんが介護申請を行い、施設ないし自宅へとしていたのですが、そうした患者さんがどの様な保険制度にて被保険者となっていたのか、無知でありました。ただ、ケアマネージャーの試験勉強する中で、こうした仕組みも理解が必要と痛感しました。在宅医療は多職種との連携にて成立するであり、臨床のみやっていればOKという態度では他職種から相手にされないでしょう。在宅医療においては医師はプレイング マネージャーの立場です。例えるなら、野球チームの監督で監督兼選手です。プレーヤーとして結果をだすことは当然であり、それと同じ様にチームの大きな方向性を舵とらなければなりません。前置き長くなりましたが要介護患者さんの訪問看護においては原則として、医療保険ではなく介護保険が優先され、訪問看護介護保険で行われることになります。

しかし、例外的に医療保険訪問看護が行われることがあります。

これは、たんぽぽクリニックの永井先生の著書に詳しく書いてあります。

たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル 第6版 | 永井 康徳, 日経ヘルスケア |本 | 通販 | Amazon

著書の中で、訪問看護医療保険の適応になる条件を、「3つの呪文」として書いています。

3つの呪文

介護保険の認定を受けていない訪問看護の対象者

②要介護認定者のうち、末期の悪性腫瘍など「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合

③要介護認定者のうち、急性増悪などのケース

ひとつひとつ見ていきたいと思います。

①に関してですが、要介護認定を受けていなければ、当然のことながら介護保険を使うことはできません。これは、年齢的に介護保険を受けられない方と、該当はしているが申請していない方の二つのケースに分かれます。

40歳未満:どの方でも介護保険は使えません。
40歳以上65歳未満:特定疾患(16疾患)によっては介護保険を使えます。
65歳以上:どの方でも要介護認定を受ければ、介護保険は使えます。

②に関して「厚生労働大臣が定める疾病等」は、以下の疾病です。
末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー
パーキンソン病関連疾患…進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類Ⅲ度以上かつ生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度)
多系統萎縮症…線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群
プリオン
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎皮質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

③に関しては、医師が特別訪問看護指示を出した場合に当たります。病状の急性増悪時(肺炎になった場合など)、終末期、退院直後に月1回出すことができます。指示日を含めて14日間までの制限があります。気管カニューレ使用と真皮を越える褥瘡(NPUAP分類Ⅲ、Ⅳ度)がある場合は、月2回指示を出せます。この場合は、1か月のうちほとんどが医療保険訪問看護となります。また、特別訪問看護指示期間中は、原則として週4日以上の訪問看護が必要です。

まとめると、要介護認定を受けていない、末期がんや難病がある、急性増悪時や重度褥瘡で特別訪問看護指示がでている場合は、医療保険による訪問看護になります。

#在宅医療

介護保険医療保険の違い

医療 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら在宅クリニックは逗子、葉山、横須賀、鎌倉の皆さんの健康と安心に寄与して参ります

心不全を科学する54

高齢者心不全において、失神という病態は非常によく遭遇する病態です。

では、血圧低下とは何でしょうか?そもそも血圧とは何でしょう?

まず、血圧は心拍出量×末梢血管抵抗にて規定されます。

末梢血管抵抗↓にての血圧低下の典型は敗血症によるseptic shockです。

更に、心拍出量は1回拍出量と心拍数にて規定されます。心拍数↓徐脈性の不整脈にて失神がおこるのはこの為です。

イメージとして心臓=エンジンであり、エンジンの先の管に穴があいた、回転数が下がった、エンジンから出されるパワーが下がるとエンスト=失神起こすと考えて下さい。

 

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#高齢者心不全

#在宅診療

心不全患者の失神

心不全患者の血圧低下

心不全の新しい治療

#逗子、葉山、横須賀、鎌倉の在宅医療

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骨粗鬆症治療の新展開:注射薬で骨形成促進#

これは、非常に難しい問題です。外科的な治療は偽関節など不安定性を伴う場合に検討されますが保存的治療においては、また別に機会設けて書かせて頂きます。自身も圧迫骨折で偽関節生じた患者さんに固定術やBKP(骨折した箇所をセメント様のもので固める治療)行うことがありましたが、そもそも骨が脆い状態=骨粗鬆症を改善する必要があります。これに対しては注射薬が有効でありPTH製剤と呼ばれる注射薬です。PTH製剤とは、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)を間欠的に注射することで、骨形成が促進され、骨密度を上昇させる薬です。現在の骨粗鬆症治療においては、一番効果の高い治療法と言われています。骨粗鬆症がひどく圧迫骨折を繰り返している方、または、転倒を繰り返しており骨折リスクが非常に高い方に有効です。

PTH製剤には、連日皮下注射製剤のフォルテオと週1回皮下注射製剤のテリボンがあります。どちらも、使えるのは、一生のうちの2年間という制限があります。フォルテオとテリボンの選択ですが、まずは、フォルテオができないかを考えています。しかし、フォルテオは自己注射のため、かなりしっかりとした人でないとできません。在宅医療を受けているような患者さんには、自己注射ができるような人はなかなかいません。そこで、介護者がしっかりしていれば介護者に注射してもらうか、看護師がいる施設に入所している方は看護師に注射してもらいます。

フォルテオに関して注射時に痛みがあるのではないかと不安になる方がいますが、針は非常に細いため、痛みで脱落する方はまずいません。フォルテオが難しい方には、テリボンを選択します。

テリボンにする場合は、毎週訪問診療にして、こちらで注射します(訪問看護では点滴はできても皮下注射はできません)。

テリボンの注意点としては、週1回の注射製剤のため、1回あたりの製剤の量が単純にフォルテオよりも多いので、より副作用がでやすいことがあげられます。具体的には注射後の一過性の血圧低下です。これを予防するためには、注射前にコップ1杯の水を飲んでもらうと良いです。PTH製剤には、どちらも高カルシウム血症の副作用があります。活性型ビタミンD3製剤と併用しないように注意しなければなりません。

 

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#骨粗鬆症治療#注射薬で骨形成促進#

 

心不全を科学する53

心不全を予防するために行うべきこととして、高血圧の管理が重要です。

血圧はどれくらいに維持すればよいか?という疑問があります。

SPRINT Research Group.において

厳格降圧群と標準降圧群での比較が行われましたが、心不全で厳格降圧群の有意な効果を認めました。

 

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薬剤性パーキンソニズムの注意点

パーキンソン病は、中脳黒質ドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の疾患です。診断に関してはMIBG心筋シンチグラフィーと呼ばれる、心臓の交感神経の状態を診る検査を行う場合もあります。これは、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)というノルエピネフリンノルアドレナリンとも呼ばれる)とよく似た物質を含む検査薬を服用したときに、この薬剤が心臓に集まる程度を画像で評価する検査です。パーキンソン病の患者さんでは、この薬剤が心臓に集まらないことが知られているのを利用して、診断の参考にすることがあります。またドーパミントランスポーター(DAT)イメージングと呼ばれる検査方法もあります。DATは、脳で信号のやりとりをしているドーパミンの再利用を促すたんぱく質ですが、このDATの働きを可視化することでパーキンソン病を診断します。パーキンソン病の4大症状としては、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害があります。

具体的な症状を上げると、「動作が遅くなった」、「声が小さくなった」、「表情が少なくなった」、「歩き方がふらふらする」、「転倒しやすくなった」、「歩幅が狭くなった(小刻み歩行)」、「歩行開始時に足が出にくい」、「手が震える」、「止まれず走り出すことがある」、「手足が固い」などです。

このようなパーキンソン病でみられる症状が、薬の副作用でも起こってしまう(薬剤性パーキンソニズムと呼ばれます)ことがあります。

パーキンソニズムを起こす薬は様々ありますが、ドパミン拮抗作用を持つ薬がほとんどで、なかでも抗精神病薬が有名です。

気をつけなければならないのは、思わぬ薬にパーキンソニズムを起こす薬があることです。これを知らないと、漫然と処方され続けたり、薬剤性パーキンソニズムに対して抗パーキンソン病薬が処方されれば、薬の副作用を薬で抑えることになり、さらに別の副作用がでるということにもなりかねません。一般医がよく処方し、薬剤性パーキンソニズムの原因となりうる薬剤は、制吐薬のプリンペランナウゼリン、カルシウム拮抗薬のワソラン、ヘルベッサー、抗ヒスタミン薬のアタラックスP、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトなどです。抗精神病薬の中では、せん妄時によく処方されるセレネースリスパダール、食欲がないときに処方されるドグマチール、悪心嘔吐時に処方されるノバミンが薬剤性パーキンソニズムを起こしやすいので注意が必要です。私自身、特に注意したいのはアリセプトです。認知症の治療薬であり、様々な症状が認知症に周辺症状と片付けられてしまう場合があります。少しでもこうした症状を疑った場合は、肘に筋固縮がでていないかをみることが重要です。薬剤性パーキンソニズムの症状の特徴としては、以下があります。

・進行が速い

・突進現象は少ない

・症状は左右差が少なく、対称性のことが多い

・姿勢時、動作時振戦が生じやすい(パーキンソン病は安静時振戦)

アカシジア(じっとしていられない)やジスキネジア(体が勝手に動いてしまう)を伴うことが多い

・抗パーキンソン病薬は効きづらい

薬剤性パーキンソニズムが疑われる場合は、当然のことながら、原因と思われる薬剤の中止が必要です。

 

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#在宅医療

#薬剤性のパーキンソン症候群

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