在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

在宅医療での痙縮治療~痙性麻痺にボトックス治療が効きます

「ボトックス」とは、ボツリヌス菌から抽出した神経毒です。 神経筋伝達阻害により筋肉を弛緩させる作用があるので、ボツリヌス菌の食中毒になったら怖いですが、「毒は薬なり」。狙った筋肉に適正量を注射することで、ガチガチに痙縮した筋肉を和らげること…

心不全を科学する19

HFpEFの病態的特徴は? 左室が硬く、これにより下記のような循環的特徴が挙げられます。そして、こうした病態をコントロールする頸動脈の圧受容体も同様に、動脈硬化性変化で機能しない場合が多いのも特徴です。*画像が私が脳外科医として手術した頸動脈内…

パーキンソン病に関する講演依頼のお知らせ

10.11パーキンソン病に関する勉強会をwebにて開催させて頂きます。 以前も同様のセミナー行わせて頂き参加者が100人を超えました。 パーキンソン病は治療選択が増えた分、症状変動にどうすればよいか迷うことも多く、苦手意識多い領域かとおもいます。 パー…

ポリファーマシーの功罪~年をとると色々痛くなるので痛み止めが必要な時

年をとると色々な箇所が痛くなります。腰痛などは、大なり小なりあると考えます。こうした際に痛み止めをどうするか。NSAIDsと呼ばれる痛み止めには胃潰瘍などを生じさせるリスクあり胃薬が必要です。痛み止めのロキソニンは切れ味は良いですが、その分副作…

心不全を科学する18

EFの保たれた心不全(HFpEF)の血行動態の特徴は、 1.運動時に左室に血液が入らない※末梢の静脈から心臓に動員する血液(unstress volume) 2.心拍数が上がらない※Chronotropic imcompetence です。こうした病態は下記のような機序にて生じます。 左心房の拡大➤…

心不全を科学する17

HFpEF発現のメカニズムとは?HFpEFの発現は、心機能曲線にて理解することができます。酸素需要が高まり、左室充満圧(左室拡張末期容積)が上昇すると、健常人は心拍数を上げて代償しようとします。この時、HFpEF硬く、内腔の狭い心腔にて代償困難であり心拍数…

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に基づくH2ブロッカーの注意点

ガスター等のH2ブロッカーを長期間使用することで、高齢者の認知機能が低下するリスクが報告されています。これは中枢神経にもH2受容体存在することが、その理由です。ただし、こうした薬剤は脳内への移行はしにくいのですが、腎機能障害などにより排泄が遅…

高齢者の脱水評価と在宅医療~高齢者医療は脱水との戦いです

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…

心不全を科学する16

HFpEFとHFrEF:病因の違いについて。まずHFpEFは加齢、高血圧、糖尿病が病因のベースとなります。HFrEFは、心筋虚血、心毒性、感染、炎症、遺伝子異常病因のベースです。つまり、極論的に言えば、肥満、メタボ、生活習慣はpEFと関連するがrEFと関連しないと言…

高齢者安全対策:薬剤リスクと在宅医療の重要性 #高齢者 #安全対策

超高齢化社会において、転倒・骨折などは非常に頭の痛い問題です。病院などでは、抑制同意書などを入院時に取得し夜間帯などはベッドから自身で動けなくなるようにします。実際の現場は、非人道的な印象を受けますが、他に方法が無いのが実情です。もし、転…

心不全を科学する15

HFpEFの疫学をざっくりと説明いたします。 65歳>のHF(心不全)の70%以上はHFpEFとされています。 HFpEFはHFrEFと比較して毎年10%ずつ増加。 高齢化、肥満、メタボ、DMの有病率増加が原因であり、今後も増加していくとされています。 You Tubeにて在宅診療の…

褥瘡に対する湿潤療法について

病院勤務時代の術後の患者さんで、創部治癒遅延が予想される患者さんに対してはカラヤヘシブという被覆材を用いていました。とても有用な被覆材ですが高価であり、通常の薬局などで購入することができず褥瘡治療に援用することができません。褥瘡に対しては…

心不全を科学する14

EFの保たれた心不全(HFpEF)って何?まず、正常な人の心臓は左室に10入り、大動脈から10駆出する状態です。心不全とは、一般的に左室のポンプ失調を示すものであり10入り、6しか駆出できないポンプ=エンジンの不全と考えます。EFとは心臓にどれだけ入り、…

高齢者の寝たきり原因の治療の弊害~カルシウム製剤の補充

高齢者を寝たきりにする原因として重要なものの一つに骨折があります。具体的には大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨が折れる病気)、腰椎などの脊椎の圧迫骨折があります。こうした骨折、とりわけ大腿骨頸部骨折は、保存的治療という選択は難しく、手術する場合…

心不全を科学する13

心不全患者さんの予後は?心不全患者さんの予後は、以前と比較して明らかに改善しています。これが示すことは、心不全治療の確立につれて心不全の予後は改善してきており、正しい適切な標準治療を行うことが重要ということです。 You Tubeにて在宅診療の知識…

在宅医療での高齢者の皮膚トラブルに関する考察

高齢者の皮膚のかゆみはしばしば遭遇する問題です。とりわけ寒い時期なると症状が悪化します。年をとると、何故こうした症状が生じるのでしょうか。理由として高齢者は皮脂が少なく、容易に乾燥します。こうした症状に関しての ポイントは皮脂を落とさないこ…

心不全を科学する12

心不全の身体所見として内頚静脈の怒張とは?右内頚静脈は右房と連続しており、静脈弁がないので右房圧と直結します。右心房から胸骨柄まで5cmです。凡そ頸部内頚静脈は胸骨柄から5cm程度で視認できますので、内頚静脈の怒張=中心静脈圧10cmH2Oと評価でき…

高齢者の認知症に関する漢方薬

認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して、漢方薬の抑肝散が効くことが知られており、私自身もよく処方しています。 自身の抑肝散処方で忘れられない症例は、頚椎症性脊髄症の患者さんで、手術前日にせん妄状態になった患者さんです。誰もが知る某有名企業の…

心不全を科学する11

心不全に関して、在宅診療でチェックすべき項目は下記のように10項目が循環器学会から示されています。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q ,"entityRanges":[{"offset":0,"len…

夜間の降圧薬内服が心臓リスク低下!

Wake up strokeという言葉があります。「朝になっておじいんさんが起きてこないから、見にいったら動けなくなっていた」心臓や脳の血管性の病気は寝ている間に起こることが多くあります。しかし習慣的に降圧剤は朝飲む処方とされています。これは、起きてい…

心不全を科学する10

Stepwise Approachに左房圧の高さを考えると 左室が血液をだしにくい、容量が多い、左房の問題(afなど) 下記のように、問題がどこにあるかで治療方針を検討する必要があります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.c…

褥創治療:体圧管理と湿潤療法の重要性

褥創にガーゼを当てるということはよく行われていますが、あまりよくない処置です 褥創治療においては、褥創はなぜできるのか?傷が治るとはどういうことなのか?を考えなければなりません。 ①褥創はなぜできるのか?廃用が進んだりで寝たきり状態になり寝返…

心不全を科学する9

心不全=1回拍出量が低下する状況として肺循環に問題があるのはどういう状況でしょうか。 右室は後負荷依存性高く、左房圧が高い場合・肺高血圧が高い場合が挙げられます。 また拡張型心筋症や、三尖弁閉鎖不全にて右房と右室に血液が行きつ戻りつを繰り返…

体質に合わせた漢方薬: 風邪に葛根湯より適した選択肢 #高齢者

風邪に対する漢方薬として有名なのは葛根湯です。 しかし、漢方薬は病名に対して使うのではなく、その人の体質や状況に合ったものを選ばないといけません。 葛根湯は「体力が中等度以上で、風邪の引き始めでゾクゾク寒気がして、汗をかいていない方」に使う…

心不全を科学する8

心不全とは心臓のポンプ機能の低下であり=1回拍出量の低下でもあります。 これを体循環である左房-左室-末梢循環における障害を考えると 左室-末梢組織への抵抗として大動脈弁狭窄症や末梢血管抵抗↑の場合が挙げられます。 また左室自体の問題として虚血な…

褥創感染の対策と治療:組織保護と抗菌薬の適切な使い方

褥創が感染しているかどうかは、褥創周囲に感染の4徴候(熱感、発赤、腫脹、疼痛)があるかどうかで判断します。 感染していた場合、大原則として、褥創内に消毒薬(イソジンシュガー、カデックス軟膏、ユーパスタなど)を入れてはいけません! その理由は…

心不全を科学する7

心不全治療の考え方として、体循環から心臓までを1つのチューブとして捉えることが重要です。原則的には心不全=左室のポンプ異常と考えて大きな問題はありせんが、 標準治療を踏襲しても必ずしもよくならない場合 →心不全のメカニズムを考察する必要があり…

認知症とパーキンソン病の関係性

認知症患者さんには、一定程度パーキンソン病に類似した症状見ることが多々ありました。とりわけ、これは外勤(医師は常勤先以外にも外勤として他院でパートタイムで働くことがあります)。この外勤先は、整形外科がメインの地域で信頼されている病院ですが、…

心不全を科学する6

心不全増悪の定義は下記に様な症状になります。 そして、症状は体循環と肺循環で症状が異なります。 疲れやすい、食欲不振などは在宅診療で遭遇しやすい右心不全の症状と想起する必要があります You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https:…

在宅診療における高齢者の下痢について

下痢症状を認めた場合の生活指導として、水分を積極的に摂ることを指示します。水分を摂るとますます下痢をすると考え、水分摂取を控える方がいます。しかし、下痢によって体から水分が失われますから、むしろいつもより水分は多く摂らなければなりません。…