在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

爪を通さずに測定!パルスオキシメーターの新しい使い方#医療

パルスオキシメーターは皮膚を通して、動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を測定する機械です。 下の写真のように指に挟んで使用します。 注意点として、指先が冷えていて血流が悪い場合、爪にマニキュアが塗られている場合などは、正確に測れないことがあり…

パーキンソン病を科学する7

前回よりαシヌクレインは中枢神経において伝搬する動物実験での結果を示しましたが、腸管の神経叢より中枢神経に伝搬する経路もあります。 これより、αシヌクレインはBody first? Brain first?という議論が生じます。これについては結論がついていません。と…

褥創感染の対策と治療:組織保護と抗菌薬の適切な使い方

褥創が感染しているかどうかは、褥創周囲に感染の4徴候(熱感、発赤、腫脹、疼痛)があるかどうかで判断します。 感染していた場合、大原則として、褥創内に消毒薬(イソジンシュガー、カデックス軟膏、ユーパスタなど)を入れてはいけません! その理由は…

パーキンソン病を科学する6

上図が示すようにαシヌクレインは、脳内へ注入すると伝搬していくことが動物実験で確認されています。また腸管周囲の神経から延髄、仙髄への伝搬も確認されています。 まさにこの挙動はプリオンと似ているものであり、αシヌクレイン仮説≒プリオンと類似して…

褥創治療: 体圧管理と湿潤開放療法の重要性

褥創にガーゼを当てるということはよく行われていますが、あまりよくない処置です 褥創治療においては、褥創はなぜできるのか?傷が治るとはどういうことなのか?を考えなければなりません。 ①褥創はなぜできるのか?廃用が進んだりで寝たきり状態になり寝返…

パーキンソン病を科学する5

αシヌクレインはレビー小体型認知症に有名な病理所見ですが、これはパーキンソン病患者にも確認される病理所見でもあります。また、αシヌクレインは脳だけでなく、副腎、腸管などのあらゆる臓器で確認されます。これは、パーキンソン病などで便秘が運動症状…

パーキンソン病を科学する4

パーキンソン病の原因としてαシヌクレイン仮説は非常に興味深いものです。 本来有用なタンパクですが、様々なタンパク質の機能障害の原因ともなり、その振る舞いはプリオンと非常に似ています。次回以降、この点に関して深堀していきます。在宅医療 | さくら…

アップルウォッチでの歩行解析可能

「高齢者の歩行ー下肢障害の要因としての歩行動態とその予防法への試みー 橋本健史先生 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター」という講演があり下記に簡単にまとめてみました 高齢者の歩行の解析結果を示されましたが、高齢者のリハビリに応用できそうです…

パーキンソン病を科学する3

PINK1,Parkinなどの遺伝子は、家族性パーキンソン病の原因遺伝子として知られています。これらは、ミトコンドリア(酸素を使いエネルギーを産生する細胞内器官)異常をきたしパーキンソン病を発症することが明らかになっています。 これらの異常は、ドパミン晨…

クーデックエイミーを導入しました~スマホ操作で「疼痛コントロール」可能 #在宅医療

在宅医療において癌患者さん、慢性心不全の患者さんなどで麻薬や鎮静の薬を精密に投与する必要が生じます。こうした患者への投薬行う場合、今までは機器をレンタルして投薬を行っていましたが、在宅でも使用できる機器が登場しました。 名称はクーデックエイ…

パーキンソン病を科学する2

パーキンソン病の原因は、単一因子でなく複合因子に依るとするのが現在の医学的理解です。その一つとして酸化ストレス仮説が言われておりドパミン代謝においても活性酸素を生じドパミン神経細胞死に至らしめるとされています。酸化ストレスを生じる原因はド…

在宅医療での腹部膨満感の原因と治療法~イレウス(胃十二指腸より下の閉塞)嘔気・嘔吐への対応

消化器がんに限らず、婦人科、泌尿器科がんなど幅広く腹水貯留は生じます ただしがん患者さん腹部膨満感の原因は腹水だけでないことを常に念頭におく必要があります。 その一つがイレウス、サブイレウスであり腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金…

パーキンソン病を科学する1

今回からパーキンソン病に関して、科学していきたいと思います。 まず、パーキンソン病の原因は単一因子で説明困難であり、上図のように多様な因子によるものと現在では考えられています。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www…

高齢者の失神原因と予防法~在宅医療における高齢者の失神について

高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。 高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する38

IADの予防策は 1.排泄物が付着した時は速やかに除去する 2.皮膚のバリア機能を補完する 3.排泄物と皮膚の接触を回避する You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q #失禁関連皮…

除圧材による踵部褥瘡の迅速な改善と治療効果~踵部の褥瘡に関するクッション材の提案(在宅医療における褥瘡管理)

アルツハイマー型認知症の患者さんで誤嚥性肺炎起こし、ベッド上での生活が長くなり踵部に黒色壊死を生じてしまいました。 まず、黒色壊死部は肉芽形成を阻害する蓋のようになってしまいますので、ゲーベンにて融解させ 踵部の黒色壊死をゲーベンにて処置し…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する37

皮膚カンジダ症の疑いがある場合 ①真菌感染の有無を診断するために、専門医にコンサルテーションする。 ②真菌感染が認められれば、適切な外用薬での治療が大切。 ③過度な湿潤環境を避けるために、速やかなおむつ交換などの排泄ケアを実施する。 ④スキンケア…

オープンドレナージで確実治癒~背部粉瘤感染粉瘤感染の治療報告

在宅患者さんでの症例で背部粉瘤感染の症例を報告します。 以前からの粉瘤ありましたが、疼痛あり熱感も生じており、当初は内服抗生剤で経過診てましたが、症状は悪化傾向でした。 発赤部にエコーを当てると、皮下に低エコー域を認め、深さは約2cm程度でした…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する36

潰瘍がある場合の注意点は ①スキンケアに加え湿潤環境によると治癒促進を図る。 ②クローン病や潰瘍性大腸炎などの鑑別診断が必要。 ③指示の薬剤を使用するとともに潰瘍部が排泄物で汚染される場合はびらんと同様に皮膚保護剤などを使用する。浸出液が多い場…

オピオイド抵抗性に対する新たなアプローチ~がん終末期の鎮痛補助及び終末期不穏に対する、在宅でのもう一手

最近経験した症例です。 がん疼痛は体性痛,内臓痛,神経障害性疼痛に分類されますが,神経障害性疼痛は腫瘍の神経浸潤によって生じ,しばしばモルヒネなどのオピオイドに抵抗性で難治性です。 通常プレガバリン、ミロガバリンなど使用しますが、そもそも内…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する35

皮膚の状態に応じたケアが必要な場合があります。 具体的には 紅斑・びらんがある場合 潰瘍がある場合 皮膚カンジダ症の疑いがある場合 が挙げられます。 紅斑・びらんがある場合には 紅斑部:清拭・洗浄・保湿後、皮膚保護剤や皮膚皮膜剤を用いた保護を行う…

高齢者の幻聴と妄想:レキサルティでの治療効果を考察~高齢者の遅発パラフレニー:幻聴、妄想にレキサルティ投与の効果

ショートステイ中、廊下から「やっぱりこいつだ」という男の声を聞いた。自宅に帰ってきてから、天井から声が聞こえるようになり、天井に「面と向かって言え」などと話し掛けている。押入れを開けたり、家の中を徘徊するようになったと相談がありました。 抑…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する34

IADの尿の管理は 日常生活自立度・身体のサイズ、失禁量を考慮しておむつを選択するおむつのない環境を悪化させないような、逆戻りしない通気性のよいおむつを選択する 排尿口付近で吸収するスポット吸収するおむつの機能は有用(尿の皮膚への接触を減らすこ…

誤嚥性肺炎を予防するための在宅内視鏡検査~内視鏡検査(嚥下内視鏡)を開始しました

嚥下内視鏡とは(嚥下内視鏡による誤嚥しているかどうかの評価高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐために)ご自宅にて内視鏡を持参し行える検査です。病院やクリニックへ出向かずにご自宅にて検査可能です。 誤嚥性肺炎を繰り返している、飲み込みや嚥下に不安を感じる場…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する33

IADの便の管理に関して、水様便の場合 水様便は水分や消化酵素が多いため、便の収集に工夫が必要 非感染性の下痢便は軟便パッドや肛門パウチを使用 ポリエステル綿で便が皮膚に付着することを防ぐ 持続する頻回な下痢便には下痢便ドレナージも有用(保険償還…

在宅環境での胸水ドレナージの注意点~在宅診療における胸水管理について

在宅診療において担癌患者さんには胸水貯留に伴う呼吸苦ある患者さんがいます。最近在宅診療において胸水の排液(間歇的、持続的いずれも)を行う患者さんが増え、常に当院でも胸水ドレナージ行う患者さんがいる為、少しまとめてみます 胸水貯留の患者さんにお…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する33

便の管理は 有形便であるか、軟便であるかで異なります 日常生活自立度・身体のサイズ、失禁量を考慮しておむつを選択する。 必要に応じて軟便パッドや肛門パウチの検討 肛門括約筋の障害で便が漏れる場合は肛門用プラグなども有用 You Tubeにて在宅診療の知…

壊死性筋膜炎の危険性とは?#在宅医療

脳外科医として病院勤務していた頃、脊椎の手術も行っていました。 特に静岡での勤務時代には整形外科医で高名な脊椎外科の先生が脊椎センターを立ち上げ、その末席で脳外科医として週1回の外来と年間で40-60件程度の脊椎の手術をしておりました。ただ、外来…

失禁関連皮膚炎(IAD: incontinence associated dermatitis)を科学する32

便性のコントロール河川敷として 整腸剤の使用による腸内環境の改善 緩下剤や下剤の使用状況 食事や経管栄養の摂取状況 による管理を医師だけでなく、様々なスタッフにて管理を行うことが必要です。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より ht…

在宅診療医のための尿路感染症最新情報!抗菌薬の選択肢を考察#在宅医療~在宅医療における尿路感染症について

JAMAに在宅診療(外来)での尿路感染症の診断と管理に関するレビューが掲載されています。いわゆる膀胱炎を含む尿路感染症に遭遇する機会は、すべての外来診療を行う医師にとって、きわめて多いものと思われます。非常に重要な知見が含まれていると思い、まと…