在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 94

前立腺がんの治療として、転移がん(遠隔、リンパ節)について詳述します。 ホルモン療法 すべて男性ホルモンテストステロン産生を抑制する治療 除睾術…手術で両側睾丸を切除 LH-RHアナログ(ゴセレリン、リュープロレリン)→初期に抗アンドロゲン薬(ピカルタミ…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 93

前立腺がんについて詳述します。 有病率は高いが、死亡率は高くない癌であり、緩徐進行性が多いことが特徴です。 限局がんと転移がんで治療が大きく異なります。 ・限局がん:切除が放射線治療などの局所治療を行います。 ・ホルモン治療、化学療法などの全身…

高齢者が夜間不穏になった場合

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 92

尿路上皮がんについて詳述します 腎盂、腎杯、尿管、膀胱の内腔を覆う移行上皮から発生するがんであり ・どの部位から発生しても同じ性質 ・時間的/空間的多発性がある の特徴を有します。 リスクファクター:喫煙であり、遠隔転移例は根治不能、生存期間中…

高齢者の腰痛に関する注意点

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 91

腎がんの治療に関してVEGFマルチキナーゼ阻害薬(血管新生阻害作用),mTOR阻害薬(分子標的薬)を詳述します VEGFマルチキナーゼ阻害薬(血管新生阻害作用) スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ 一定の効果があるが、毒性のため長期使用は困難→VE…

ポリファーマシーの功罪~年をとると色々痛くなるので痛み止めが必要な時

年をとると色々な箇所が痛くなります。腰痛などは、大なり小なりあると考えます。こうした際に痛み止めをどうするか。NSAIDsと呼ばれる痛み止めには胃潰瘍などを生じさせるリスクあり胃薬が必要です。痛み止めのロキソニンは切れ味は良いですが、その分副作…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 90

腎がんの治療に関して詳述します 限局がんに関しては 外科的切除 術後補助療法の有効性は証明されていない 転移がんに関しては 転移がんでも原発巣切除で予後が改善する症例もある→インターフェロン、VEGF阻害薬の化学療法が有効 緩徐進行性では転移巣切除で…

ポリファーマシーの功罪~薬は少なければ少ないほど良い

ガスター等のH2ブロッカーを長期間使用することで、高齢者の認知機能が低下するリスクが報告されています。これは中枢神経にもH2受容体存在することが、その理由です。ただし、こうした薬剤は脳内への移行はしにくいのですが、腎機能障害などにより排泄が遅…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 89

今回から泌尿器がんについて詳述していきます 主な泌尿器がんは下記になります ・腎がん ・尿路上皮がん(膀胱、尿管、腎盂、腎杯) ・前立腺がん ・精巣がん 次に腎がんの診断についてですが特徴は ①無症状で他疾患の精査中に偶然発見される ②増大して疼痛や…

在宅医療における高齢者の脱水について

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 88

ここで婦人科系がんで使用されるカルボプラチン+パクリタキセルについて詳述させて頂きます。 ・子宮体がん・頸がん、卵巣がんで標準的に使用され、特に卵巣がんでは長期間使用します ・カルボプラチンの長期使用でアナフィラキシーショックを生じることあ…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 87

卵巣がんの治療は、ごく早期を除き、術後抗がん剤治療が必要です。 具体的には、カルボプラチン+パクリタキセルを投与します。 ・化学療法感受性であり ・進行がん患者の生存期間中央値は約2年です ・腫瘍マーカーはCA125が有効です #卵巣がん #卵巣がん…

在宅医療における高齢者の食思不振について

いつの時代もダイエットは、流行っています。 僕自身学生時代はラグビー部所属していたので、ケガをしないよう筋トレで体重増やしていた時期と、研修医時代に体重が8-10kg落ちた時期を除き多少の増減はありますが、最近20年は±1.5kg以内の変動です。 しかし…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 86

卵巣がん・原発性腹膜がんについて詳述します。 まず特徴として、婦人科がんで死亡する患者数が最多であり、50-60歳代に多い ハイリスクは 卵巣がんや乳がんの既往歴です 早期発見が難しく 診断時 多くの場合がステージⅢ~Ⅳ (腹膜播種、後腹膜リンパ節転移、…

高齢者不眠に対する考察~高齢者の夜は長い

ご高齢の患者さんの悩みの一つに眠れないというのがあります。 高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。 高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 85

子宮体がん(子宮内膜がん)について詳述します 閉経後女性に多く(中央年齢63歳)、高齢女性の不正性器出血に注意が必要です 高リスクは下記です 高年齢 エストロゲン製剤 タモキシフェン 少ない妊娠回数 リンチ症候群、糖尿病 高脂肪食など 子宮体がん(子宮内…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 84

子宮頸がんの治療は病期において治療選択が異なります 早期:外科的治療 切除困難例に関しては化学放射線療法を行います:放射線感受性が高い 放射線治療 50.4Gy/28回 Day1~ シスプラチン 40mg/m2 Day1,8,15,22,29 進行がんには化学療法としてカルボプラチ…

認知症の妙薬2

前回運動による認知症予防効果について触れたのですが、逆の研究結果がBMJ. 2017 Jun 22;357に掲載されています。 内容は認知症を発症した患者とそれ以外の参加者の間で、追跡期間中の1週間あたりの総運動時間、低強度の運動をした時間、中~高強度の運動を…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 83

がんにおいて唯一存在する子宮頸がんワクチン= HPV(ヒト乳頭腫ウィルス)ワクチンについて詳述します ・高リスクウィルスの感染を予防できる(16,18>31,33,35,45,52,58) *米国では9価ワクチンも使用可能 ・子宮頸がんはワクチンは予防可能な唯一のがん ・ウ…

認知症予防の妙薬その1

アルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」のニュースが駆け巡りましたが、治療効果、治療適応、費用などまだまだ夢の薬でないというのが実感です。自身、年齢と認知機能のギャップのある方には、個人的によく3つの質問を20年近くしています。それは職…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 82

少し戻りまして胆道がん、膵がん患者に一般在宅医が遭遇するケース 胆・膵がんは予後不良で、長期に元気な症例は少ない ●胆道の問題:胆管炎、狭窄や閉塞による黄疸 再発や進行に伴う症状 ●肝転移やリンパ節転移による閉塞性黄疸 ●がんの進行による食思不振・…

在宅診療における胸水管理について

在宅診療において担癌患者さんには胸水貯留に伴う呼吸苦ある患者さんがいます。最近在宅診療において胸水の排液(間歇的、持続的いずれも)を行う患者さんが増え、常に当院でも胸水ドレナージ行う患者さんがいる為、少しまとめてみます 胸水貯留の患者さんにお…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 81

今回から婦人科系がんに関して詳述します 婦人科がん ●子宮頸がん ●子宮体がん(子宮内膜がん) ●卵巣がん・原発性腹膜がん ●化学療法はすべて、カルボプラチン+パクリタキセル 子宮頸がん ●婦人科がんで最多・発症年齢は、子宮体がんよりも若い ●ヒト乳頭腫…

ヒートショック現象

日本家屋は非常に寒い。木造家屋が多いためお風呂やトイレなど肌が露出する場所での気温が非常に低い場合が多い。元野球監督であり評論家である野村克也さんがお風呂場で亡くなっているのが見つかったなども記憶に新しいところです。推定でヒートショックで…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 80

膵がんの治療は 切除出来る場合は ü切除後補助化学療法6カ月 üS-1またはゲムシタビン単独 切除不能の場合は 化学療法は状態の良好な患者(PS0-1)だけに有効であり 最新レジメン(FOLFINOX)で生存期間中央値11カ月 ゲムシタビン単独で生存期間中央値5-6カ月→生…