在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者の幻聴、妄想にレキサルティ投与の効果

ショートステイ中、廊下から「やっぱりこいつだ」という男の声を聞いた。
自宅に帰ってきてから、天井から声が聞こえるようになり、天井に「面と向かって言え」などと話し掛けている。押入れを開けたり、家の中を徘徊するようになったと相談がありました。

抑肝散7.5g 3 毎食前
クエチアピン37.5mg/日(朝食後12.5mg夕食後25mg)を処方し、

もともと内服していた眠剤の、サイレースマイスリーは中止するように指示しました。

しかし、その後も昼夜問わず、幻聴、妄想は続きました。
そして、天井からの声をノートに書き続けていました↓

また、夜に起きて人がいないかどうかの確認に外に出て行こうとするため、同居の娘さんと一緒に外に出て、人がいないことを確認しているとのことでした。抑肝散、クエチアピンは全く効果がみられないため、どちらも中止し、レキサルティ1mg/日を処方しました。レキサルティを内服してから2-3日で異常行動は減り、幻聴、妄想もほとんどみられなくなりました。最終的に、レキサルティ1.5mg/日で継続しています。レキサルティ(ブレクスピプラゾール):ドパミン受容体部分作動薬。幻覚や妄想への作用が期待される。鎮静効果は非常に弱い。この症例は、「遅発パラフレニー」かもしれません。