在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

痛みのない傷の処置を目指して

当クリニックでは、褥創や傷を洗浄する際には水道水で良いと考えてますが、より痛みが生じないように、生理食塩水で洗うことを推奨しています。 生理食塩水は血漿浸透圧と同等な浸透圧を持ち、組織に対する刺激が少ないためです。 病院でよく行われているの…

8月10日 横浜市立大学教授 高橋琢哉先生との依頼講演のお知らせ

横浜市立大学教授 高橋琢哉先生と講演依頼のお知らせです。 以前書いた、脳梗塞の拡大抑制仮説の論文に関する話が主で、現在主戦場である在宅医療から少し離れますが、目の前の患者さんを大切にしながら、将来の治療に結び付く医療研究も地道継続したいと考…

8月10日 横浜市立大学教授 高橋琢哉先生との依頼講演のお知らせ

横浜市立大学教授 高橋琢哉先生と講演依頼のお知らせです。 以前書いた、脳梗塞の拡大抑制仮説の論文に関する話が主で、現在主戦場である在宅医療から少し離れますが、目の前の患者さんを大切にしながら、将来の治療に結び付く医療研究も地道継続したいと考…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 4

緩和医療で欠かせない持続皮下注射(CSI: Continuous Subcutaneous Injection)です。終末期の患者さんにおいて中心静脈が確保されている患者さん以外において血管確保が難しくなっていきます。 また在宅でのケアにおいて皮下注射の方が管理上も簡便になります…

リウマチ性多発筋痛症の診断と治療

高齢者を中心に診療していると、高齢者に多い疾患であるPMR(リウマチ性多発筋痛症)によく遭遇します。 第95回日本整形外科学会学術総会において、「リウマチ性多発筋痛症の診断と治療 杉原 毅彦先生 聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科」と…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 3

癌疼痛患者にどのオピオイドを選択すればよいのか?自身も悩むことありますが、簡単にまとめると下図のようになります。まず基本として *全て強い推奨。等価換算量のあれば5剤は差がないことです。 *呼吸症状の緩和にはモルヒネが最もエビデンス蓄積され…

認知症の行動・心理症状に対する薬物療法

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がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 2

オピオイドと比較して鎮痛効果の弱いNSAIDs/アセトアミノフェンは、どの様な位置づけになるでしょうか。 がん疼痛のある患者に対してNSAIDs/アセトアミノフェンは推奨されるか?という問いに対して。 ガイドラインにおいては、痛みに対し、初めて投与する鎮…

プレタールという薬

プレタールという薬は本邦から開発された抗血小板剤であり、この薬の第三相試験(その薬が本当に効果あるか、悪いことが起きないか実際の臨床で使用する試験です)において私もデータ処理などで関わった経験あり思い入れある薬です。その効果は、シロスタゾー…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 1

在宅医療医においてがん終末期治療 いわゆる がん緩和ケアに関するトレーニングは必ず行わなければなりません 私自身も現在において緩和ケア病棟へ定期的に勉強しに行っております 但し、がん緩和ケア病棟の治療をそのまま在宅医療に持ってこれない場合もあ…

在宅医療におけるイレウス(胃十二指腸より下の閉塞)嘔気・嘔吐への対応 ~とてもつらい腹部膨満感の原因と対処~腹水だけではない

消化器がんに限らず、婦人科、泌尿器科がんなど幅広く腹水貯留は生じます ただしがん患者さん腹部膨満感の原因は腹水だけでないことを常に念頭におく必要があります。 その一つがイレウス、サブイレウスであり腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 100

膠芽腫の治療とりわけ、化学療法に関して詳述します N Engl J Med 2005; 352:987-996にて発表されたStuppレジメンは衝撃的な内容でした それまで数十年間殆ど変化の無かった膠芽腫の治療において生存曲線を10-20%押し上げるものでした。 またそれ以外の治療…

在宅診療における敗血診断

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 99

膠芽腫の治療について詳述します 切除については 全摘画像で見える腫瘍部分を全摘する→ミクロの腫瘍が必ず残存する 全摘が不可能であれば部分切除、生検 切除した後は術後化学放射線療法を行います。これについては治療において2005年以降大きなパラダイムシ…

在宅医療における高齢者の失神について

高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。 高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 98

膠芽腫(GBM)glioblastomaについて詳述します ・成人の原発性悪性腫瘍で最多です ・不整形なリングエンハンスメントを示します ・浸潤性に増殖し正常能脳との境界は不明瞭、画像の範囲を超えて浸潤します 原発性膠芽腫(primary GBM)とは、初めから膠芽腫であ…

在宅医療において患者さんが不穏・せん妄になったら

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 97

脳腫瘍について詳述します 患者数は、圧倒的に転移性>>原発性です。 転移性とは脳に転移してきた腫瘍であり、原発腫瘍としては肺、乳>消化器>原発不明の頻度となります。 ※予後は原発腫瘍の状態で決まる 原発性とは脳から発生した腫瘍であり、 膠芽腫な…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 96

泌尿器がんにおいて在宅医療医が注意することは、下記に挙げられます 腎がん ü画像で偶然発見される ü切除後は健常人と同じ ü分子標的薬と免疫療法の副作用に注意 尿路上皮がん ü再発が多い ü進行がんは胃がんなどの経過と同様に予後不良生存期間中央値1年 …

慢性心不全の終末期医療

以前の経験した患者さんです。 90代の男性で5年前に心筋梗塞を患いカテーテルの治療受けましたが、左心機能不全にて治療抵抗性の慢性心不全でしたが、ご自宅で生活させていました。その後発熱に伴う意識障害、体動困難にて入院となり高齢の奥様に説明し急変…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 95

精巣がんは、過去には若年男性死因の第一位でしたが現在は転移がんも化学療法で根治可能 *一部のハイリスクは予後不良 (non-seminomaで縦郭原発、肺以外の臓器転移、腫瘍マーカー異常高値) SeminomaとNon-seminomaに分類 Seminoma 腫瘍マーカー:HCG,LDH と…

在宅医療と抑制

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 94

前立腺がんの治療として、転移がん(遠隔、リンパ節)について詳述します。 ホルモン療法 すべて男性ホルモンテストステロン産生を抑制する治療 除睾術…手術で両側睾丸を切除 LH-RHアナログ(ゴセレリン、リュープロレリン)→初期に抗アンドロゲン薬(ピカルタミ…

高齢者が夜間不穏になった場合

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 93

前立腺がんについて詳述します。 有病率は高いが、死亡率は高くない癌であり、緩徐進行性が多いことが特徴です。 限局がんと転移がんで治療が大きく異なります。 ・限局がん:切除が放射線治療などの局所治療を行います。 ・ホルモン治療、化学療法などの全身…

高齢者の腰痛に関する注意点

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 92

尿路上皮がんについて詳述します 腎盂、腎杯、尿管、膀胱の内腔を覆う移行上皮から発生するがんであり ・どの部位から発生しても同じ性質 ・時間的/空間的多発性がある の特徴を有します。 リスクファクター:喫煙であり、遠隔転移例は根治不能、生存期間中…

ポリファーマシーの功罪~年をとると色々痛くなるので痛み止めが必要な時

年をとると色々な箇所が痛くなります。腰痛などは、大なり小なりあると考えます。こうした際に痛み止めをどうするか。NSAIDsと呼ばれる痛み止めには胃潰瘍などを生じさせるリスクあり胃薬が必要です。痛み止めのロキソニンは切れ味は良いですが、その分副作…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 91

腎がんの治療に関してVEGFマルチキナーゼ阻害薬(血管新生阻害作用),mTOR阻害薬(分子標的薬)を詳述します VEGFマルチキナーゼ阻害薬(血管新生阻害作用) スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ 一定の効果があるが、毒性のため長期使用は困難→VE…

ポリファーマシーの功罪~薬は少なければ少ないほど良い

ガスター等のH2ブロッカーを長期間使用することで、高齢者の認知機能が低下するリスクが報告されています。これは中枢神経にもH2受容体存在することが、その理由です。ただし、こうした薬剤は脳内への移行はしにくいのですが、腎機能障害などにより排泄が遅…