在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-01-01から1年間の記事一覧

認知症の真実:再生不可能な神経細胞と治療薬のリスク #認知症

認知症が薬で治るか?という問いの前に認知症とは病気なのでしょうか?人の神経細胞は再生しません。一応、これは原理原則であり、実際再生される部位もあります。但し、人間神経細胞が再生しないことは、理に適っていると私は考えます。もし、脱落した神経…

心不全を科学する56

失神の原因として低血圧の基準値規定が必要です 男性の場合は以下 早朝家庭血圧108/68以下 夜間血圧87/50以下 女性の場合は以下 早朝家庭血圧90/68以下 夜間血圧84/49以下 問題となるのは反射性失神です、この場合起立性低血圧基準として以下が規定されます …

高齢者の発熱対応:急変時の緊急連絡要請 #在宅医療

脳卒中などで意識状態が清明でない患者さんなどにおいて、発熱は常につきまとう症状です。人は寝ている間も無意識下に嚥下しています。これは唾液もそうですし、食事した際の食べ物や胃液が逆流してくる場合も同様です。こうした患者さんに都度検査や抗生剤…

心不全を科学する55

高齢者の失神についてthe SynABPM 1 studyは、興味深い結果を示しています。 早朝家庭血圧125以上 1回でもBPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い 早朝家庭血圧125以下 2回以上BPs 90以下が見つかれば失神を起こす可能性が高い 特に超高齢者はガイ…

ケアマネージャーの勉強から得た気づき#保険制度

自身、勤務医時代に介護保険と医療保険の明確な違いを理解できていませんでした。以前の施設で勤務していた時にデータ整理の際に10年間で約1万人の脳卒中診療に携わり、7千人の脳梗塞患者を診ていたことを知りました。その中でかなりの患者さんが介護申請を…

心不全を科学する54

高齢者心不全において、失神という病態は非常によく遭遇する病態です。 では、血圧低下とは何でしょうか?そもそも血圧とは何でしょう? まず、血圧は心拍出量×末梢血管抵抗にて規定されます。 末梢血管抵抗↓にての血圧低下の典型は敗血症によるseptic shock…

骨粗鬆症治療の新展開:注射薬で骨形成促進#

これは、非常に難しい問題です。外科的な治療は偽関節など不安定性を伴う場合に検討されますが保存的治療においては、また別に機会設けて書かせて頂きます。自身も圧迫骨折で偽関節生じた患者さんに固定術やBKP(骨折した箇所をセメント様のもので固める治療)…

心不全を科学する53

心不全を予防するために行うべきこととして、高血圧の管理が重要です。 血圧はどれくらいに維持すればよいか?という疑問があります。 SPRINT Research Group.において 厳格降圧群と標準降圧群での比較が行われましたが、心不全で厳格降圧群の有意な効果を認…

薬剤性パーキンソニズムの注意点

パーキンソン病は、中脳黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の疾患です。診断に関してはMIBG心筋シンチグラフィーと呼ばれる、心臓の交感神経の状態を診る検査を行う場合もあります。これは、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)というノルエ…

心不全を科学する52

心不全を予防するために行うべきこととして、高血圧の管理が重要です。 血圧はどれくらいに維持すればよいか?という疑問があります。 SPRINT Research Group.において 厳格降圧群と標準降圧群での比較が行われましたが、心不全で厳格降圧群の有意な効果を認…

在宅医療での発熱対応と患者ケア

脳卒中などで意識状態が清明でない患者さんなどにおいて、発熱は常につきまとう症状です。人は寝ている間も無意識下に嚥下しています。これは唾液もそうですし、食事した際の食べ物や胃液が逆流してくる場合も同様です。こうした患者さんに都度検査や抗生剤…

心不全を科学する51

利尿薬の作用を規定する因子は、下記に挙げれます。特に吸収は重要であり、利尿剤はアルブミンに乗り腎臓へ向かいます。つまり低栄養状態では、殆ど効かないので、次項で述べますが注意点が色々あります。特に担癌患者の腹水では、殆ど低栄養であり利尿剤が…

高齢者における亜鉛不足と健康リスク

亜鉛が不足すると出現する症状として 脱毛、皮膚炎②貧血③味覚障害③食欲不振④下痢 何か在宅医療・高齢者には、いくつか必ず当てはまるような症状です。特に慢性肝疾患、糖尿病、腎不全、慢性炎症性腸疾患があると、亜鉛欠乏に陥りやすいと言われています。慢…

心不全を科学する50

心不全における利尿薬の使い方はどうすればよい? 利尿剤の理解には、腎臓の生理学を理解する必要があります。正常な腎臓100ml/分の水分が糸球体から濾過99%再吸収します。なので尿量を増やすためには、糸球体濾過量を増やす、再吸収量を減らすことが必要と…

褥瘡治療の革命

脳外科医として勤務医をしていたころ、創部感染の問題は時起こっていました。脳卒中患者の褥瘡も頭を悩ませる問題です。研修医の頃は、毎朝傷を消毒してガーゼ交換することが至上の命題であり、唯一の病院内での存在意義でもありました。そうした頃に創処置…

心不全を科学する49

心不全×腎機能障害をどうすればよい? 腎機能評価の最も簡便なマーカーは?eGFR(糸球体濾過量)≒有効ネフロンのGFR×ネフロン数です。 心不全に伴う腎機能障害は、慢性と急性で区別する必要があり 慢性心不全により腎機能障害が生じる理由は、 交感神経系の賦…

食生活と不定愁訴の関係性を考える#食生活

勤務医時代に私と同世代の方が、めまいがする、足ジンジンする、耳鳴りがするので調べて欲しいと外来に来られてました。私自身、体調不良というものを現在まで殆ど経験したことがなく、正直型通りの画像、検査などにて問題ありませんとしておりました。ただ…

心不全を科学する47

心不全×腎機能障害をどうすればよい? 腎機能評価の最も簡便なマーカーは?eGFR(糸球体濾過量)≒有効ネフロンのGFR×ネフロン数です。 心不全に伴う腎機能障害は、慢性と急性で区別する必要があり 慢性心不全により腎機能障害が生じる理由は、 交感神経系の賦…

在宅医療でのホルター心電図必要性とは?#不整脈診療

在宅医療における不整脈診療 当クリニックでもホルター心電図での不整脈検査をしばしば行っております。 当クリニック採用のホルター心電図は24時間タイプでなく、7日間タイプで、非常に小型であり、当クリニックで不整脈を初めて指摘され、そのまま治療に移…

心不全を科学する47

心不全×腎機能障害の治療は、どのように行うべきか?重要ことは うっ血の解除、心拍出量の担保、心不全の標準治療の導入です。 標準治療の導入により一時的にeGFRは低下します。これはInitial Dipと呼ばれる病態であり、輸出細動脈が開き、一時的にお盆の底…

先生あとどれくらいですか?~家族から聞かれる質問に対して

患者さんの家族からよく聞かれる質問に「先生あとどれくらいですか?」という質問があります。そうした時「患者さんは最後最期まで聞こえてますから、そばに居てあげて下さい」と言うようにしてます。ただし、医学的にはある程度の時間を予測することができ…

心不全を科学する46

メトホルミンには、心不全リスク抑制は下記にように多岐にわたります。 ※乳酸アシドーシスに注意しながら適切に使用すれば、非常に有用な薬剤となります。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9Uws…

リスクを冒してでも歩行を許可するべき理由 #廃用予防

勤務医時代に入院に際して全例取させられていたのが、身体抑制に関する同意書でした。これは手術あとに、麻酔の影響などにより前後不覚となる場合が往々にしてあり、これを取得することはある程度、理に適っていると思います。但し、脳卒中を主に治療してい…

心不全を科学する45

You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q #体循環#肺循環#心不全##心不全#HFpEF#BNP#ARNI#DM 在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら…

膝関節注射の方法:正しい刺入点と注意事項

膝関節注射(ヒアルロン酸注射)の方法について解説します。 ①膝は伸展位とします。伸展位では、膝蓋骨が動くようになるので注射するスペースができます。 ②膝蓋骨の位置を指で触って確認します(写真の〇)。 ③膝蓋骨を動かしながら、膝蓋骨の裏のスペース…

心不全を科学する44

心不全を予防するために行うべきこととして、糖尿病の管理が重要です。 その理由として 直接要因(炎症・酸化ストレス)は 心肥大、微小血管障害であり 間接要因は 虚血性心疾患、腎機能障害です。 心不全×糖尿病の治療薬として重要なのはSGLT2阻害薬? DPP4阻…

リハビリテーションの新たな可能性:起立-着席運動の効果とは? #リハビリ #症例紹介

新版 間違いだらけのリハビリテーション 「起立-着席運動」のすすめ | 三好 正堂 |本 | 通販 | Amazon リハビリは30年前と比べて治療成績が悪くなっているとのことです。 筆者はその理由は、額に汗する地道な治療が少なくなってきたためではないかと言います…

心不全を科学する43

HFpEFの降圧目標は、どのように設定すべきでしょうか。 下記に示すように降圧剤の使用に関しては慎重になった方がよい?データもあります。 HFpEFは血圧を下げ過ぎてもよくないかもしれません。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https…

亡くなる人は浴槽内が圧倒的!ヒートショックの恐怖とは?#入浴中の突然死

ヒートショックの原因として寒い脱衣所や洗い場では交感神経が高まり、血圧上昇により心血管イベント(心筋虚血、不整脈、脳内出血)が増加するとされています。しかし、実際脱衣所や洗い場で亡くなる人はわずか(3.4%)であり、浴槽内で見つかることが圧倒的に…

心不全を科学する42

HFpEF治療においてMRAは重要ですが、そのRCTであるTOPCATのサブ解析は?結果として良い結果はだせませんでした。しかし、サブ解析をみると北米の結果は良く、東欧・ロシアが結果の足を引っ張っているの明らかです(そもそも飲んでいないというかもという疑い…