在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

がん性皮膚潰瘍の臭いと治療方法~がん性皮膚潰瘍臭に対するロゼックスゲルの適正使用

画像は転移性腫瘍が皮膚上に表在化して自壊したものです。

こうしたがん性皮膚潰瘍の処置について、当クリニックはロゼックス®ゲルを頻用しますので、これについて詳述します。


がん性皮膚潰瘍の病態

がん性皮膚潰瘍は、皮膚に浸潤もしくは転移・再発したがんが体表面に現れ、潰瘍化した状態です。
転移性がんの5~10%で発生し、特に乳がんおよび頭頚部がんにおける発生率が高いと報告されています。※1

潰瘍面からの独特の不快な臭い(がん性皮膚潰瘍臭)は、潰瘍深部の感染が主な原因であり、腫瘍組織の壊死過程における代謝産物である脂肪酸類も関与していると考えられています。

潰瘍病変に感染する嫌気性菌として、Bacteroides属、Clostridium属などが知られており、これらの嫌気性菌が産出する酪酸、吉草酸、ヘキサン酸などの揮発性短鎖脂肪酸と、腫瘍組織の壊死過程に生成するポリアミン類のプトレシン、カダベリンが臭気物質となります※2。

がん性皮膚潰瘍臭の影響

(1)直接的な影響
不快な臭いに持続的にさらされることによる強い苦痛

(2)間接的な影響
自尊心が低下し、社会的な孤立や治療意欲の喪失を招く

(3)周囲の人々への影響
家庭や医療スタッフがコミュニケーションをとりづらく感じ、看護・介護を困難なものにする

がん性皮膚潰瘍臭のケア方法

(1)創の洗浄
創の洗浄によって異物、汚染物、微生物などを取り除き、創傷治癒を促進させることはwound bed preparation(創面環境調整)につながり、特に感染に対する治療として重要です。

がん性皮膚潰瘍においては、潰瘍周囲は弱酸性洗浄剤をよく泡立ててやさしく洗浄し、潰瘍部と潰瘍周囲皮膚をたっぷりの微温湯で洗い流します。
潰瘍部位の壊死組織は細菌繁殖の温床となるため、可能であれば除去しますが、出血のリスクが高い場合は避けます。

(2)外用薬ロゼックス®ゲルの使用
有効成分のメトロニダゾールが嫌気性菌のDNA合成を阻害することによって静菌/殺菌作用を示します。

[ロゼックス®ゲルを使用したケア方法]
1:潰瘍および周囲を洗浄し、潰瘍の範囲に合わせたガーゼ等を準備します

2:ガーゼ等にロゼックス®ゲルをのばし、潰瘍に貼り、テープで固定します

3:ガーゼ等の上から浸出液吸収用の吸水パッドを重ねてテープで固定します

[ロゼックス®ゲル 使用時のポイント]
 10cm×10cmの潰瘍に対して1回あたり約8gの塗布を目安とします。

[ロゼックス®ゲル 使用上の注意]
禁忌についての補足
・「脳・脊髄に器質的疾患のある患者」とは?
こちらは内服薬の「フラジール錠」に準じた記載となっています。
フラジール内服錠の国内副作用症例報告における具体的な疾患名は〔多発性脳梗塞、感染性海綿静脈洞血栓症てんかん、細菌性髄膜炎髄膜炎ラクナ梗塞、パーキンソン症候群等〕となっています。

※ロゼックスゲルは潰瘍部に塗布するため血中に移行することが判明しています。
ロゼックスゲルを1日最大30グラム7日間潰瘍部位に塗布した際のCmaxは852ng/mLでした。
この値は、フラジールを健康成人に投与した際のCmax 7248ng/mLの8.5分の1程度です。

【文献】
※1 McDonald A et al.: J Palliat Med, 9(2), 285-296, 2006
※2 Alexander S: J Wound Care, 18(8), 325-329, 2009
※ がん性皮膚潰瘍臭に対するロゼックスゲルの適正使用

がん性皮膚潰瘍は痛み、出血、臭いなどの身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛など全人的苦痛につながります。
ロゼックス®ゲルにより、がん性皮膚潰瘍に苦しむ多くの患者さんのQOLが少しでも改善することを期待しています。

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