在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

心不全を科学する22

BNPは、左室の負荷により主に左室から分泌される物質であり 主な作用は、血管拡張作用、アルドステロン分泌抑制作用、ナトリウム利尿作用です。そしてBNPとNT-proBNPの違いはクリアランスの違いです。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より …

認知症治療の新展開:BPSDへの薬物療法に着目#

施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりし…

心不全を科学する21

BNPとは何?という問いに関して、BNPは左室拡張期壁応力に比例して分泌される と答えることができます。そして左室拡張期壁応力は、下記の式で表せます。檸檬絞りで内側にかかる圧力が高くなるほど、果汁が絞られるようにBNPも多く分泌されます。 You Tubeに…

抗血小板剤の効果と副作用を徹底解説!プレタール®の魅力とは? #プレタール #薬剤

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"9.14.2"}">プレタールという薬は本邦から開発された抗血小板剤であり、この薬の第三相試験(その薬が本当に効果あるか、悪いことが起きないか実際の臨床で使用する試験です)において私もデータ処理な…

湘南鎌倉総合病院にて緩和ケアチーム・総合診療内科 宇井先生の勤務開始のお知らせ

湘南鎌倉総合病院にて緩和ケアチームを牽引し、総合診療内科医として活躍される宇井睦人先生が非常勤医師として勤務開始となりました。自身の診療カバンには、常に宇井先生の緩和ケアの本が入っており、Care Net TV(医師向けの有料教育サイト)で宇井先生の講…

心不全を科学する20

高齢者の心不全(HFpEF)の運動耐容能低下のメカニズム =運動した際に酸素が有効に利用できない(最大酸素摂取量の低下)ことに原因があり、その原因は上記に挙げれるものです。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/…

qSOFA:敗血症疑いの早期判定ツール

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

心不全を科学する19

HFpEFの病態的特徴は? 左室が硬く、これにより下記のような循環的特徴が挙げられます。そして、こうした病態をコントロールする頸動脈の圧受容体も同様に、動脈硬化性変化で機能しない場合が多いのも特徴です。*画像が私が脳外科医として手術した頸動脈内…

爪を通さずに測定!パルスオキシメーターの新しい使い方#医療

パルスオキシメーターは皮膚を通して、動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を測定する機械です。 下の写真のように指に挟んで使用します。 注意点として、指先が冷えていて血流が悪い場合、爪にマニキュアが塗られている場合などは、正確に測れないことがあり…

心不全を科学する18

EFの保たれた心不全(HFpEF)の血行動態の特徴は、 1.運動時に左室に血液が入らない※末梢の静脈から心臓に動員する血液(unstress volume) 2.心拍数が上がらない※Chronotropic imcompetence です。こうした病態は下記のような機序にて生じます。 左心房の拡大➤…

高齢者感染症の警告サイン #軽度の意識障害

高齢者救急が難しいのは、高齢者は症状が非典型的であったり、認知症があるとうまく症状を訴えられないなどの点にあります。 例えば、高齢者の肺炎では約1/3で咳や発熱がなかったりします。咳や熱がないからと言って、肺炎は否定できないのです。 今回は、高…

心不全を科学する17

HFpEF発現のメカニズムとは?HFpEFの発現は、心機能曲線にて理解することができます。酸素需要が高まり、左室充満圧(左室拡張末期容積)が上昇すると、健常人は心拍数を上げて代償しようとします。この時、HFpEF硬く、内腔の狭い心腔にて代償困難であり心拍数…

バイタルサインの重要性とは? 呼吸数と正常呼吸のポイント#

バイタルサインの重要性を簡単にまとめてみます。 ①バイタルサインとは「 生命兆候 」のことであり、「生きているのか?」「死んでいるのか?」「死にそうなのか?」の指標です。具体的には「呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、…

心不全を科学する16

HFpEFとHFrEF:病因の違いについて。まずHFpEFは加齢、高血圧、糖尿病が病因のベースとなります。HFrEFは、心筋虚血、心毒性、感染、炎症、遺伝子異常病因のベースです。つまり、極論的に言えば、肥満、メタボ、生活習慣はpEFと関連するがrEFと関連しないと言…

重症度を判断する新指標SIRS#

施設スタッフに、「患者さんが何℃以上であれば連絡したほうがよいですか?」と聞かれることがよくあります。 一応、「38℃以上になれば連絡してください」などど答えていますが、実際は、医師は熱だけで重症度を判断しているわけではありません。他のバイタル…

心不全を科学する15

HFpEFの疫学をざっくりと説明いたします。 65歳>のHF(心不全)の70%以上はHFpEFとされています。 HFpEFはHFrEFと比較して毎年10%ずつ増加。 高齢化、肥満、メタボ、DMの有病率増加が原因であり、今後も増加していくとされています。 You Tubeにて在宅診療の…

せん妄対策の秘訣:家族の支えと症状対応が重要 #せん妄対策

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

心不全を科学する14

EFの保たれた心不全(HFpEF)って何?まず、正常な人の心臓は左室に10入り、大動脈から10駆出する状態です。心不全とは、一般的に左室のポンプ失調を示すものであり10入り、6しか駆出できないポンプ=エンジンの不全と考えます。EFとは心臓にどれだけ入り、…

高齢者の在宅医療での課題: 転倒リスクと薬剤管理#

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

心不全を科学する13

心不全患者さんの予後は?心不全患者さんの予後は、以前と比較して明らかに改善しています。これが示すことは、心不全治療の確立につれて心不全の予後は改善してきており、正しい適切な標準治療を行うことが重要ということです。 You Tubeにて在宅診療の知識…

高齢者のせん妄対策と適切な薬物使用

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

心不全を科学する12

心不全の身体所見として内頚静脈の怒張とは?右内頚静脈は右房と連続しており、静脈弁がないので右房圧と直結します。右心房から胸骨柄まで5cmです。凡そ頸部内頚静脈は胸骨柄から5cm程度で視認できますので、内頚静脈の怒張=中心静脈圧10cmH2Oと評価でき…

腰痛と高齢者のリスク:脊椎圧迫骨折について

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

心不全を科学する11

心不全に関して、在宅診療でチェックすべき項目は下記のように10項目が循環器学会から示されています。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q ,"entityRanges":[{"offset":0,"len…

感染を防ぎ、褥創を治す方法#デブリドマン

褥創が感染しているかどうかは、褥創周囲に感染の4徴候(熱感、発赤、腫脹、疼痛)があるかどうかで判断します。 感染例↓ 感染していた場合、大原則として、褥創内に消毒薬(イソジンシュガー、カデックス軟膏、ユーパスタなど)を入れてはいけません! そ…

心不全を科学する10

肺うっ血とは左房圧が高いと言い換えることができます。 Stepwise Approachに左房圧の高さを考えると 左室が血液をだしにくい、容量が多い、左房の問題(afなど) 下記のように、問題がどこにあるかで治療方針を検討する必要があります。 You Tubeにて在宅診療…

褥創治療の新たなアプローチ:体圧管理と湿潤開放療法

褥創にガーゼを当てるということはよく行われていますが、それが最悪の処置だと考える理由について書いていきたいと思います。 褥創治療においては、褥創はなぜできるのか?傷が治るとはどういうことなのか?を考えなければなりません。 ①褥創はなぜできるの…

心不全を科学する9

心不全=1回拍出量が低下する状況として肺循環に問題があるのはどういう状況でしょうか。 右室は後負荷依存性高く、左房圧が高い場合・肺高血圧が高い場合が挙げられます。 また拡張型心筋症や、三尖弁閉鎖不全にて右房と右室に血液が行きつ戻りつを繰り返…

粉瘤感染の治療報告:在宅患者さんからの感謝

在宅患者さんでの症例で背部粉瘤感染の症例を報告します。 以前からの粉瘤ありましたが、疼痛あり熱感も生じており、当初は内服抗生剤で経過診てましたが、症状は悪化傾向でした。 発赤部にエコーを当てると、皮下に低エコー域を認め、深さは約2cm程度でした…

心不全を科学する8

心不全とは心臓のポンプ機能の低下であり=1回拍出量の低下でもあります。 これを体循環である左房-左室-末梢循環における障害を考えると 左室-末梢組織への抵抗として大動脈弁狭窄症や末梢血管抵抗↑の場合が挙げられます。 また左室自体の問題として虚血な…