在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

認知症を科学する

しかし、認知症に伴う精神症状に対しどう対応するかで、自宅で診つづけることができるか否か決まります。そして幻覚妄想、気分の落ち込みなどは①お酒②薬③身体疾患④ストレス⑤精神疾患などに原因が見つけられないか、まずは検討する必要があります。これにより…

人生の最期を決める時の重要なこと~食べることについて①

高度成長期にスーパーという概念を日本に普及させたダイエーの創立者である中内功さんは、強烈な戦時体験をしています。南の島で補給が絶たれた戦況で銃弾でなく、飢餓や病に仲間が倒れていく中で、命を繋ぎとめた思いとして「日本に帰りすき焼きを食べたい…

認知症を科学する

認知症治療薬に対する効果判定に関してRCT(ランダム化比較試験という仮説立証検定で最も信頼できる試験と考えて下さい)10本をまとめて検証した結果は、認知症治療薬ADAS-cogという点数を2.37改善するのみという結果でした。臨床的に意味ある改善は4点とさ…

在宅患者さんにおける痛みの治療(内服が難しくなってきたら)

患者さんの活気がなくなり、経口も難しくなってきた場合痛みをとる治療の一つとして麻薬の貼り薬があります。フェントステープはフェンタニル(麻薬)の貼付薬であり、在宅医療の現場では非常に重宝します。特に癌患者さんで、内服できなくなったが痛みが出…

認知症を科学する

レビー小体型認知症にドネペジルの効果は科学的には証明されていません。 但し、他治療の無い現状において上記のアルゴリズムで治療するのが適切と私は考えます。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

人の見た目は大事

人は見た目が〇〇割という、本が以前売れていたように記憶しています。調べれば、すぐ分かるのですが敢えて調べません。見た目で騙されないように、常々思っていたりもするので。そして見た目が老けていると実際の寿命も短いようです。これは、経験則からも…

認知症を科学する

前回よりドネペジルがレビー小体型認知症に無効であるとした試験から一つ有用な知見は示されました。 ドネペジルの抗コリン作用はパーキンソン病の症状を悪化させる懸念があったのですが、これは無いことが証明されたことは有益な知見となりました。在宅医療…

薬の飲みすぎに関する問題

薬の飲みすぎをポリファーマシーと呼びます。カタカナの方が何か学術的な印象もあるので、ポリファーマシーとします。私自身、勤務医時代におけるポリファーマシーの原因は、処方する側7割、処方される側3割と考えてました。 「先生、歩くと少しフラフラす…

認知症を科学する

上記資料はレビー小体型認知症にドネペジルが有効であるかのように見える。 しかし、この試験はそもそも仮説に対する判断基準が明示された試験ではない。つまり、統計有意が示されていない試験である。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-za…

慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者さんの意識障害

慢性閉塞性肺疾患 (以下COPD)の患者さんが意識障害を生じている場合は、かなり緊急度の高い病態です。ただし、こうした患者さんは恒常的に血中二酸化炭素(CO2)の濃度高く酸素投与に注意が必要とされています。その理由は正常の人は血中CO2濃度の上昇によって…

認知症を科学する

レビー小体型認知症、アルツハイマー病もコリン作動性神経の障害であることより、レビー小体型認知症にドネペジルは有効であるという仮説は成り立ちます。 これに対する試験はレビー小体型認知症≒認知症を伴うパーキンソン病という病態に置き換え試験行いま…

高齢者の誤嚥性肺炎

在宅医療における高齢者において肺炎は非常に起こりやすい感染症の一つです。人は無意識に嚥下をしてますが、これは何も食事をしているときばかりでなく、寝ている時も唾液などを無意識に嚥下しています。嚥下をするという機能も脳からの命令で行われている…

認知症を科学する

上記の資料は、一般の方には少し分かりづらいかもしれません。 かなりざっくり説明するとドネペジルの有用性を科学的に立証するために5回の試験はうまくいかず、6回目で結果をだせました。しかし、その結果とはドネペジル5mgを半年間内服させた患者は、そ…

プレタールという薬

プレタールという薬は本邦から開発された抗血小板剤であり、この薬の第三相試験(その薬が本当に効果あるか、悪いことが起きないか実際の臨床で使用する試験です)において私もデータ処理などで関わった経験あり思い入れある薬です。その効果は、シロスタゾー…

認知症を科学する

まずドネペジルにおいて2mgの有効性が否定された 過ぎに3mg,5mgにおいても有効性評価行い、試験としてうまくいかず、症状の重い症例のみにて134試験により有効性の可能性が認められたものである。 これらが示すのは、認知症治療薬として上梓されたドネペジル…

在宅診療における敗血診断

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

認知症を科学する

さて、ここから本題に入らせて下さい。認知症の治療薬が科学的に効果あるとするためには ①臨床的に意味ある効果ある×②認知症の中核症状に効果ある という2つの要件を満たすことが必要です。 そして上記資料が示すように、試験は全くうまくいかず161試験にて…

一般の方向けの認知症勉強会を4.28開催させて頂きます

2022.4より 訪問診療専従クリニックを開設させて頂きました内田賢一と申します。 手術以外の脳外科医としての臨床は、高齢の患者様の慢性期疾患を診る日々でした。 認知症、心不全、糖尿病、排尿障害、肺炎、褥瘡等々 これらの時間は振り返ると在宅診療の基…

患者さんが不穏・せん妄になったら

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

認知症を科学する

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"8.63.7"}"> ,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"8.63.7"}">認知症の早期における診断は極めて難しく、不要な薬物療法は厳に控えるべきと考えます。とりわけレビー小体型認知症…

慢性心不全の終末期医療

以前の経験した患者さんです。 90代の男性で5年前に心筋梗塞を患いカテーテルの治療受けましたが、左心機能不全にて治療抵抗性の慢性心不全でしたが、ご自宅で生活させていました。その後発熱に伴う意識障害、体動困難にて入院となり高齢の奥様に説明し急変…

認知症を科学する

上記資料は本邦で行われた認知症専門医による患者数及び疾患頻度に関する調査です。 このデータが示すのは、あまりに疾患に地域偏在性があるということです。 しかし同じ日本人において、これほど差がるとは考えられず、認知症専門医においても如何に正確な…

在宅医療と抑制

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

認知症を科学する

アルツハイマー病は非常に有名な疾患ですが、その診断は極めて不確実である認識が必要です。 そして軽度の段階での診断は難しく、中等度の段階で中核症状が全面に現れ、非常に進行した病期では周辺症状は分からなくなるくらい、病状は深刻となります。 在宅…

癌でない病気の終末期

終末期医療というととても寂しい響きでですが、在宅医療においては避けて通れない医療です。例えばがん患者さんが、抗がん剤治療などの効果が望めず、それ以上の無理な治療をしないことなどは終末期医療として分かりやすいかと思います。 但し、非がん患者さ…

認知症を科学する

アルツハイマー病の経過は、上記資料の様な経過をたどります。 まず、中核症状と共に周辺症状が現れ、身体症状が付随してきます。 重要なことは、中核症状は全例で生じますが周辺症状は個人差があることです。 そして何より、初期においては中核症状が全面に…

高齢者が夜間不穏になった場合

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

認知症を科学する

認知症として有名な疾患であるアルツハイマー病、レビー小体型認知症は上記資料が示すような異常タンパクの蓄積に依るものです。そして、非常に重要なことはこでらの疾患が重複混在するということです。分かりやすく言えば、加齢に伴い心不全、糖尿病などを…

高齢者の腰痛に関する注意点

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

認知症を科学する

認知症診断の確定診断は病理診断にて行われます。通常、認知症診断に神経細胞の生検は行われない為、完全な確定診断は亡くなった後に病理解剖にて行う必要があります。 現在においては核医学検査などの進歩にて、相当程度まで診断は可能となりましたが診断精…