「偽痛風(ぎつうふう)」はピロリン酸カルシウムが関節内に沈着する結晶性関節炎です。
高齢者に多い疾患(発症年齢はほとんどが60歳以上)なので、高齢者の発熱時には、鑑別に挙げておく必要があります。
病院勤務医時代に、入院患者の偽痛風の院内紹介がよくありましたが、それもそのはずで、偽痛風を起こしやすいのは体に侵襲がかかったとき(外傷・手術・肺炎後など)だからです。
偽痛風は単関節炎(一つの関節に起こる炎症)であることが多いですが、必ず単関節炎というわけでもなく、2か所や3か所以上の関節炎となることもあります。
偽痛風を起こしやすい関節は、膝関節が最も多く、次いで手関節、足関節、肩関節、肘関節と続きます。
診察では、関節に熱感や腫脹があるかどうかをみます。関節は左右対称にあるので、左右を比べてみれば、熱感や腫脹があるかどうかが分かります。さらに、圧痛や他動時痛(関節を動かして痛みがでる)があるかをみます。
39℃台の熱が出たり、CRPが20~30くらいまで上がることもあります。診断のポイントは、発熱している割には、比較的全身状態が良いことです。
問診としては、偽痛風は再発が多いため、過去に発熱がでて関節が腫れて痛がったことがあったかどうかを、本人や家族から聴取します。過去のカルテからも、そのような病歴があったかどうかを確認します。
確定診断は、関節穿刺をして、関節液を鏡検に提出し、ピロリン酸カルシウムを検出することによります。化膿性関節炎の否定のために、細菌培養検査も提出するとなお良いです。
偽痛風時の関節液は通常、やや混濁した黄色い性状をしています。
腫れた関節の関節液を抜くことは、診断と治療のために良いことですが、関節穿刺にも少なからず感染の合併症もあります(関節穿刺による感染は1万回に4例)。
治療は、NSAIDsを1週間処方すれば治ります。関節内にステロイドを注射すれば、劇的に良くなりますが、化膿性関節炎でないことが自信をもって言えるか、将来人工関節の手術をしないと言えるか(ステロイド注射が術後感染のリスクになる)でなければなりません。