在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2021-01-01から1年間の記事一覧

認知症予防の妙薬その1

アルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」のニュースが駆け巡りましたが、治療効果、治療適応、費用などまだまだ夢の薬でないというのが実感です。自身、年齢と認知機能のギャップのある方には、個人的によく3つの質問を20年近くしています。それは職…

高齢者の風邪

一般的に風邪にはPL顆粒(総合感冒薬)がよく処方されると思いますが、この薬は高齢者には特に危険です。PL顆粒1g(1回分)にはプロメタジンメチレンジサリチル酸塩という副作用が多いため今ではあまり使われなくなった第一世代の抗ヒスタミン薬が13.5mg入…

高齢者の肺炎

訪問診療を受けている患者さんは、寝たきり状態であったり、認知症、脳梗塞の既往があったりで、誤嚥性肺炎を起こしやすい方が多いです。実際、高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎であるといわれています。誤嚥性肺炎を予防するためにできることを以下に書い…

これから日本は多死社会迎えます

恐らく今の日本で医療者も人々も死に向き合いきれていない気がします。ごく近い未来というか、もうすでに『多死社会』を日本は迎えます。皆が亡くなるまで治すだけの最期でよいのか?という命題が突きつけられています。 最期まで治療行うということは、点滴…

⑲ 腰椎圧迫骨折について

腰椎圧迫骨折は、高齢の女性で非常によく見られる病状です。最近では、芸能人で松本伊代さんが圧迫骨折を受傷したと報道がありました。女性の身体は、40前後から大きく変化していくので、圧迫骨折は決して高齢者に限られた病気でないことを思いしらされまし…

ヒートショック現象

日本家屋は非常に寒い。木造家屋が多いためお風呂やトイレなど肌が露出する場所での気温が非常に低い場合が多い。元野球監督であり評論家である野村克也さんがお風呂場で亡くなっているのが見つかったなども記憶に新しいところです。推定でヒートショックで…

医療におけるできることと、すべきこと

,"data":{}},{"key":"ap2jo","text":"『医師にできること』と『医師がすべきこと』は異なり、医療の出発点は医師の考えでなく患者や家族のニーズということ注意しながら在宅医療は行われるべきと私は考えます。患者さんとその家族の満足を一緒に考えていく姿…

高齢者の皮膚のかゆみ~老人性掻痒症

高齢者の皮膚のかゆみはしばしば遭遇する問題です。とりわけ寒い時期なると症状が悪化します。年をとると、何故こうした症状が生じるのでしょうか。理由として高齢者は皮脂が少なく、容易に乾燥します。こうした症状に関しての ポイントは皮脂を落とさないこ…

⑨ 人生の最期が看取り難民とならないために

現在の日本における「人生の最期」の迎える場所として、実際には病院で臨終を迎える事例が80%、自宅で迎えるケースは12~3%という割合です。 信頼できる統計では1951年は在宅死が82.5%、病院死が17.5%です。 もちろん、現在の死因として癌など…

誤嚥性肺炎

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"8p0ta","text":"意識状態が悪くなると抗生物質の投与と絶飲食となります。点滴をされるとこれを自己抜去しないよう身体拘束される場合が多いです。","type":"unstyled","depth":0,"inlineStyleRanges":,"entityRanges":…

胃薬の功罪

高齢の患者さんはポリファーマシーと呼ばれ沢山の薬を飲んでます。日本人は病院が好きであり、薬が好きです。そして患者さんが飲んでいる薬の代表として胃薬があります。その一つプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸の分泌を抑える胃薬です。この薬のおかげで、…

死に向き合うために

死を目前にして知りたくないという患者さんも少なからずいるかもしれません。 死を目前にした場合、徐々に自分の意思決定ができなくなります。 こうした時に最後の時をどこで迎えるか、その様な最後がよいか(長く生きることを優先するか、とにかく楽な最後が…

治す医療から支える医療へ

脳外科医の仕事は、病院でしか行えない『治す医療』最たる領域だと考えます。 そこには、患者さんの価値観や生き方を反映させることは難しい場合多いのです。 一方の在宅医療では治せない病気、加齢に伴う心身衰弱で介護や医療が必要となる『支える医療』だ…

これからの医療の在り方~脳外科医から在宅医療を志して (発展途上の在宅医療奮闘記)

これからの医療の在り方~脳外科医から在宅医療を志して (発展途上の在宅医療奮闘記) 私の簡単な自己紹介 脳外科医を志して早20年、本当に沢山の手術をさせて頂きました。 脳外科医の世界、とりわけ手術の世界は本当に自身を魅了する世界でした(過去形です)…

2021.9-11依頼された講演について

色々な仕事の依頼の中で講演等を依頼されると、その場所の空気感を感じる為に ランニングを必ず行います。 移動の車中などで、ランニングコースを下調べして、あとはグーグルマップ様にお任せする感じですが。 そして、急性期脳卒中から、そろそろ次の自分の…

2021.7-8の依頼された講演に関して

コロナ禍の影響にてリアルの学会、セミナーがWebに移行しております。 意外とセミナーなどに参加すると1日を費やすことになるのですが、Webですと休みの日に家族のサービスの合間に発表したりも可能であり、聴講も処々録画して見ること可能であり。これも新…

腰痛診断の問題点

https://brainkenichi.com/腰痛治療は極めて難しく、通常の医療においては殆ど対応してない場合が殆どです。その理由として画像評価できない腰痛が殆どであり、非特異的腰痛として痛み止めなど処方することが殆どです。私見ですがハイドロリリース(筋膜リリ…

本年上半期の依頼講演について

本年も上半期が過ぎようとしてますが、依頼講演についてアップいたします。 概算でスライドを500-1000枚作製した概算です。インプットよりアウトプット重視、記憶より思考重視で今後も邁進してまいります。 2021.1.21 船橋脳卒中講演会(エーザイ共催) 1.26 R…

循環器学会総会での講演が公開されました

email.mail-bayer.com https://l.facebook.com/l.php?u=https%3A%2F%2Fbrainkenichi.com%2F%3Ffbclid%3DIwAR180a2fXFqGrWmd3G3YOrPAHKH8xtZyDhclEyEAEh9KYLrUma6mR5R87JQ&h=AT0Q3JpOnxhFwF8817B6FQypdWYKB4fG3jJIO58hiXuLzHAXWN9YIYSbJ6rcNAiOlgy2uCjl99ebln…

椎間板性の腰痛について

#筋膜リリース#ハイドロリリース#腰痛 椎間板の突出にて腰痛は基本的に生じないないが、時に椎間板変性に伴い腰痛を生じる機序も存在します。こうした場合画像評価にて特徴的所見としてModic分類が存在します。これは、椎体上下の軟骨終板周囲の骨髄変性に焦…

そもそも筋膜の役割とは

筋膜の構造に関して https://brainkenichi.com/ 筋膜は解剖生理などにおいて長らく無視されてきた存在でした。しかし筋の出力は筋のみで行われないことを図は示しています。上腕の筋出力は筋膜の連続性と力伝達システムSuperficial back arm lineにより行わ…

腰痛に関する考察~多裂筋の委縮の観点から

腰痛に関する考察 腰痛に関する考察 https://brainkenichi.com/ 腰痛患者さんのMRIを撮影すると多裂筋の委縮が著明です。 報告では腰痛患者さんの80%に多裂筋委縮が生じているとされています。 腰痛と多裂筋の委縮を明快に説明した、正書、論文は残念ながら…

腰痛に代表される非特異的慢性痛に関して

椎間関節による疼痛 https://brainkenichi.com/ 腰痛に代表される非特異的慢性痛に関して、ハイドロリリース(筋膜リリース)などの 治療は万能ではないと、私は考えます。 少し前までは、胃潰瘍は手術にて治療されていました。 しかし、H2blocker,PPIなど革命…

コラーゲン線維の基本構造

ハイドロリリースによるコラーゲン線維の変化 細胞外マトリックスの構造 https://brainkenichi.com/ 筋膜リリース(ハイドロリリース)とは、細胞成分である筋膜の基質そのものに作用し、その構成を変化させることも 分かってきました。 図ではコラーゲンの電…

徒手により筋膜リリースの細胞レベルの観察

徒手による筋膜構造変化に対するミクロ観察 https://brainkenichi.com/ 徒手による筋膜リリースでは細胞レベルで何が起こっているのでしょうか。 細胞レベルでの実験系として、細胞へ反復運動負荷(overuse状態にして)、圧迫負荷をかける(筋膜ないしハイドロ…

筋膜の滑走の構造

マイクロ下での筋膜 筋膜は滑走する 筋膜は何故滑走できるのか https://brainkenichi.com/ 私達は理論物理学者ではないので、見えない世界を理論で構築する必要はありません。また、体表面上から見えない筋膜を治療することにもどかしさ感じているのではない…

ハイドロリリースの細胞レベルの効果

https://brainkenichi.com/ 線維芽細胞の働きは多彩です 建築業者の様に基質(細胞外マトリックス)、コラーゲン線維の多くを産生してます 管理者としてサイトカイン、インターロイキン産生します *サイトカインは細胞間の伝達物質 *インターロイキンはサイ…

筋膜リリース(ハイドロリリース)の細胞レベルの話

https://brainkenichi.com/ 筋膜リリース(ハイドロリリース)などの機械的刺激は、どのように 細胞へ働きかけるかについて 前回の説明通り、コラーゲン線維からのインテグリンへの 機械的刺激は細胞内への張力生む これを応力波伝搬と呼びます。 この張力(応…

ハイドロリリース(筋膜リリース)の細胞レベルのはなし

ハイドロリリースにおける細胞レベルのはなし 筋膜リリース(ハイドロリリース)、鍼灸等々一般的に筋膜へのアプローチは、単純化するならば機械的刺激です。何かを静脈内へ注入する訳ではありません(いわゆる点滴ですね)、また物理的構築を変化させる訳でもあ…

筋膜の重積と滑走性

筋膜の滑走性 https://brainkenichi.com/ 筋膜の重積がエコーにより評価でき、疼痛の可視化として有用であるということは直感的に理解できます。しかし、重積=疼痛とはどの様な機序であるのでしょう?ここで一つ示唆的な報告としてエコーエラストグラフィー…