在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

がん緩和ケア医療を科学する31

自身は医師を志すきっかけが東洋医学であり、漢方に対する思い入れと畏敬は未だにあります。そしてお世話になった先生も元々脳外科医であり、医師になった後も御縁のある先生でした。 現在でも様々な場面で漢方を用いますが、時に精神症状への漢方処方は有効…

毎朝の消毒とガーゼはもう古い!高齢者の褥瘡治療に「湿潤療法」が革命を起こす! #在宅医療 #褥瘡

高齢者の在宅医療において褥瘡というのは大きな問題となります。自身で身体の向きを変えられない+栄養状態の不良により皮膚が腐る(医学的には少し不適切ですが、一般の方の理解の為にあえて、こう表現します)。こうした褥瘡含めた傷に対して以前は消毒とガ…

がん緩和ケア医療を科学する30

患者さんの御家族から「先生、あとどれくらですか?」という問い度々頂きます。 正確な予測は困難ですが、月単位、週単位、日単位などの返答をする場合が多いです。 終末期の余命について、少しだけ科学的予測も可能です。 生命予後の予測は、患者の意向を反…

高齢者の最期、80%は病院で…在宅死はわずか3%? #在宅医療 #人生の最期

現在の日本における「人生の最期」の迎える場所として、実際には病院で臨終を迎える事例が80%、自宅で迎えるケースは12~3%という割合です。信頼できる統計では1951年は在宅死が82.5%、病院死が17.5%です。もちろん、現在の死因として癌などの…

がん緩和ケア医療を科学する29

がんの皮膚浸潤に伴う悪臭について(乳がん,頭頚部がん,皮膚がん) 原因は 腫瘍の自壊+皮膚常在菌からの揮発物質(アミン、カタベイン、イソ吉草酸、酪酸) ➤悪臭を取るためには、腫瘍の自壊部分を取り除き、洗浄+原因菌を除去していく必要があります。 処置方…

CO2ナルコーシスの原因とは?意識障害の恐怖 #CO2ナルコーシス #意識障害

慢性閉塞性肺疾患 (以下COPD)の患者さんが意識障害を生じている場合は、かなり緊急度の高い病態です。ただし、こうした患者さんは恒常的に血中二酸化炭素(CO2)の濃度高く酸素投与に注意が必要とされています。その理由は正常の人は血中CO2濃度の上昇によって…

がん緩和ケア医療を科学する28

癌患者さんに限らず在宅医療におけ腹部膨満感に関してイレウス、サブイレウスを見逃さないことが重要です。 臨床所見としては腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金属音が重要です。 治療選択としては ステロイド:イレウスの腫瘍性閉塞に対するス…

高齢者の誤嚥性肺炎を予防する方法とは? #高齢者 #誤嚥性肺炎 #予防

在宅医療における高齢者において肺炎は非常に起こりやすい感染症の一つです。人は無意識に嚥下をしてますが、これは何も食事をしているときばかりでなく、寝ている時も唾液などを無意識に嚥下しています。嚥下をするという機能も脳からの命令で行われている…

がん緩和ケア医療を科学する27

消化器系に癌の在宅療養において、時に大きく問題となるのが 腹部膨満感のです。 そしてそ原因は腹水だけではなく対処法が様々です。 主な原因だけでも下記のようなものがあり イレウス・サブイレウス 便秘 腫瘤の圧迫 尿閉 などが挙げられます。 まず腹部膨…

乾燥剤として作用する皮膚ケア製品「ヒルドイド」の弊害

ヒルドイド(ヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドソフトクリーム)が皮膚に対し乾燥剤として作用していることがよく分かる症例を提示したいと思います。 90代男性。両足関節前面に非常に強い乾燥があり、痒みもあった患者さんです。皮脂欠乏性湿疹の診断で、ヒ…

がん緩和ケア医療を科学する26

せん妄の薬 Up Date 在宅医療においてせん妄の治療は、非常に難しい場合が多いです。 抗精神病薬を軸に決めては睡眠薬(BNZ)併用、軽症は抗うつ薬併用の3点セットで治療します ・死亡直前の終末期せん妄は90%の患者に生じ、家人・スタッフの強いストレスとな…

在宅医療で効果的な傷洗浄法!生理食塩水の利点とは?#在宅医療 #傷の治療

当クリニックでは、褥創や傷を洗浄する際には水道水で良いと考えてますが、より痛みが生じないように、生理食塩水で洗うことを推奨しています。 生理食塩水は血漿浸透圧と同等な浸透圧を持ち、組織に対する刺激が少ないためです。 病院でよく行われているの…

がん緩和ケア医療を科学する25

癌疼痛のある患者にステロイド投与は推奨されるか? という問いに上記のような効果が期待できます。 自身は糖尿病、感染などの使いにくい理由がない限り、全例にデカドロン4mg,8mgを投与します。 ガンという身体の中で高い炎症反応伴う高サイトカイン血症の…

突然の全身の痛みに!リウマチ性多発筋痛症の原因とは? #リウマチ性多発筋痛症

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は、急性発症の頸部、肩、臀部などの著しい痛みとこわばりを特徴とします。私自身、脳外科医としての勤務医時代には脊椎の手術と外来も行っていたのでこうした症状の患者を沢山診ておりました。本疾患は…

がん緩和ケア医療を科学する24

鎮痛補助薬のポイントは 私見ですが ・膵癌の腹腔神経叢浸潤、脊髄神経-末梢神経圧迫に鎮痛補助薬は有効 ・眠気:ミロガバリン<<プレガバリン などが重要と考えます。 You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より https://www.youtube.com/channe…

スマホで操作可能!「クーデックエイミー」で在宅医療が進化する! #在宅医療 #クーデックエイミー

在宅医療において癌患者さん、慢性心不全の患者さんなどで麻薬や鎮静の薬を精密に投与する必要が生じます。こうした患者への投薬行う場合、今までは機器をレンタルして投薬を行っていましたが、在宅でも使用できる機器が登場しました。 名称はクーデックエイ…

がん緩和ケア医療を科学する23

癌疼痛のある患者に対して オピオイド+抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬、ケタミンは推奨されるか オピオイドの増量にて充分な鎮痛が得られない場合が時にあります。自身は骨肉腫などの筋骨格筋系の悪性腫瘍にて疼痛管理に苦慮した経験が多く、そうした場合ケ…

完全網羅!褥瘡治療に必須のプチプチ除圧材 #黒色壊死 #在宅診療

アルツハイマー型認知症の患者さんで誤嚥性肺炎起こし、ベッド上での生活が長くなり踵部に黒色壊死を生じてしまいました。 まず、黒色壊死部は肉芽形成を阻害する蓋のようになってしまいますので、ゲーベンにて融解させ 踵部の黒色壊死をゲーベンにて処置し…

がん緩和ケア医療を科学する22

呼吸困難の時Up Date! 抗不安薬・オピオイド・ステロイドの3点セット!(内服困難時はミダゾラム注も) とりわけ在宅診療において肺がん、COPDの末期などでは鎮静が重要です。 自身はミダゾラムによる鎮静が速やかに行えることがとても重要と考えており、薬液…

抗血小板剤の効果と副作用を徹底解説!プレタール®の魅力とは? #プレタール #薬剤

,"entityRanges":,"data":{}}],"entityMap":{},"VERSION":"9.14.2"}">プレタールという薬は本邦から開発された抗血小板剤であり、この薬の第三相試験(その薬が本当に効果あるか、悪いことが起きないか実際の臨床で使用する試験です)において私もデータ処理な…

がん緩和ケア医療を科学する21

緩和医療で欠かせない持続皮下注射(CSI: Continuous Subcutaneous Injection)ですが、持続静脈注射と同等の効果で、かつ血管確保の必要がない簡便な投与経路であることが重要です。 注意すべきは下記の2点があります。 #ブドウ糖は皮下感染リスク高まるので…

イレウスの腹痛から救出!在宅医療で腹水の診断と治療法を紹介 #イレウス #腹痛 #在宅医療

消化器がんに限らず、婦人科、泌尿器科がんなど幅広く腹水貯留は生じます ただしがん患者さん腹部膨満感の原因は腹水だけでないことを常に念頭におく必要があります。 その一つがイレウス、サブイレウスであり腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金…

がん緩和ケア医療を科学する20

高度腎機能障害のある患者において、どのオピオイドを使用すればよいか?は時に生じる問題です。 高度腎機能障害のある患者(eGFR30未満)の癌疼痛患者においてはフェンタニル、ブプレノルフィンの投与が推奨されます。注意して投与可能は、トラマドール、オキ…

敗血症の診断にqSOFAを活用する在宅医療

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

がん緩和ケア医療を科学する19

ROOにはアブストラル舌下錠,イーフェンバッカル錠があります。舌下と頬部に置く違いありますが経粘膜から投与します。 幾つかの注意として ①原則経口モルヒネ換算のベースをバッカル錠は30mg/日以上、舌下錠は60mg/日以上使用 ②バッカル錠は50 or 100μg以上…

高齢者の転倒割合30%!失神が多い理由とは?機能低下との関係を解説 #転倒 #高齢者 #失神

高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。 高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧…

がん緩和ケア医療を科学する18

癌突出痛のある患者に対してどのオピオイドの投与が推奨されるかに関しては、 ・疼痛の突出痛のある患者に対して速放性製剤(経口ヒドロモルフォン・オキシコドン・モルヒネ、モルヒネ坐剤、オピオイド注射剤ボーラス)によるレスキューの投薬を強く推奨されま…