在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

ご自宅での輸血、実は可能です

~在宅医療における輸血の流れと安全対策~

がんや血液疾患、慢性疾患の進行により、定期的な輸血を必要とする患者さんは少なくありません。しかし、高齢や体調の問題で「病院に通うのが難しい」という方もいらっしゃいます。

当クリニックでは、こうした患者さんに対し「ご自宅での輸血」を行っています。

在宅での輸血、どうやって行うの?

輸血は「広い意味での臓器移植」とも言われるほど慎重な対応が必要です。特に“異型輸血(血液型の不一致など)”は絶対に避けなければなりません。そのため、医療機関訪問看護の連携による厳重な確認体制のもとで実施しています。

【在宅輸血の大まかな流れ】

〈クリニックで行うこと〉

  1. 血液製剤の発注

  2. 輸血用血液の受け取り・管理

  3. 血液の割り付けと交差適合試験(クロスマッチ)

  4. 試験結果の確認・準備物の整理

〈ご自宅で行うこと〉

  1. 医師による最終確認とバイタル測定

  2. 血管確保、輸血開始

  3. 開始後のバイタルチェック(約60分間)

  4. 訪問看護師への引き継ぎ

  5. 輸血終了後の抜針・処置

※血小板輸血時には、アレルギー予防のため抗ヒスタミン薬やステロイドの事前投与も行います。


輸血の3日前から始まる準備

安全な輸血を行うために、3日前から下記の準備を進めていきます。

日数 内容
輸血3日前 往診で採血(血算・クロスマッチ・不規則抗体)→ 輸血のオーダー、訪問看護とスケジュール調整
輸血2日前 輸血用血液が到着(冷所保存)、クロスマッチ提出
輸血当日 医師と看護師が血液を搬送・照合、輸血実施・バイタル管理、訪看に交代・終了確認

安全対策も万全に

在宅での輸血には「ショックやアレルギー反応への即時対応」が不可欠です。当クリニックでは、必要な薬剤・輸液・酸素・吸引など、緊急対応用の資器材を常時携行しています。

また、腹水や胸水の排液時と同様、確保ルートの選定・消毒・固定法などにも細心の注意を払っています。


次回は、実際の在宅輸血の様子を動画でご紹介する予定です。
在宅医療の現場に関心のある方は、ぜひYouTubeチャンネルもご覧ください。

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🔖 #在宅診療での輸血 #安全対策 #ショック対応
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創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する22~皮膚を守る!スキンケアと失禁対策の基本

画像が生成されました褥瘡(じょくそう)や皮膚トラブルを予防するうえで大切なのは、「皮膚のバリア機能」を保つことです。今回は、皮膚被膜剤の役割と失禁時のケアについて分かりやすくご紹介します。


◆ 皮膚被膜剤で“守る”ケアを

創部(傷)やその周囲の皮膚は、摩擦や滲出液によってダメージを受けやすくなっています。そこで活躍するのが「皮膚被膜剤」です。

皮膚被膜剤は、角質層の表面に呼吸を妨げない“薄いベール”を作り、物理的刺激から皮膚を守ります。
撥水作用があるため、滲出液や排泄物による“ふやけ(浸軟)”の予防にも有効です。

また、速乾性の被膜剤を使えば、その上からドレッシング材やテープを貼ることができ、テープを剥がすときの刺激も軽減できます。
さらに、「低刺激テープ」や「スキンケア対応フィルム材」の使用も、角質の損傷を防ぐ大切な工夫です。


◆ 殿部(おしりまわり)は特に要注意!

特に殿部の褥瘡は、排泄物の影響を受けやすい部位。創部が便や尿にさらされないよう、皮膚の清潔保持と保護ケアが重要です。


◆ 尿失禁へのスキンケア対策

  1. 適切なおむつ・パッドの選択
     吸収力の高い高分子ポリマー入りのものを選び、こまめに交換することが基本です。

  2. “重ね使い”はNG!
     交換回数を減らそうとおむつを何枚も重ねると、かえって尿漏れの原因になったり、厚みで骨突出部の圧が高まり、褥瘡リスクを高めます。

👉 基本は2枚使い
 例:テープタイプのおむつ+パッドタイプ

  1. 夜間や交換が難しいときには
     大容量の吸収パッドの活用が効果的です。

  2. 尿の誘導に「クリーンコットン」
     例えば「ニュースキンクリーンコットン」(ベーテル・プラス)などの失禁用ポリエステル繊維綿を陰部に添えることで、尿がスムーズにおむつへ吸収され、皮膚の湿潤を防ぐサポートになります。



まとめ

皮膚を守るケアの基本は、刺激から守り、湿気をためないこと
被膜剤や適切なおむつ選び、ちょっとした工夫で、大切な皮膚を守ることができます。

毎日のケアに、ぜひ取り入れてみてください。

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パーキンソン病を科学する35~パーキンソン病のMRI所見:見逃せない「パーキンソン+症候群」とは?

典型的なパーキンソン病では、頭部MRIで明らかな異常は見られないことが一般的です。しかし、「パーキンソン病に似た別の病気(いわゆるパーキンソン+症候群)」では、MRIで特徴的な所見が確認される場合があります。

たとえば、「進行性核上性麻痺(PSP)」では、脳幹部の萎縮によって“ハミングバードサイン(ハチドリ様徴候)”と呼ばれる特徴的な形状がMRI上に現れることがあります。このサインは、脳の中脳部が鳥のくちばしのように細く見えるために名付けられたものです。

📌このような画像診断のポイントを理解しておくことで、より正確な診断と治療方針の決定につながります。


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高齢者の「いつもと違う」は、危険のサインかもしれません

高齢者の救急対応が難しい理由の一つに、「症状が非典型的である」という点があります。
さらに、認知症などの影響でうまく症状を伝えられないことも多く、病気のサインを見逃してしまいがちです。

たとえば、高齢者の肺炎では約1/3のケースで、咳や発熱といった典型的な症状が見られないとされています。
「熱がないから」「咳をしていないから」と安心するのは危険です。

今回は、ご高齢の方を介護・看護する際に、「どんな変化に注意すべきか」をご紹介します。


注意すべき高齢者の変化

● 「なんとなく様子がおかしい」

軽度の意識障害の可能性があります。
高齢者の感染症は、このような微妙な変化から始まることが少なくありません。

● 「急にぼけた」

ゆっくり進行するはずの認知症と違い、急な認知機能の低下は「せん妄」の可能性があります。
せん妄は夜間や環境の変化で起こることが多いですが、日中・環境変化なしに起きる場合は、感染症や心血管疾患、低血糖などの内科的な問題が隠れていることがあります

● 「急に立てない、歩けない」

加齢による衰えは通常ゆっくり進みます。
急なADLの低下(立てない・歩けない)は、感染症心不全、脳血管障害などの可能性を疑うべきです

● 「あくびが多い」

あくびは、脳への酸素供給不足のサインであることがあります。循環不全の前兆かもしれません。

● 「不安を強く訴える」「多弁になっている」

これも脳の血流低下の兆候かもしれません。いつもと違う言動には注意が必要です。


見逃さずに対処するために

こうした「なんとなく変だな」という小さな変化に気づくことが、早期対応・重症化予防につながります。
逆に、こうしたサインを見逃すと、短時間で急変してしまうこともあります

まずは、バイタルサインの確認を基本にしましょう。
特に「呼吸数」は最も重要な指標です。
呼吸数が20回/分以下であれば、ひとまず落ち着いて見守れる状態です。


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パーキンソン病を科学する34~パーキンソン病の診断に頭部MRIは必要?―その役割と限界

パーキンソン病が疑われた際に、多くの方が「MRIでわかるのか?」と疑問に思われます。今回は、パーキンソン病における頭部MRIの位置づけについて解説します。

🧠頭部MRIの基本的な役割

実は、典型的なパーキンソン病では頭部MRIに明らかな異常はほとんど見られません。それでもMRIを行う目的は、「パーキンソン病に似た別の病気(非定型パーキンソニズム)」を除外するためです。

🔍MRIで鑑別すべき疾患

頭部MRIで異常所見がみられることのある疾患には、以下のようなものがあります:

  • 進行性核上性麻痺(PSP

  • 多系統萎縮症(MSA)

  • 皮質基底核変性症(CBD)

  • 正常圧水頭症NPH

  • 脳血管性パーキンソニズム

これらはパーキンソン病と似た症状を呈するため、MRIで特徴的な所見がないかを確認します。

⚠️注意すべきポイント

ただし、これらの疾患でも初期段階ではMRIに異常が見られないことも多く、診断に苦慮するケースもあります。したがって、画像だけでなく、問診・身体所見・経過観察を含めた総合的な評価が大切です。


在宅医療の現場でも、パーキンソン病を含む神経疾患の早期発見・診断支援を行っています。ご家族の中に気になる症状がある方は、ぜひご相談ください。

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創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する21~創傷ケアの基本:やさしい洗浄で感染リスクを減らす

創傷ケアでは、「洗う」こともとても大切なステップです。
付着した滲出液(しんしゅつえき)や軟膏をやさしく取り除き、創面(きず)を清潔に保つことで、感染のリスクを減らすことができます。

◆ 洗浄の目的

創傷面やその周囲の皮膚にダメージを与えないよう注意しながら、細菌や、その“えさ”となるタンパク汚れを物理的に除去することが目的です。これにより、局所感染の予防につながります。


洗浄方法のポイント

1. 洗浄剤の選び方

弱酸性の泡タイプの洗浄剤を使い、泡でやさしく包み込むように洗います。
・皮膚が弱っている場合は、セラミド配合の低刺激タイプがおすすめです。

2. 洗う範囲と順番

・ドレッシング材やテープが貼られていた範囲より広めに洗浄します。
・洗う順序は、汚れていない部分から汚れている部分へが基本。たとえば、創部から遠い場所→創部の順に行います。


洗い流しのコツ

使用する洗浄液は次のいずれかで、**体温に近い温度(36〜38℃)**に温めて使います。

  • 微温湯(ぬるま湯)

  • 生理食塩水

  • 蒸留水

200mL以上の洗浄液を使って、洗浄剤や汚れをしっかり流しましょう。
痛みを伴う場合は、刺激が少ない生理食塩水が適しています。

💡 シャワー洗浄は水量・圧が確保しやすく、ポケット(深い部分)のある褥瘡にも有効です。


洗浄後の水分ケア

洗浄後は、清潔なガーゼや不織布で、軽く押さえるように水分を拭き取ります。
※創面(きず)と周囲皮膚を拭くガーゼは必ず分けて使用しましょう。


創傷ケアでは、「ゴシゴシ洗う」のではなく、「やさしく清潔に保つ」ことが大切です。
正しい洗浄で、創の治癒をしっかりサポートしましょう。

あなた:
画像作成
 
 
ChatGPT:

以下は、画像に記載されている皮膚被膜材・スキンプロテクターの商品一覧とそれぞれの画像を整理した図表風の構成案です。ブログや資料作成用の画像として再構成します。


【皮膚被膜材・スキンプロテクターの代表的製品一覧】

商品名 製品画像
リモイスコート(アルケア)
スプレータイプの皮膚保護剤
 
キャビロン 非アルコール性被膜(スリーエム
皮膚への刺激が少ない保護膜形成剤
 
ブレバ皮膚被膜剤(コロプラスト)
速乾タイプで手軽に使えるスキンバリア
 
シレッセ(コンバテックジャパン)
フィルム状に乾燥し、耐水性あり
 
ノンアルコールスキンプレップ(スミス&ネフュー)
皮膚刺激が少なく、剥離痛も軽減
 
 

がん治療後の食欲不振と倦怠感に悩んだ男性に、漢方が奏功した例

 

がん治療後の食欲不振や倦怠感に悩まされる方は少なくありません。今回ご紹介するのは、肺扁平上皮がん術後再発と**早期食道がん(ESD後)**の治療歴をもつ60代男性のケースです。

■ がん治療後も続く、原因不明の食欲不振と倦怠感

この方は、肺がん再発に対して化学放射線療法(CCRT)と免疫チェックポイント阻害剤による治療を受け、その後は再発なく経過。しかし、2024年初頭より食欲不振と倦怠感が持続し、検査を繰り返しても明確な原因が見つからない状態が続いていました。

高カロリー栄養補助飲料のエンシュアを活用しながら、**エドルミズ(グレリン様作用薬)やステロイド(デカドロン)**などを試しましたが、効果は一時的。また、食後に頭から汗が噴き出すといった自律神経系の症状もみられました。

■ 「男性更年期」の可能性と漢方薬の試験的導入

明らかながんの再燃はなく、症状の訴えは「なんとなく疲れる」「元気が出ない」「動悸がある」といった曖昧なものが多く、**いわゆる「男性更年期(LOH症候群)」**の可能性も考慮されました。

そこで試験的に処方されたのが**「加味逍遥散(かみしょうようさん)」**という漢方薬。女性の更年期だけでなく、男性にも使われることがある処方です。

この加味逍遥散が驚くほど奏功し、**「頭がすっきりする」「気持ちが落ち着く」「食事が摂れるようになった」**などの改善がみられました。

■ がんの経過とともに心身を支える医療の大切さ

がん治療後の生活では、「がんそのもの」だけでなく、体力の回復や精神的な不調、内分泌や自律神経のバランスも大きく影響します。この方のように、定期的な補液や食事指導に加え、漢方薬など多角的なアプローチを取り入れることで、生活の質を支えることができます。


🔍 医師のコメント
がん治療後の長期経過において、「なんとなく元気が出ない」「食欲がない」という症状は非常に多くみられます。検査で異常がなくても、背景にある更年期様変化や精神的な要素を見逃さず、患者さんに合った治療法を模索することが大切です。