在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-01-01から1年間の記事一覧

認知症を科学する22

認知症治療は一見、抗認知症治療薬を投薬すればよいという安易な方向に走りがちですが一般臨床医は認知症治療薬は投与すべきでないというくらいの気持ちが必要と私は考えます。 #在宅医療 #高齢者認知症治療 #認知症治療薬の真実 #認知症周辺症状に対す…

在宅医療におけるイレウス(胃十二指腸より下の閉塞)嘔気・嘔吐への対応 ~とてもつらい腹部膨満感の原因と対処~腹水だけではない

消化器がんに限らず、婦人科、泌尿器科がんなど幅広く腹水貯留は生じます ただしがん患者さん腹部膨満感の原因は腹水だけでないことを常に念頭におく必要があります。 その一つがイレウス、サブイレウスであり腹痛、嘔気、嘔吐 腹部打診にて鼓音、聴診にて金…

認知症を科学する22

認知症には中核症状と呼ばれる症状の主とな症状と周辺症状と呼ばれるBPSDよ呼ばれる症状が存在します。 認知症治療薬がターゲットとするのは中核症状ですが、BPSDに対して抗認知症薬が効くか否かについては、様々な研究が行われましたが科学的には残念ながら…

在宅診療における敗血診断

敗血症とは血液が敗ける症(病)であり、血液の中に菌が繁殖している病気と考えて下さい。血液中に菌が繁殖しているのですから、病気としては大変重篤です。 こうした場合、SOFAというスコアがあります。このスコアでは採血結果所見が必要です。在宅医療ではす…

認知症を科学する21

認知症の周辺症状において①薬剤②身体合併症③家族が大部分を占めることは、とても重要なことです。そして、ドネペジルの適応外使用にて陽性症状の出現により身体的暴行として殺人が2例あることは必ず頭におくべきと考えます。 #在宅医療 #高齢者認知症治療…

高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。 高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧…

認知症を科学する20

しかし、認知症に伴う精神症状に対しどう対応するかで、自宅で診つづけることができるか否か決まります。そして幻覚妄想、気分の落ち込みなどは①お酒②薬③身体疾患④ストレス⑤精神疾患などに原因が見つけられないか、まずは検討する必要があります。これにより…

在宅医療と抑制

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

2023.12.21 エーザイ協賛 脳外科のセミナーについて

エーザイ協賛講演会についてのご報告 2023.12.21横浜市金沢区区、南区、鎌倉市における横浜市南共済病院、横浜市南部病院、湘南鎌倉病院を中心とした脳外科のセミナーに呼ばれることになり講演行ってまいりました。 演題名は 高齢化・多疾患羅患時代における…

認知症を科学する19

認知症治療薬に対する効果判定に関してRCT(ランダム化比較試験という仮説立証検定で最も信頼できる試験と考えて下さい)10本をまとめて検証した結果は、認知症治療薬ADAS-cogという点数を2.37改善するのみという結果でした。臨床的に意味ある改善は4点とさ…

在宅医療において患者さんが不穏・せん妄になったら

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。 脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。 60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟…

認知症を科学する18

レビー小体型認知症にドネペジルの効果は科学的には証明されていません。 但し、他治療の無い現状において上記のアルゴリズムで治療するのが適切と私は考えます。 #在宅医療 #高齢者認知症治療 #認知症治療薬の真実 #レビー小体型認知症 #認知症治療の真…

在宅医療における慢性心不全の終末期医療

以前の経験した患者さんです。 90代の男性で5年前に心筋梗塞を患いカテーテルの治療受けましたが、左心機能不全にて治療抵抗性の慢性心不全でしたが、ご自宅で生活させていました。その後発熱に伴う意識障害、体動困難にて入院となり高齢の奥様に説明し急変…

認知症を科学する17

前回よりドネペジルがレビー小体型認知症に無効であるとした試験から一つ有用な知見は示されました。 ドネペジルの抗コリン作用はパーキンソン病の症状を悪化させる懸念があったのですが、これは無いことが証明されたことは有益な知見となりました。 #在宅…

認知症を科学する16

下記資料はレビー小体型認知症にドネペジルが有効であるかのように見える。 しかし、この試験はそもそも仮説に対する判断基準が明示された試験ではない。つまり、統計有意が示されていない試験である。 #在宅医療 #高齢者認知症治療 #認知症治療薬の真実 …

在宅医療と抑制

高齢者の在宅医療において家族の負担となる一つの理由は、不穏などの症状です。 もちろん陽性症状として大声あげて外にでる、物を投げたりするなどの症状ある場合は、ある程度内服による管理必要と考えています。但し、少しふらつくからベッド上というのは高…

認知症を科学する15

下記の資料は、一般の方には少し分かりづらいかもしれません。 かなりざっくり説明するとドネペジルの有用性を科学的に立証するために5回の試験はうまくいかず、6回目で結果をだせました。しかし、その結果とはドネペジル5mgを半年間内服させた患者は、そ…

高齢者が夜間不穏になった場合

認知機能が低下した高齢者が入院すると、かなりの確率で不穏となります。そうした場合、安全の為抑制し薬にて鎮静します。こうした処置にて徐々に身体が弱っていき肺炎などを併発して寝たきりに移行する患者さんを沢山診てきました。在宅医療では、可能な限…

認知症を科学する14

まずドネペジルにおいて2mgの有効性が否定された 過ぎに3mg,5mgにおいても有効性評価行い、試験としてうまくいかず、症状の重い症例のみにて134試験により有効性の可能性が認められたものである。 これらが示すのは、認知症治療薬として上梓されたドネペジル…

高齢者の腰痛に関する注意点

加齢に伴い腰痛は、かなりの頻度で生じます。腰痛に関する話を始めると終わりなき世界となるため、ここでは脊椎圧迫骨折についてお話しさせて下さい。 脊椎圧迫骨折は高齢者によくおこる骨折の一つです。診断に関しては、病歴が重要です。 ①受傷機転脊椎圧迫…

認知症を科学する14

さて、ここから本題に入らせて下さい。認知症の治療薬が科学的に効果あるとするためには ①臨床的に意味ある効果ある×②認知症の中核症状に効果ある という2つの要件を満たすことが必要です。 そして上記資料が示すように、試験は全くうまくいかず161試験にて…

認知症を科学する13

認知症の早期における診断は極めて難しく、不要な薬物療法は厳に控えるべきと考えます。とりわけレビー小体型認知症の早期診断は難しいと考えるべきです。 #在宅医療 #高齢者認知症治療 #認知症の診断の正確性 #レビー小体型認知症 #認知症治療の真実 #…

認知症を科学する12

上記資料は本邦で行われた認知症専門医による患者数及び疾患頻度に関する調査です。 このデータが示すのは、あまりに疾患に地域偏在性があるということです。 しかし同じ日本人において、これほど差がるとは考えられず、認知症専門医においても如何に正確な…

在宅診療における褥瘡に対する陰圧閉鎖療法(VAC療法)

画像は、今年5月頃体動困難にて筋層に達する褥瘡を生じた方です。 当クリニック介入まで4カ月様々な治療にて褥瘡が完治せず、当クリニックに相談あり治療開始。 まず当クリニックとして陰圧閉鎖療法(VAC療法)行う方針としました。 4カ月の経過で全く治癒しな…

認知症を科学する11

アルツハイマー病は非常に有名な疾患ですが、その診断は極めて不確実である認識が必要です。 そして軽度の段階での診断は難しく、中等度の段階で中核症状が全面に現れ、非常に進行した病期では周辺症状は分からなくなるくらい、病状は深刻となります。 #在…

ポリファーマシーの功罪~年をとると色々痛くなるので痛み止めが必要な時

年をとると色々な箇所が痛くなります。腰痛などは、大なり小なりあると考えます。こうした際に痛み止めをどうするか。NSAIDsと呼ばれる痛み止めには胃潰瘍などを生じさせるリスクあり胃薬が必要です。痛み止めのロキソニンは切れ味は良いですが、その分副作…

認知症を科学する10

アルツハイマー病の経過は、上記資料の様な経過をたどります。 まず、中核症状と共に周辺症状が現れ、身体症状が付随してきます。 重要なことは、中核症状は全例で生じますが周辺症状は個人差があることです。 そして何より、初期においては中核症状が全面に…

ポリファーマシーの功罪~薬は少なければ少ないほど良い

ガスター等のH2ブロッカーを長期間使用することで、高齢者の認知機能が低下するリスクが報告されています。これは中枢神経にもH2受容体存在することが、その理由です。ただし、こうした薬剤は脳内への移行はしにくいのですが、腎機能障害などにより排泄が遅…

認知症を科学する9

認知症として有名な疾患であるアルツハイマー病、レビー小体型認知症は上記資料が示すような異常タンパクの蓄積に依るものです。そして、非常に重要なことはこでらの疾患が重複混在するということです。分かりやすく言えば、加齢に伴い心不全、糖尿病などを…

在宅医療における高齢者の脱水について

以前勤務していた病院の看護師さんのお母さんが痩せ薬として飲んでいたのが、利尿剤だったという笑えない話を聞いたことあります。ボクシングなどでも計量前にサウナで脱水となり計量に挑むのは有名な話です。高齢者医療においても脱水との闘いは大変です。…