在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

【医師の現場レポート】レキサルティが効いた認知症のBPSD症例


【医師の現場レポート】レキサルティが効いた認知症のBPSD症例

2024年9月24日、抗精神病薬「レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)」に新たな効能・効果が追加されました。

アルツハイマー認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動」

つまり、いわゆる**BPSD(行動・心理症状)**に対して、薬として正式に使用できるようになったのです。


🔍 当院での症例紹介

今回、レキサルティが非常によく効いた90代女性のケースをご紹介します。

🧓 症例の概要

  • 90代・女性、施設入居中

  • 午後になると精神的に不安定になりやすい

  • 他人の会話が自分への悪口に聞こえる(被害妄想)

  • 「テーブルに虫がいる」「天井に蜘蛛がいる」などの幻視

  • 「テレビから悪口が聞こえる」などの幻聴

  • 就寝前になると症状がより顕著に

💊 前医での処方

  • メマリー錠20mg 夕食後1錠

  • ツムラ抑肝散エキス顆粒 7.5g 毎食前

症状の改善は乏しく、当院での評価と調整となりました。


📝 当院での処方変更

  • メマリー錠を20mg → 10mgへ減量

  • レキサルティOD錠1mgを新規追加(夕食後1回)


✅ 結果と考察

処方変更後、幻視・幻聴はほとんど見られなくなりました
穏やかに過ごせる時間が増え、ご本人・施設職員・ご家族の安心感にもつながっています。


💡 レキサルティの特徴

  • 抗幻覚・妄想作用が強い

  • 鎮静作用は弱いため、いわゆる“ボーッとさせる”タイプの薬ではない

  • 興奮や攻撃性が前面に出るBPSDには第一選択ではないが、幻覚・妄想が主症状のケースには有効


📌 ちなみに…「パラフレニー」とは?

レキサルティの本来の適応である**パラフレニー(老年期妄想性障害)**は、高齢発症の精神病で以下のような特徴を持ちます:

  • 妄想(被害妄想、関係妄想など)を主とする

  • 明らかな認知症はない

  • 幻覚(特に幻聴)を伴うこともある

  • 社会的な適応はある程度保たれている


✍️ まとめ

レキサルティはこれまで統合失調症うつ病補助療法の薬として知られていましたが、認知症に伴う幻覚・妄想タイプのBPSDに対しても、非常に有効な選択肢となる可能性があります。

新たな適応追加を受けて、在宅・施設医療でも活用の幅が広がることが期待されます。

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