在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

褥瘡に対する体圧管理について

褥瘡は、そもそも論で体位変換できない状態の部位に持続的に圧力がかかることにより生じます。なので、褥瘡治療に対し、湿潤療法を熱心行ったとしても、かかる圧力を減じなければ根本的にはいつまで経っても褥瘡はよくなりません。褥瘡予防のために頻回に体位変換するのは、言うは易しで非常に大変なことです。こうした場合、高機能エアマットレス(以下エアマット)体圧測定器の使用がお勧めです。

まず、エアマットについてですが、エアマットを使うことで、局所が沈み込み、接触面積を増大させて体圧を分散させることができます。

2度褥瘡くらいであれば、エアマットに変えるだけで治ってしまいます。

エアマットの注意点としては、適切な体重設定がされているかに注意を払う必要があります。また、電源が切れて入れなおした時に初期設定に変わってしまい、そのままになっていることもあります。

こうしたエアマットを使い適切な除圧がなされていれば、2時間ごとの体位変換は必要ありません。これで、ご家族の介護疲れがなくなります。

また「ハンモック現象」にも注意が必要です。これは、エアマットの上のシーツをしわのないようにピンと敷くと、ハンモックのようになり体圧が上がってしまうことを言います。したがってシーツはだらしない感じでだらだらに敷くというのがポイントです。

さらに、おむつを重ねたり、ガーゼを厚くあてるたりする(そもそもガーゼは必要ないのですが)と体圧が上がってしまうので、おむつはできるだけ少なく、薄くするのがポイントです。体圧の面から考えれば、創傷被覆材もできるだけ薄いものが理想です。

体圧測定器

 

体圧測定器は3万円くらいしますが、体圧を測定しないと、何が正しくて何が間違っているのか分かりません。仙骨部に褥瘡ができていた場合、ベッドに寝ているのが悪いのか、イスに座っているのが悪いのかは、体圧を測定しない限り分かりません。イスに座っているのが悪い場合、いくらベッドにエアマットを入れても褥瘡は治りません。

また、除圧目的にクッションなどを入れているのをよくみますが、それが正しいのかどうかも体圧を測ってみないと分かりません。(クッションなどを入れる場合には、圧が一点に集中しないように、圧が全体にかかるように入れます。ちなみに円座は当たっている部位の体圧が上がってしまうため推奨されません。)ぜひ体圧計を購入して、いろいろな場面で測定してみると良いです。

体圧を測定して50mmHg以下なら大丈夫です。