在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

不定愁訴に関する考察

勤務医時代に私と同世代の方が、めまいがする、足ジンジンする、耳鳴りがするので調べて欲しいと外来に来られてました。私自身、体調不良というものを現在まで殆ど経験したことがなく、正直型通りの画像、検査などにて問題ありませんとしておりました。ただ、こうした患者さんの多くが食生活に少し鈍感な印象も多い気がしてました。私自身は元旦など除き朝ごはんは常に同じメニューです

・野菜ジュース(バッファーは、自宅で採れた柑橘類を搾ったジュース+200-300グラムの緑黄色野菜)

・自家製パン(ホームベーカリーで焼いたものですがナッツとゴマを沢山いれてあります)

・ヨーグルト、チーズ、コーヒー

必須ミネラルやビタミンなどは朝分だけで摂れていると思っています。夜は軽く有酸素運動や筋トレする場合が多いので、夕飯はタンパク質多めです。

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書) | 藤川 徳美 |本 | 通販 | Amazon

しかし、現代の食生活から様々な不定愁訴が出現すると上記の本は警告しています。

具体的には

○イライラしやすい。集中力低下。神経過敏。些細なことが気になる。
○立ちくらみ、めまい、耳鳴り。偏頭痛。
○節々の痛み(関節、筋肉)。腰痛。
冷え性
○レストレスレッグス症候群(RLS=ムズムズ足症候群)。
とても外来に愁訴として思い当たる症状です。筆者は精神科医なのですが、精神疾患に栄養療法を取り入れた治療を行っています。実際に、鉄剤の投与と、高タンパク・低糖質の食事指導によって、劇的に改善した症例が本書に何例もあげられています。精神疾患の中でも、特にうつやパニック障害の方に著効しています。これは、鉄が神経伝達物資であるセロトニンドーパミン作成の際の補因子になることが関係していると思われます。さて、現在の日本人の食生活を一言で言えば、糖質過多+鉄・タンパク質・脂肪酸・ビタミン・ミネラル不足になっています。生きていく上でのカロリーは足りていても、必要な栄養素が足りていない状態で、これを「質的な栄養失調」と呼んでいます。これは、精製された穀物(米や小麦粉)や加工食品の偏った摂取によって起こっています。特に鉄に関しては、日本人の15~50歳の女性の99%が鉄不足になっているというデータが示されています。この年齢の女性に鉄不足が多いのは、第二次性徴期に鉄需要が増大すること、1回の月経によって20~30mgの鉄が失われること、1回の妊娠・出産でフェリチン値で50に相当する鉄が胎児に移行すること(これが産後うつの発生に関係しているのではと考えられています)などによります。多くの医師は、鉄欠乏=貧血と考えていて、鉄欠乏性貧血に対しては鉄剤を投与しますが、貧血のない鉄不足に関しては関心がありません。しかし、鉄は赤血球を作る材料としての役割だけではなく、エネルギー代謝の最終段階において不可欠(ミトコンドリアにおける電子伝達系に鉄が必須)という、生命活動の根幹に関わる重要な役割があるのです。鉄が不足するとエネルギー不足に陥ります。これを無視したあらゆる疾病の治療は、本末転倒なものになります。この本では下記のような基準を示しています

BUN 目標15~20mg/dl(一般的には8~20mg/dl) 10以下が重度のタンパク質不足

MCV 目標95~98fl(一般的には80~100fl)

フェリチン 目標100ng/ml(一般的には男性21~282ng/ml、女性5~157ng/ml)

フェリチン30以下(重篤な鉄不足)でMCV90以下は鉄剤投与の適応

フェリチン31~50 50越えを目標として鉄剤投与

是非、積極的に鉄剤の補充も検討したいのですが、鉄剤の問題として胃に不快感生じやすく、飲み続けて頂くのが難しい場合も多いのです。やはり、きちんとした食事を摂ることが一番大切だと考えます。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影