脳外科医として勤務医をしていたころ、創部感染の問題は時起こっていました。脳卒中患者の褥瘡も頭を悩ませる問題です。研修医の頃は、毎朝傷を消毒してガーゼ交換することが至上の命題であり、唯一の病院内での存在意義でもありました。そうした頃に創処置に革命的な本が出版されました。
キズ・ヤケドは消毒してはいけない―痛くない!早く治る!「うるおい治療」のすすめ | 夏井 睦 | 医学・薬学 | Kindleストア | Amazon
これは、簡単に言うと水道の水きれいにして、サランラップをまくという治療です。そしてイソジンなどによる消毒は害悪以外の何物でもないとされ、衝撃を受けました。
そして在宅医療において新たに褥創ができた場合、デイサービスや訪問介護などで、とりあえずの処置として、褥創をガーゼで覆っていることがよくあります。しかし、こうした処置は問題ある行為なのです。ガーゼ処置は褥創をさらに悪化させることになるからです!
なぜ褥創をガーゼで覆ってはいけないのでしょうか?
①褥創に限らず、キズは湿潤環境(しめった環境)で最も治りやすいと言われています。キズを乾かして治すというのは、前時代的な治療になります。ガーゼで覆うことで、褥創は乾燥状態におかれ、治癒が遅れてしまいます。
②浸出液で褥創とガーゼがくっついてしまい、処置で剥がす際に出血しますし、痛みを伴います。ガーゼで処置をしていると、出血しては治りを繰り返し、いつまでたっても治りません。
③褥創というものは、長い時間、同じところに圧力がかかることによってできます。ガーゼを厚く覆い、その部分に体重がかかると、覆った部分の圧力が上がり、ますます褥創を悪化させてしまいます。
浸出液がありどうしてもガーゼを当てたければ、三角コーナーに使う穴あきポリ袋(ポリ袋に穴を開けてもよい)の中にガーゼを入れて当てるのが良い方法です。
ただし、こうした湿潤療法も傷を治そうとする栄養が足りていなければ傷は治りません。栄養状態の改善も重要な治療の一つです。
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