在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

【在宅でできる褥瘡ケア】湿潤療法だけでは不十分?エアマットと体圧測定のススメ

画像が生成されました褥瘡(じょくそう)は、寝たきりや長時間同じ姿勢で過ごす方にとって、避けて通れない大きな問題です。
そもそも褥瘡とは、体位を変えられない状態で、同じ部位に圧がかかり続けることで発生します。

いくら湿潤療法などの創傷ケアを丁寧に行っていても、原因となる“圧力”を取り除かない限りは根本的な解決にはなりません


■ 頻回の体位変換は、現実にはとても大変…

「褥瘡予防には2時間おきの体位変換」と言われても、実際の介護現場では非常に難しいこともあります。
そこで活躍するのが、高機能エアマットレス(以下エアマット)と体圧測定器です。


■ エアマットの効果と注意点

エアマットは、局所がゆっくり沈み込み、接触面積を増やして体圧を分散する仕組みになっています。
特に2度程度の褥瘡であれば、エアマットに替えただけで治癒が期待できることもあります。

ただし注意点として、

  • 体重設定が正しくされているか

  • 電源を入れ直した際に設定が初期化されていないか

といった点に気を配る必要があります。

また、エアマットを使用して適切な除圧ができていれば、2時間おきの体位変換は原則不要です。
これは、介護を担うご家族にとっても大きな助けになります。


■ “ハンモック現象”にご注意を

意外と知られていないのが「ハンモック現象」。
エアマットの上にピンとシーツを張ってしまうと、体が浮いた状態になり、逆に体圧が集中してしまう現象です。

シーツは**「ゆるく、だらしなく」敷くのが正解**です。見た目よりも、効果を重視しましょう。


■ おむつやガーゼの厚みも体圧に影響

おむつの重ね使いや、ガーゼを厚く当てることも、体圧上昇の原因となります。
おむつはできるだけ薄く、創傷被覆材も可能な限り薄いタイプを選ぶことがポイントです。


■ 体圧測定器の活用で“本当の原因”を特定

体圧測定器は約3万円ほどで購入できます。
一見高価に思えるかもしれませんが、体圧を「見える化」できる唯一のツールです。

たとえば、仙骨部に褥瘡ができたとき、

  • ベッドで寝ているときの圧が原因なのか

  • 椅子に座っているときの圧が問題なのか

これは測定してみないと分かりません
もし座位での圧が原因であれば、いくらベッドにエアマットを導入しても改善しません。

また、除圧目的でクッションを使用しているケースも多く見られますが、それが本当に効果的なのかどうかは測定しないと判断できません。
※ちなみに、円座クッションは体圧がかえって集中するため推奨されていません。


■ 体圧は「50mmHg以下」が目安

測定値が50mmHg以下であれば、褥瘡ができにくいと言われています。
ぜひ、体圧計を活用して、「科学的な褥瘡ケア」を実践してみてください。


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✍️ 内田院長|さくら在宅クリニック(逗子・葉山・横須賀・鎌倉対応)