~オピオイド抵抗性疼痛に在宅医療でどう向き合うか~
最近、印象深い症例を経験しました。がんの痛みは一般に「体性痛」「内臓痛」「神経障害性疼痛」の3つに分類されますが、神経障害性疼痛は、腫瘍が神経に浸潤することで生じるため、しばしばモルヒネなどのオピオイドに抵抗性を示し、非常に難治性です。
プレガバリンやミロガバリンといった内服薬が第一選択とされることも多いですが、実際には内服そのものが困難な終末期の患者さんも少なくありません。
進行がん患者の10~20%には、オピオイド抵抗性の難治性疼痛が生じるとされており、オピオイド単独では鎮痛が不十分なケースでは、抗うつ薬・抗不安薬・抗痙攣薬・神経ブロックなどの補助的な治療の併用が必要になります。また、オピオイドの副作用で減量を強いられる「モルヒネ不耐症」の患者にも同様の工夫が求められます。
そのような場面での**選択肢の一つが「リドカイン」**です。
がん疼痛におけるリドカイン使用の可能性
リドカインは本来、硬膜外麻酔などの局所麻酔薬として保険適応を有しており、神経ブロック治療にも広く用いられています。神経障害性疼痛に対する有効性も報告が多く、欧米ではがん疼痛にも静注や持続皮下注が行われている例があります。
しかし、日本ではがん疼痛に対するリドカイン投与のガイドラインは未整備であり、在宅医療での使用には慎重な判断が求められます。
同様に、ケタミンもオピオイド抵抗性疼痛への治療選択肢として知られていますが、精神症状(せん妄など)を悪化させるリスクがあるため、精神的に不安定な方には注意が必要です。その点、リドカインは比較的穏やかに作用する選択肢として検討の余地があります。
使用に際しての注意点
副作用としては、**血圧低下・徐脈・中枢神経系の症状(耳鳴り、不安、振戦など)があり、特に終末期で肝機能が低下している患者さん(肝転移・黄疸など)**では中毒症状のリスクが高まるため、せん妄や傾眠が薬剤によるものか否かの見極めが重要になります。
在宅では血中濃度を測定することは現実的でないため、低用量からの開始と、慎重な漸増が基本です。
著効例の使用プロトコール
キシロカイン2%静脈注射用
インフューザーポンプ使用(PCA機能なし)
投与速度:1ml/h(持続皮下注)
がん緩和ケアにおける疼痛マネジメントの引き出しを増やすためにも、こうした選択肢を知っておくことは大切です。
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