在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑩~急性期褥瘡とは?

~まずは「見極め」と「皮膚を守るケア」から~

褥瘡(じょくそう)は、皮膚やその下の組織が圧迫されて血流が悪くなり、壊死してしまう傷のことです。
高齢の方や寝たきりの方に多く、**「できてしまってからの対応」**がとても重要です。

今回は、褥瘡ができて間もない「急性期」の段階でどう見極め、どのようにケアするべきかを、わかりやすく解説します。


🔍「急性期褥瘡」っていつのこと?

褥瘡が発生してから おおよそ1〜3週間以内の状態を「急性期褥瘡」と呼びます。

この時期の傷はとても不安定で、ちょっとした判断ミスやケアの遅れで、深部(皮膚の下の組織)まで壊死が進んでしまうことも。

❗こんな皮膚のサインに注意

  • 赤み(境界があいまいなことも)

  • 紫色っぽい斑点(紫斑)や腫れ(浮腫)

  • 水ぶくれ、ただれ(びらん)

  • 表面の皮膚が剥けやすい・出血しやすい


⚠ 深部損傷(DTI)って?

見た目は軽そうでも、中が深く傷んでいることがあります。これが「DTI(Deep Tissue Injury)」です。

💡DTIを疑うポイント

  • 色ムラのある赤み

  • 押すと痛がる or 硬く感じる

  • プヨプヨとした感触

  • 触ると冷たすぎる、または熱い

➡️ これらがある場合は、早めに医療者へ相談を!


🩹ドレッシング材(傷に貼るもの)の選び方

急性期の褥瘡には、「守りながら、よく観察できる」ことが大切。
貼って安心、ではなく**“貼る前に診る”**ことを忘れずに。

ケア目的 材料選びのポイント
観察しやすさ 透明で交換しやすいもの
皮膚の保護 刺激が少なく、くっつきすぎないもの
炎症を抑える 白色ワセリン、酸化亜鉛軟膏などの油性軟膏

❌避けたいもの

  • 粘着が強すぎるテープやシート

  • フィルムだけを長く貼りっぱなしにすること

➡️ 皮膚を余計に傷つけるリスクがあります。


⏩ 慢性期に入ったら「DESIGN-R」で評価

2~3週間経ち、炎症がおさまり、傷の輪郭がはっきりしてきたらDESIGN-Rスケールで状態を記録しながら治療方針を立てていきます。


💡傷の回復プロセス

褥瘡の治り方には順序があります。

  1. 壊死した部分の除去

  2. 新しい肉芽(にくげ)組織を育てる

  3. 傷が縮み、皮膚が再生する

  4. 感染や滲出液をコントロールしながら見守る


🧴創傷被覆材の種類と特徴

材料の種類 特徴・用途
ハイドロゲル 壊死組織を柔らかくし、痛みを和らげる
アルギン酸塩 滲出液を吸収・止血に有効(銀含有タイプも)
ハイドロファイバー 吸収力が高く、感染対策にも優れる
ポリウレタンフォーム 傷にフィットしやすく形状も豊富
フィルム材 浅い傷や皮膚の再生期に使いやすい
キチン・キトサン 皮膚の再生を促すバイオ素材

📝 まとめ:急性期褥瘡ケアは“観察が命”

褥瘡は「まずは見極め」、そして「皮膚を守る」ケアが最優先。
無理に処置を増やすよりも、悪化のサインを見逃さない観察力が何よりも大切です。

貼る前に診る。
その積み重ねが、傷を悪化させず、回復へ導く近道になります。


📚 参考文献

  • 日本褥瘡学会『褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版』

  • 福井基成『急性期褥瘡とその治療』

  • 真田弘美監修『新・褥瘡のすべて』永井書店

  • DESIGN-R 実践マニュアル(日本褥瘡学会)


🌸 在宅医療でも褥瘡ケアは重要です

さくら在宅クリニックでは、逗子・葉山・横須賀・鎌倉エリアを中心に、パーキンソン病認知症、終末期医療など専門的な訪問診療を行っています。

傷の変化を見逃さず、必要最小限の処置で最大限のケアを。
在宅でもできる、確かな褥瘡管理を一緒に考えていきましょう。


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「褥瘡ケア」「スキンテア」「認知症対応」など、実践的なテーマをやさしく解説中です!


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