在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する20

画像が生成されました実際の観察

初回のエコーでは、褥瘡部を中心に広範囲を観察し、異常所見の有無を確認します。異常所見を認めた場合には、その位置をシェーマや写真に記録し、縦断走査・横断走査で静止画と動画を残します。動画は後から解析できるように、ゆっくり撮影するのがポイントです。

観察・評価は「褥瘡部のエコー観察フローチャート(図7)」に基づき進めます。


① 層構造の明瞭さ

層構造が不明瞭な場合には、浮腫・肉芽・壊死組織が疑われます。特に脂肪層や浅筋膜は、骨と皮膚のクッションの役割を担っており、損傷や炎症があると:

  • 脂肪層の内部エコーが高輝度化

  • 脂肪層の肥厚

  • 浅筋膜の不明瞭化

といった所見がみられます(図8)。


② 限局的な低エコー域

低エコー域は悪化リスクの高い所見です。経時的な観察が必要で、特に紡錘状で変化が乏しい場合には瘢痕や線維化を疑います(図9)。


③ 低エコー域の分類(図10)

低エコー域は「境界」「形状」「内部構造」で分類します。

  1. 境界明瞭・内部が無エコー
    → 液体貯留(血腫・水腫)を疑う

  2. 境界不明瞭・内部が均一(Coarse像)
    → 肉芽を疑い、カラードプラで血流が描出されることもある

  3. 境界不明瞭・内部が不均一(Cloud-like像)
    → 壊死組織のびまん性貯留(DTI)を強く疑う

  4. Cloud-like像と類似の敷石像
    → 浮腫による変化であり、DTIとの鑑別が重要

特に③と④は類似しているため、カラードプラを用いた血流確認や経過観察が不可欠です。


④ 異常所見の存在部位・深さ

異常が皮下脂肪層・筋層・筋膜のどこにあるかを確認します。筋層に達する異常所見は、悪化リスクが高く注意が必要です。


⑤ 進展範囲の把握

褥瘡の異常所見は広範囲に及ぶことが多いため、健常部と創部の境界を明確に把握し、進展範囲を確認することが重要です。これにより、治癒・悪化の指標をつかむことができます。


まとめ

Step3の実際の観察では、

  • 層構造の明瞭さ

  • 限局的低エコー域の有無と分類

  • 異常の深さ・範囲

を丁寧に評価することが求められます。特に、DTIや壊死組織は急激に悪化する可能性があるため、経時的観察と記録の徹底が褥瘡管理の質を左右します。

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