認知症の治療薬には大きく分けて 2つのタイプ があります。
1. コリンエステラーゼ阻害薬
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ドネペジル
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ガランタミン
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リバスチグミン
アセチルコリンという神経伝達物質の分解を抑えることで、脳内の働きをサポートし、症状の進行を遅らせる作用があります。
2. NMDA受容体拮抗薬
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メマンチン
脳内で過剰に働いてしまうNMDA受容体を抑え、記憶や学習の機能低下を防ぐ作用があります。
👉 この2種類はいずれも アルツハイマー病に使う薬 ですが、ドネペジルだけは レビー小体型認知症 にも適応があります。
抗認知症薬の限界
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根本的に病気を治す薬ではなく、あくまで「進行を少し遅らせる」「一部の症状を改善する」ための薬です。
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続けていてもいずれは認知症症状が進行していきます。
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「効いているのかどうか」を判定するのは難しく、効果がはっきりしない場合も多いです。
使用できる条件はかなり限定的
抗認知症薬の添付文書(公式な説明書き)には次のように記載されています。
つまり、
✅ 典型的なアルツハイマー病であること
✅ 本人が検査に協力できること
✅ ご家族や介護者から生活状況を確認できること
こうした条件を満たした場合にのみ「試しに使ってみよう」となるわけです。
現実的には、すべての条件を満たすケースはむしろ少数派です。
併用について
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同じ種類のコリンエステラーゼ阻害薬を組み合わせるのはNG(例:朝ドネペジル+夜ガランタミン → 禁止)。
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一方で、メマンチン(NMDA拮抗薬)とコリンエステラーゼ阻害薬の併用は可能です。ただし「単独より明らかに有効」という科学的証拠はまだありません。
薬ごとの細かい違いは意味がある?
例えば「リバスチグミンは別の酵素も抑える」「ガランタミンには受容体を刺激する作用もある」といった特徴がありますが、臨床試験では どの薬も有効性や副作用の差はほとんどない ことが分かっています。
したがって、薬理学的な細かい違いで薬を選ぶ意味は少なく、どの薬を使うかは 患者さんの状況や副作用の出方 などで決まることが多いです。
まとめ
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抗認知症薬は「治す薬」ではなく「一時的に支える薬」。
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使用条件が限られており、誰にでもすぐ処方できる薬ではない。
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同系統の薬同士は併用禁止。メマンチンとの併用は可だが効果は限定的。
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細かな薬理作用の違いに臨床的な意味はほぼない。
「薬をどう使うか」よりも、診断の正確さ・ご本人とご家族の生活の質をどう保つか が何よりも大切です。
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