在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

【在宅診療×膀胱炎】尿路感染症の診断と治療を見直す ー JAMAレビューより

画像が生成されましたJAMA誌にて、外来診療(在宅を含む)における**尿路感染症(UTI)**の診断とマネジメントに関する重要なレビューが掲載されました。
膀胱炎は、在宅医療でも非常に頻繁に遭遇する疾患ですが、抗菌薬耐性や再発への対応など、日常臨床では悩ましい点も多いと思います。

今回はこのレビューから、在宅医にも直結する重要ポイントを簡潔にまとめました。


尿路感染症レビューの概要(JAMA, 2024)

▶ 尿路感染症とは

  • 外来で抗菌薬が処方される最も一般的な感染症の1つ。

  • 近年の薬剤耐性菌の増加により、診断・治療の判断が一層複雑に。


✅ 診断のポイント

● 尿培養は原則不要

  • 初診時に培養をとる意義は低いとされる。

  • 少なくとも2つの症状(排尿痛・頻尿・切迫感)+膣分泌なし → これだけで急性膀胱炎の診断確率90%以上

  • 検尿での白血球陽性は補助的だが、診断確度を大きくは上げない。

● 尿培養が推奨されるケース

  • 6ヶ月以内の再発例

  • 多剤耐性の疑い

  • 複雑性UTI(合併症あり)

  • 治療抵抗例


✅ 治療方針と第一選択薬

女性の単純性急性膀胱炎:

尿培養なし・診察なしでも治療可能!

◎ 第一選択

  1. ST合剤(TMP/SMX):160/800mg 1日2回 × 3日間

  2. ニトロフラントイン(Nitrofurantoin):100mg 1日2回 × 5–7日間

  3. ホスホマイシン・トロメタモール:3g 単回投与

△ 避ける薬剤

  • フルオロキノロン(例:レボフロキサシン):効果ありだが、耐性や副作用を考慮し、広範な感染症での使用に限定

  • βラクタム(アモキシシリン・クラブラン酸、セフポドキシムなど)第一選択には推奨されない


✅ 特別な状況での対応

● 糖尿病合併女性

  • 非糖尿病女性と基本的に同様の治療でOK

● 男性の急性膀胱炎


✅ 在宅診療における対応の実際

当院(さくら在宅クリニック)では、在宅で膀胱炎を疑った際に、第3世代セフェムキノロンが投与されるケースを多く見かけます。
しかし、今回のJAMAレビューでは以下のような新しい知見が示されています。

  • キノロンは第一選択で使わない

  • 尿培養や検尿は必須ではない

  • 電話診療や事前処方によるアプローチも容認される

特に高齢者や通院困難な在宅患者にとって、「簡便・迅速・過剰治療を避ける」方針は重要です。


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