在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者の脱水にご用心!

画像が生成されました――熱中症搬送の4割は高齢者、自宅でも油断は禁物

こんにちは。
連日、猛暑が続いていますね。2025年の夏も例外ではなく、5月から8月20日までの間に4万5千人以上の方が熱中症で救急搬送されたという報告があります。

そして驚くことに、その42.1%が65歳以上の高齢者でした。
さらに、34.3%の人が居室内(自宅や事務所)で熱中症を発症していたというデータもあります。つまり、「家の中にいるから安心」という考えは、もはや通用しないということです。

今回は、高齢者における「脱水」の実態と、その予防についてご紹介します。


高齢者はなぜ脱水になりやすいのか?

兵庫医科大学の調査によると、65歳以上の高齢者516名に対し「食事以外にどれくらい水分を摂っているか?」と尋ねたところ、
1日の必要量(1,000〜1,500mL)に満たないと回答した方が**61.8%**にも上りました。

さらに、「1日に1,000~1,500mLの水分補給が必要だと知っているか?」という質問では、

  • 「知っている」:52.3%

  • 「知らなかった」:47.7%

と、半数近くの方が「必要な水分量そのものを知らない」という状況です。


高齢者が水分を控える理由とは?

次に、「水分をあえて控えた経験があるか?」という質問に対し、19.8%の高齢者が「控えたことがある」と回答。
その理由として最も多かったのが…

  • 「トイレが心配だから」(77.7%)

  • 「喉が渇いていなかった」(25.2%)

加齢により口渇感が鈍くなること、**排尿に対する不安(頻尿・夜間尿)**が水分制限につながるという傾向が明らかになりました。


介護の現場では、水分補給が“難しい”と感じている

30~40代の介護従事者に「高齢者への水分補給介助は難しいと思うか?」と尋ねたところ、**90.6%**が「難しい」と回答。

主な理由(複数回答)としては、

  • 本人に飲む意思がない(86.7%)

  • 拒否される(60.6%)

というように、本人の“拒否”が大きなハードルになっていることがわかりました。


工夫で乗り越える!介護現場のアイデアいろいろ

では、実際にどんな工夫が行われているのでしょうか?
介護従事者からは以下のような声が上がっています(複数回答):

  • 飲み物にバリエーションを持たせる:63.8%

  • 飲み物にとろみをつける:56.6%

  • ゼリー状にして提供する:46.5%

  • 経口補水ゼリーを使用する:35.1%

特にゼリーについては、**勧めた介護職の85.8%が「効果があった」**と答えており、高齢者にとって摂取しやすく、効果的な方法として注目されています。


最後に:脱水を“家庭で防ぐ”ことが大切です

この調査から見えてきたことは、

  • 高齢者本人には水分補給の重要性が届いていないこと

  • 家族や介護者には継続的な働きかけが求められていること

まだまだ暑い日が続きます。
ご高齢のご家族がいる方は、**「のどが渇いてからでは遅い」**という意識を持ち、
意識的に水分補給を促してあげてください。

また、本人が飲みにくいと感じる場合には、ゼリーやフレーバー付き飲料、冷たいスープなど、**“楽しく飲める工夫”**が功を奏するかもしれません。

高齢者の脱水は命に関わる問題です。
この夏も、みんなで声をかけ合いながら、水分補給の大切さを共有していきましょう。 当院では、地域の在宅医療ニーズに応え、安心と尊厳ある療養生活を支援しています。
詳細は公式HPへ:
さくら在宅クリニック|逗子市・在宅医療