在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

パーキンソン病の新しい治療選択肢「持続皮下注射ヴィアレブ」を開始しました

画像が生成されましたパーキンソン病は進行に伴い、薬(特にレボドパ)の効き目が安定せず、「動ける時間」と「動けない時間」がはっきり分かれてしまうことがあります。これを 「オン・オフ現象」 と呼びます。

このような症状に悩む方のために、近年日本でも使えるようになったのが
「持続皮下注射ヴィアレブ(アポモルヒネ持続皮下注射)」 です。


ヴィアレブってどんな薬?

  • アポモルヒネ という成分が入った薬

  • 小型のポンプを使って、皮膚の下に持続的に投与します

  • ドパミンの働きを補って、動きにくさやオン・オフの波をやわらげることが目的です


どんな人に向いているの?

  • 内服薬では効果が安定せず、オン・オフが頻繁にある方

  • 経口で薬を飲むのが難しくなってきた方

  • 外科的手術(脳深部刺激:DBS)や腸管注入(デュオドーパ)に比べて、体への負担が少ない治療を希望される方


メリット

  • 薬の血中濃度が安定 → オン・オフが減り、生活がしやすくなる

  • 内服が困難な場合でも使用できる

  • 手術が不要で、在宅でも導入可能


注意点・副作用

  • 皮膚トラブル(赤み、しこり、かゆみ)が出やすい

  • 吐き気・立ちくらみ・眠気・幻覚などが出ることもある
    → 多くは薬の調整や工夫で対応可能

  • 毎日の注射・ポンプ管理が必要なため、ご家族や介護者の協力が欠かせない


日本での現状

  • 2022年に承認された新しい治療で、まだ導入施設は限られています

  • 進行期パーキンソン病の「オン・オフ」で悩む方にとって、在宅で行える選択肢が増えたという点で注目されています


まとめ

持続皮下注射ヴィアレブは、進行したパーキンソン病で「薬が効いたり効かなかったり」の波に苦しむ方にとって、生活を安定させる大きな助けとなる可能性があります。

まだ新しい治療のため、導入には医師や看護師と相談しながら進めていく必要がありますが、
「手術は避けたいけれど、もう少し動ける時間を増やしたい」 という方にとって、有力な選択肢のひとつです。