~アーチファクト・装置・体型の影響とは?~
医療現場で多用される超音波検査(エコー)は、CTやMRIと比べて手軽で非侵襲的。しかし、画像がわかりづらいという声が多いのも事実です。
その大きな原因が、**アーチファクト(artifact)**と呼ばれる“画像上のノイズ”です。今回は、そんなエコー画像を読み解く際の「落とし穴(ビットフォール)」について、わかりやすくまとめます。
🔍 エコー画像を見にくくする“アーチファクト”とは?
アーチファクトは、音波の反射・屈折・減衰などによって本来の画像とは異なる見え方が生じる現象です。
ただし、診断のヒントになるアーチファクトもあるため、仕組みを理解しておくことがとても大切です。
主なアーチファクトの種類
① 屈折による歪み・影(外側陰影)
音速の異なる組織の境界で音波が曲がることで、実際より形が歪んで見えたり、構造の位置がずれて表示されたりします。腫瘤の横や奥に「影(lateral shadow)」が出るのも特徴です。
📷 図2:腫瘤の外側陰影と形状変化(屈折の影響)
② 反射による虚像・音響陰影
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鏡面現象:骨など強い反射面で線対称の偽像が出現
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音響陰影:結石・骨など強く反射する物体の後方にエコーが届かず“黒く抜ける”
📷 図3・4:皮下血腫の虚像、肋骨後方の音響陰影
③ 減衰(Attenuation)
深部に進むほど、エネルギーが吸収・散乱されて音波が届かなくなる現象。高周波では減衰が大きく、深部が見えにくいです。
📷 図5:高周波では深部が見えにくい例
④ 増強(Posterior Enhancement)
液体など音波が減衰しにくい組織を通過すると、その後方が周囲より明るく表示されることがあります。嚢胞などでよく見られる所見です。
📷 図6:嚢胞の後方音響増強
⑤ 多重反射(Reverberation)
体表と強い反射面の間で音波が何度も反射し、**血管内などに“かすんだ高エコー像”**が現れます。
📷 図7:総頸動脈内の多重反射像
⑥ サイドローブ(副極)
主ビーム以外に斜めに出るサイドローブが、実像と異なる位置に偽の高エコー像を作ることがあります。
📷 図8:両端が上がった弓状の高エコー(サイドローブ)
👩⚕️ アーチファクトを防ぐ・軽減するには?
🔧 操作テクニックがカギになります!
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ゼリーをしっかり塗る(密着性UP)
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プローブの角度を調整する
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わずかに移動して“圧迫”を最適化
📷 図9:多重現象が解消される例
💻 装置の違いも画質に影響!
機器 | 周波数 | 特徴 |
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据置型(18MHz) | 高周波・高画質 | 筋線維や毛穴まで鮮明 |
ポータブル型(12MHz) | やや低周波 | 表層観察可能だが分解能はやや劣る |
📷 図10:据置型とポータブル型の画像比較
🧍♂️ 体型の影響にも注意!
肥満体型では皮下脂肪が多く、超音波の減衰が大きくなり深部の画質が低下します。
逆に、やせ型では深部まで明瞭に描出できます。
📷 図11:体型による減衰の差
✅ まとめ:エコー画像読影の「落とし穴」とは?
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アーチファクトはエコーに特有の“錯覚”
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正確な読影には知識+技術+経験が必要!
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装置や体型による違いも意識しよう
🔰 エコー画像は慣れるまで難しいですが、「なぜそう見えるか」がわかると診断の大きな武器になります!