在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する③~初心者がつまずきやすい「エコー画像の落とし穴」

~アーチファクト・装置・体型の影響とは?~

医療現場で多用される超音波検査(エコー)は、CTやMRIと比べて手軽で非侵襲的。しかし、画像がわかりづらいという声が多いのも事実です。

その大きな原因が、**アーチファクト(artifact)**と呼ばれる“画像上のノイズ”です。今回は、そんなエコー画像を読み解く際の「落とし穴(ビットフォール)」について、わかりやすくまとめます。


🔍 エコー画像を見にくくする“アーチファクト”とは?

アーチファクトは、音波の反射・屈折・減衰などによって本来の画像とは異なる見え方が生じる現象です。

ただし、診断のヒントになるアーチファクトもあるため、仕組みを理解しておくことがとても大切です。


主なアーチファクトの種類

屈折による歪み・影(外側陰影)

音速の異なる組織の境界で音波が曲がることで、実際より形が歪んで見えたり、構造の位置がずれて表示されたりします。腫瘤の横や奥に「影(lateral shadow)」が出るのも特徴です。

📷 図2:腫瘤の外側陰影と形状変化(屈折の影響)


反射による虚像・音響陰影

  • 鏡面現象:骨など強い反射面で線対称の偽像が出現

  • 音響陰影:結石・骨など強く反射する物体の後方にエコーが届かず“黒く抜ける”

📷 図3・4:皮下血腫の虚像、肋骨後方の音響陰影


減衰(Attenuation)

深部に進むほど、エネルギーが吸収・散乱されて音波が届かなくなる現象。高周波では減衰が大きく、深部が見えにくいです。

📷 図5:高周波では深部が見えにくい例


増強(Posterior Enhancement)

液体など音波が減衰しにくい組織を通過すると、その後方が周囲より明るく表示されることがあります。嚢胞などでよく見られる所見です。

📷 図6:嚢胞の後方音響増強


多重反射(Reverberation)

体表と強い反射面の間で音波が何度も反射し、**血管内などに“かすんだ高エコー像”**が現れます。

📷 図7:総頸動脈内の多重反射像


サイドローブ(副極)

主ビーム以外に斜めに出るサイドローブが、実像と異なる位置に偽の高エコー像を作ることがあります。

📷 図8:両端が上がった弓状の高エコー(サイドローブ)


👩‍⚕️ アーチファクトを防ぐ・軽減するには?

🔧 操作テクニックがカギになります!

  • ゼリーをしっかり塗る(密着性UP)

  • プローブの角度を調整する

  • わずかに移動して“圧迫”を最適化

📷 図9:多重現象が解消される例


💻 装置の違いも画質に影響!

機器 周波数 特徴
据置型(18MHz) 高周波・高画質 筋線維や毛穴まで鮮明
ポータブル型(12MHz) やや低周波 表層観察可能だが分解能はやや劣る

📷 図10:据置型とポータブル型の画像比較


🧍‍♂️ 体型の影響にも注意!

肥満体型では皮下脂肪が多く、超音波の減衰が大きくなり深部の画質が低下します。
逆に、やせ型では深部まで明瞭に描出できます。

📷 図11:体型による減衰の差


✅ まとめ:エコー画像読影の「落とし穴」とは?

  • アーチファクトはエコーに特有の“錯覚”

  • 正確な読影には知識+技術+経験が必要!

  • 装置や体型による違いも意識しよう

🔰 エコー画像は慣れるまで難しいですが、「なぜそう見えるか」がわかると診断の大きな武器になります!