在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について②~認知症の診断は“除外診断”から始まる

画像が生成されました「最近、物忘れが増えたかも…」
そんな時、気になるのが「認知症」の可能性ですよね。でも、実は認知症の診断はすぐには下されません
なぜなら、**認知症の診断は“除外診断”**から始まるからです。


認知症の診断は2段階で行われる

診断は、まず2つのステップに分かれています。

▼ 第1段階:認知症“もどき”を除外する

認知症っぽいけど、実は別の原因だった」──そんなことは少なくありません。たとえば以下のような状態です:

これらは治療可能なものも多く、真の認知症と間違えると誤診になってしまいます。

▼ 第2段階:真の認知症かを見極める

“もどき”が除外された場合、次は本格的な認知症(=認知症性疾患)の鑑別に進みます。

📊(下図は日本神経学会の診断フローチャート画像をアップロードしました


■ 特に重要なのは「認知症もどき」の見極め

なぜここまで丁寧に“除外”するのか。
それは、真の認知症は基本的に進行性で完治しないからです。
一方、認知症もどきは治療や改善の可能性があり、見逃してはいけないのです。


■ 除外診断に必要な検査は?

  • 病歴聴取(いつから? どんな物忘れ?)

  • 認知機能テスト(MMSEやHDS-Rなど)

  • 血液検査(甲状腺・ビタミンなど)

  • 頭部画像(CT・MRI

📝高価な検査機器や専門病院が必須というわけではなく、かかりつけ医でも対応可能です。


■ 正常な老化? それとも病的?画像をアップロードしました

高齢者の物忘れはすべてが病気ではありません。

項目 正常 軽度認知障害 認知症
認知機能 年齢相応 少し低下 明らかに低下
日常生活 問題なし 問題なし 障害あり
経過 進行しない 必ずしも進行せず 徐々に進行

このように、認知症=記憶力低下というわけではなく、日常生活への影響がポイントとなります。


心理検査の役割(MMSE / HDS-R)

心理検査は、認知機能を数値化するツールです。

  • MMSE(Mini-Mental State Examination):30点満点、24点未満で認知症の疑い

  • HDS-R(長谷川式):30点満点、20点未満で認知症の可能性

📌 ただし、点数だけで判断せず、本人の様子や病歴と併せて評価することが重要です。


■ 認知機能の“進行”が判断材料になることも

ある研究によると、正常高齢者では1年で認知機能がほぼ変わらない一方、
アルツハイマー病患者では平均して1年で約3点ずつMMSEスコアが低下するとの報告もあります。

つまり、「1年前と比べて明らかに悪くなっている」という病歴の変化が、診断の鍵になるのです。


■ まとめ:診断こそが最も重要な治療の第一歩

  • 認知症診断はまず「もどき」を除外することが大切

  • 誤診は人生を左右するほど重大な影響を及ぼす

  • 正しい診断には、病歴・検査・観察すべてが重要

「忘れることが増えた」=即「認知症」ではありません。
正しい評価と冷静な判断が、本人にも家族にも大きな安心につながります。

📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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