1. 膀胱内尿量(残尿量)の評価法
● なぜ測定が重要?
排尿障害の原因には「貯留(蓄尿障害)」と「排出困難(排出障害)」があり、残尿量の有無・程度を把握することで病態の違いが明らかになります。
● 残尿量の計算方法(図5)
膀胱内の三径(縦・横・上下)を測定し、以下の式で算出:
膀胱内尿量(mL)= a × b × c ÷ 2
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a:左右径(横断像)
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b:上下径(縦断像)
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c:前後径(横断像)
📌 成人で残尿が100mL以上あれば「残尿あり」、高齢者では50mL以上で「残尿あり」と判断されます。
● 高齢者では「残尿50mL」でも要注意な理由(コラム)
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膀胱感覚が鈍く、残尿に自覚がない
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歩行や排尿行動の制限で頻回にトイレに行けず「頻尿」と誤認されることも
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サインを見逃さないためにも、数値での可視化が必要!
2. 膀胱・前立腺の形態観察
● 観察ポイント(図6・7)
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膀胱結石や腫瘍の有無(強エコー・音響シャドウ)
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前立腺肥大による形態変化
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膀胱壁の肥厚(>5mm以上で異常の可能性)
● 前立腺体積の計算式(図7下段)
前立腺体積(mL)= a × b × c × π ÷ 6
前立腺の体積が20mL未満なら正常、50mL以上なら重度肥大と評価されます。
3. 骨盤底筋訓練(PFMT)のバイオフィードバック活用
● 実際の活用方法(図8)
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膀胱内に約200mLの尿を貯留させた状態で骨盤底筋を収縮
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正常な収縮では「膀胱頸部が引き上がる」所見が得られる
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腹筋が過剰に使われると「子宮や腹部が下がる」ように見え、不適切な収縮と判断される
✅ 高齢者や失禁患者にも、正しい訓練効果を“見せながら”確認できる教育的ツールとして活用できます。
4. 尿道カテーテルの位置確認
● 誤留置リスクとエコーによる確認(図9)
💡 誤って尿道内にバルーンが残ると出血や痛み、尿漏れを引き起こすため、挿入直後の確認が非常に重要です。
まとめ:見えない排尿を「見える化」することで、ケアが変わる
「排尿トラブル」はQOLを左右するテーマ。エコーは非侵襲で、安全に、そして正確に“尿の見える化”を可能にします。
現場でのスクリーニングから在宅支援、リハビリ指導まで、ぜひご活用ください。