在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する12~エコーで“見える”排尿管理:評価・判断の具体的手技編

1. 膀胱内尿量(残尿量)の評価法

● なぜ測定が重要?

排尿障害の原因には「貯留(蓄尿障害)」と「排出困難(排出障害)」があり、残尿量の有無・程度を把握することで病態の違いが明らかになります。


● 残尿量の計算方法(図5)画像が生成されました

膀胱内の三径(縦・横・上下)を測定し、以下の式で算出:

膀胱内尿量(mL)= a × b × c ÷ 2

  • a:左右径(横断像)

  • b:上下径(縦断像)

  • c:前後径(横断像)

📌 成人で残尿が100mL以上あれば「残尿あり」、高齢者では50mL以上で「残尿あり」と判断されます。


● 高齢者では「残尿50mL」でも要注意な理由(コラム)

  • 膀胱感覚が鈍く、残尿に自覚がない

  • 歩行や排尿行動の制限で頻回にトイレに行けず「頻尿」と誤認されることも

  • サインを見逃さないためにも、数値での可視化が必要!


2. 膀胱・前立腺の形態観察

● 観察ポイント(図6・7)画像が生成されました

  • 膀胱結石や腫瘍の有無(強エコー・音響シャドウ)

  • 前立腺肥大による形態変化

  • 膀胱壁の肥厚(>5mm以上で異常の可能性)

前立腺体積の計算式(図7下段)

前立腺体積(mL)= a × b × c × π ÷ 6

前立腺の体積が20mL未満なら正常、50mL以上なら重度肥大と評価されます。


3. 骨盤底筋訓練(PFMT)のバイオフィードバック活用

● 実際の活用方法(図8)

  • 膀胱内に約200mLの尿を貯留させた状態で骨盤底筋を収縮

  • 正常な収縮では「膀胱頸部が引き上がる」所見が得られる

  • 腹筋が過剰に使われると「子宮や腹部が下がる」ように見え、不適切な収縮と判断される

✅ 高齢者や失禁患者にも、正しい訓練効果を“見せながら”確認できる教育的ツールとして活用できます。


4. 尿道カテーテルの位置確認

● 誤留置リスクとエコーによる確認(図9)画像が生成されました

  • カテーテルバルーンが膀胱内に描出されていれば正しく留置されている証拠

  • 横断像・縦断像両方で観察し、**高エコーリングと無エコー(生理食塩水)**が確認されるかをチェック

💡 誤って尿道内にバルーンが残ると出血や痛み、尿漏れを引き起こすため、挿入直後の確認が非常に重要です。


まとめ:見えない排尿を「見える化」することで、ケアが変わる

評価項目 エコーで得られる情報
残尿量 膀胱内尿量の定量評価(50〜100mL以上で要注意)
膀胱壁・前立腺 結石・腫瘍・肥大の有無
骨盤底筋 適切な収縮ができているかの確認
カテーテル 正しく膀胱内に留置されているか

「排尿トラブル」はQOLを左右するテーマ。エコーは非侵襲で、安全に、そして正確に“尿の見える化”を可能にします。

現場でのスクリーニングから在宅支援、リハビリ指導まで、ぜひご活用ください。