在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する11~療養生活に必要な排尿評価 〜エコーによる観察とアセスメント〜

はじめに:なぜ排尿にエコーなのか?

排尿管理では、単に「出た・出ない」だけでなく、排尿機能の背景や排尿障害のタイプを理解し、必要なケアを提供することが求められます。

エコー(超音波)は、痛みや侵襲なく、残尿量・膀胱壁・前立腺の形状などを可視化できるため、排尿ケアの質を大きく高める武器となります。


1. エコーでできること・評価できること

● エコーでできる主なこと

  • 下部尿路症状・機能の把握

  • 症状の原因(病態)の確認

  • 病態に応じたケア評価

● 評価できる具体的所見

  • 残尿・尿失禁のタイプ

  • 膀胱・前立腺の形態(肥大・結石など)

  • 骨盤底筋の反応

  • カテーテル留置位置の確認

✅ エコーで“見える化”されることで、観察・記録・評価・ケア内容すべてが進化します!


2. 排尿障害の分類と評価軸

排尿トラブルは大きく分けて、以下の要因に分類されます。

● 排尿行動の自立に影響する要因(図1)



  • 蓄尿障害(尿が貯められない)

  • 排出障害(出しにくい)

    • 膀胱収縮力低下、括約筋障害

    • 神経因性膀胱、前立腺肥大など

● 下部尿路機能の分類(図2)

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ICS分類による3分類:

  1. 蓄尿症状(頻尿・尿意切迫)

  2. 排尿症状(遷延排尿・腹圧排尿)

  3. 排尿後症状(残尿感など)


3. 観察ポイント:膀胱をエコーで観るコツ

● 膀胱の位置と解剖(図3)

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  • 男性:恥骨直上の後ろに前立腺

  • 女性:子宮が介在しやすい位置関係

● 使用プローブと周波数

  • コンベックス型(3.5〜5MHz)

  • プローブは恥骨直上に垂直、または30°ほど傾けて当てる

● 観察時の注意点

  • 腹部圧迫により見えにくくなる → タオル・カーテンで圧迫軽減

  • 膀胱全体を捉えるには最大断面を中央に描出する必要あり


4. 撮像方法と描出テクニック(図4)

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像の種類 操作ポイント
短軸像(横断面) プローブを横に構え、膀胱を輪切りに観察
長軸像(縦断面) プローブを縦に構え、膀胱〜尿道方向を観察
扇動走査 プローブを微調整して、最大断面を探す

🔍 画像の中心に膀胱を持ってくることで、適切な残尿評価や前立腺・子宮の確認が可能になります。


5. 表でわかる!排尿管理におけるエコーの使い方(表1)

活用目的 エコーでの観察項目
症状・機能の把握 膀胱の大きさ・残尿量・前立腺肥大
原因の確認 膀胱壁の肥厚、結石、筋層変化など
ケアの検討 骨盤底筋訓練の効果、カテ位置確認

おわりに

排尿の問題は、生活の質(QOL)に直結する重要な課題です。

「排尿がうまくいかない」その背景にある構造や動きを、エコーで“見える化”することにより、本人や家族、ケアチームと共通理解を持ちながら支援することが可能になります。

排泄ケアを“感覚”から“根拠ある実践”へと進化させるために、エコーは今後ますます重要なツールとなっていくでしょう。