VFやVEといった専門検査が難しい環境でも、**超音波検査(エコー)**を用いれば、非侵襲的かつリアルタイムに嚥下機能の観察が可能です。
嚥下の5期モデルとエコー観察の関係
嚥下は大きく5つの時期に分けて捉えられます(図4参照):
エコー観察の対象は、口腔期〜咽頭期〜食道期にかけての食塊の流れ、特に誤嚥や咽頭残留が起きやすい部位です。
舌から食道へ:食塊の流れを理解する
図5のように、食塊は嚥下時に咽頭蓋谷付近で左右に分かれ、梨状窩(りじょうか)を通って食道へと進みます。この経路上に問題があると、食塊が残留したり、気管に流れ込んでしまうことがあります。
エコーによる観察部位とそのポイント
① 気管・梨状窩の観察方法(図6)
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手順1:甲状軟骨に縦方向にプローブを当て、軟骨を描出(灰色)
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手順2:外側に移動して気管前壁を描出(白色)
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手順3:さらに外側に回転し、気管後壁・梨状窩を観察
✅ 気管や梨状窩に残留物が見えると、誤嚥や咽頭残留の兆候が疑われます。
② 喉頭蓋谷の観察方法(図7)
✅ **白く見える境界線(高エコー域)**を目印に、残留物の有無を確認します。
最新技術:画像処理で誤嚥を“見える化”する
図「コラム」では、AIや画像処理技術により、誤嚥物に色を付けて強調表示する手法が紹介されています。従来のエコー画像では識別が難しかった誤嚥物を、赤や青で可視化することで、誰でも容易に認識できるようになります。
将来的には、在宅でも誤嚥・咽頭残留をリアルタイムでモニタリングできる時代がくるかもしれません。
エコー観察時の注意点
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基本は坐位またはベッド上30°以上起こした姿勢で行います
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ゼリーは垂れにくいハードタイプを使用
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プローブの圧迫で喉の動きを妨げないよう注意
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患者が自然な嚥下を行えるよう、モニター位置や姿勢に配慮
誤嚥や咽頭残留を“見逃さない”ために
誤嚥や咽頭残留は、「食後のむせ」や「湿性嗄声」だけでは気づけないことがあります。
エコーによるベッドサイド観察は、以下のような場面で役立ちます:
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高齢者施設での食事前後の評価
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経口摂取再開前のスクリーニング
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誤嚥性肺炎の再発予防
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通常食→とろみ食への切り替え判断
まとめ:エコーは在宅嚥下ケアの新しい“目”になる
VF・VEに比べて簡便・非侵襲でありながら、エコーは**“その場で評価・対応”できるツール**として注目されています。
「誤嚥を見つける」から、「誤嚥を未然に防ぐ」へ。
超音波による嚥下観察は、そんな未来を実現する可能性を秘めています。
📺 エコーを使った嚥下観察の実例は、YouTubeでもご紹介しています!
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