在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する16~【便秘ケアに役立つ】直腸のエコー観察法と描出のコツ

ree便秘のアセスメントにおいて、直腸内の便の有無や性状を正確に評価することは非常に重要です。従来の直腸診は不快感や羞恥心のリスクも伴いますが、エコー(超音波)検査なら非侵襲的に直腸の状態を可視化することができます。


直腸を“見える化”する基本構造とプローブの位置

直腸の観察では、身体の構造をランドマークとして活用します。

  • 観察位置:プローブを恥骨結合の直上に当てる

  • ランドマーク

    • 男性:膀胱 → 前立腺 → 直腸

    • 女性:膀胱 → 子宮・腟 → 直腸

膀胱に尿がたまっている場合、**無エコー域(黒く抜ける)**として描出され、直腸の確認に役立ちます。


直腸の観察手順

① 横断走査(断面像)画像が生成されました

  • プローブを腹部正中線上の恥骨結合直上に横方向で当てる

  • 軽く頭側に傾け、**膀胱(黒)とその下の前立腺・子宮(灰色)**を描出

  • その下の直腸を高エコー構造+後方音響陰影として観察

🎯ポイント:
・プローブはややしっかりめに押し当てる
・深度やゲイン(明るさ)を微調整しながら中央に直腸像を収める


② 縦断走査(長軸像)

  • プローブを90度回転させ、縦方向で当てる

  • 無エコー域の膀胱を確認したら、左右方向に扇動走査(30°以内)

  • 直腸の連続した長軸像を観察

👁‍🗨 糞便があると、直腸内に高エコー+音響陰影が描出されます。


実際の描出例と性差による特徴

観察像の特徴 男性 女性
ランドマーク 前立腺 子宮・腟
直腸の位置 前立腺の下方 子宮・腟の下方

→ この構造の違いを理解することで、より正確な直腸の描出と便性状の評価が可能になります。


ブリストル便性状スケールとエコー所見の一致

便の評価には、「ブリストル便性状スケール(BSFS)」が活用されます。
このスケールでは、便を1〜7の硬さに分類します。

スコア 便性状 エコー所見の傾向
1〜2 硬便(兎糞状〜硬いソーセージ状) 高エコー+強い音響陰影で確認可能
3〜4 普通便 中等度のエコー反射
5〜7 軟便〜水様便 反射は弱く、不定型・無エコーに近い

エコー画像と便性状は相関性が高く、硬便の見極めに特に有効です。


観察時の注意点と配慮

  • 基本は仰臥位で観察。腰痛などある場合は膝を立てるなど体位調整を。

  • プローブは恥骨結合直上に置くため、下着を下げる必要があります。

  • 羞恥心への配慮が大切。必ずバスタオル等で露出部位以外を覆い個室・カーテン対応を行いましょう。


まとめ:直腸エコーは、非侵襲で安心できる排便評価法

直腸エコーを活用すれば…

  • 「便があるのか、ないのか」を視覚的に判断

  • 不適切な下剤や浣腸を回避

  • 患者の苦痛と羞恥心を最小限にしたケアが可能に

特に高齢者・認知症患者・言語障害のある方の便秘評価において、大きな武器となります。


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