在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について31~コリンエステラーゼ阻害薬とメマンチン ― 併用に意味はある?

画像が生成されました1. 併用療法のメタ解析から

  • 中等度~高度アルツハイマーでの併用療法は、単独療法に比べて統計学的には改善あり

  • ただし、その差はごく小さく、臨床的な意味があるかは不明

  • 海外で行われたメマンチン28mg/日の併用RCTでは有意差が出たが、国内未承認量。👉 結論:日本で積極的に併用する根拠は乏しい

2. DOMINO study(英国・在宅患者295例)

対象:ドネペジル10mgを3か月以上内服中、中等度~高度アルツハイマー病患者群分け(52週フォロー):a) ドネペジル中止(プラセボ群)b) ドネペジル継続c) ドネペジル中止+メマンチン追加d) ドネペジル継続+メマンチン追加

評価項目:

  • sMMSE(認知機能):30点満点、1.4点差で臨床的有意差

  • BADLS(日常生活動作:60点満点、3.5点差で臨床的有意差

結果

  • ドネペジル継続群:sMMSEで+1.9点、BADLSで+3.0点 → 有意に良好

  • メマンチン群:sMMSEで+1.2点、BADLSで+1.5点 → 有意に良好

  • 併用群 vs ドネペジル単独:差なし

  • ドネペジル中止群:sMMSE・BADLSともに悪化、脱落も多かった

3. 臨床的な示唆

  1. ドネペジル単独・メマンチン単独・併用で大差はない→ 「両方使えばより効く」とは限らない。

  2. ドネペジルを中止すると機能低下が明確中等度~高度であっても、副作用がなければ続けたほうが良い

  3. 併用療法を積極的に推す根拠は弱い→ 費用・服薬負担を考慮すれば、まずは単独で十分。

まとめ

  • 併用は「効く」というより「差がほとんどない」

  • ドネペジルは中止せず継続が望ましい(在宅生活を支えるうえで)。

  • メマンチンは副作用プロファイルが異なるため、ドネペジルが使えない場合や副作用時に検討

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