在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する⑧~エコーの基礎知識:撮影の手順とポイント

  •  


    はじめに

    エコー(超音波)検査は、非侵襲的かつリアルタイムに体内を観察できる重要な手段です。今回は、エコー検査を安全かつ正確に行うための基本的な撮影手順を紹介します。


    1. 機器の準備

    ● 使用機器の種類

    エコー装置には以下のタイプがあります:

    • 据置型:検査室で使用。高機能・高画質。

    • ポータブル型:病棟・手術室向け。持ち運び可能。

    • 携帯型:在宅や災害医療向け。超軽量。

    ● 電源の接続

    • 主電源:装置背面からコンセントへ接続。

    • 副電源:操作パネルでスイッチON。


    2. 撮影前の準備

    ● 情報入力

    患者ID、検査部位、日時などを入力し、プローブ種別・周波数・表示スケール・ゲイン・焦点位置を調整。

    ● ゼリーの準備

    • ゼリー:プローブと体表の間に塗布し、音の伝達性と画像精度を高める。

    • ウォーマーを使用すると患者の不快感も軽減。

    ※ 注意:プローブの接触面に空気が入らないように密着させること!


    3. 患者の準備

    • 観察部位を露出し、それ以外はタオル等で覆う。

    • 検者は患者の右側に座り、右手でプローブを持つのが基本スタイル。

    • プライバシーと安楽を意識した体位設定が重要。


    4. 観察時の基本動作

    ● プローブの持ち方

    • 短軸方向:第1指と第3指で軽く挟む。

    • 第5指を体表に固定し安定させる。

    ● ボディマーク(プローブのマーク)の向き

    • 短軸方向では右側が“画面左”に写るように。

    • 長軸方向では頭側が“画面左”に写るように保持。


    5. 画像の調整ポイント



    調整項目 説明
    ゲイン(Gain) 明るさ(輝度)の調整。60〜100dB程度で調整。
    STC(Sensitivity Time Control) 深さごとの明るさの補正。
    ダイナミックレンジ(Dynamic Range) コントラスト調整(30〜90dB)。
    画面拡大(Depth) 観察対象の深さに応じてズーム。
    フォーカス(Focus) 観察対象に焦点を合わせ、鮮明化。

    操作パネルは機種により異なるため、●印の操作部は必ず事前に確認しておきましょう。


    6. 撮影時の注意点(コラムより)

    • ゼリーは十分な量を使用し、空気が介在しないよう密着。

    • プローブは清潔を保ち、ラップ等で感染対策を。

    • 観察したい部位では滑らせるのではなく静止させて確認。

    • 患者の快適性と尊厳を保ちつつ、正しい体位・圧迫力を心がけましょう。


    7. エコー画像の評価ポイント

    • 筋・腱・血管・臓器などの形態や動きが明瞭に見えているか。

    • 撮像方向やプローブの角度が適切か。

    • 身体所見と一致する画像が得られているか。


    おわりに

    エコー検査は誰でも簡便に行える一方で、「画質」や「操作の工夫」によって診断精度が大きく変わる検査でもあります。基本の手順を丁寧に押さえることが、より質の高い医療に繋がります。ぜひ、日々の実践にお役立てください。

    YouTubeでも学べます!

    当院のYouTubeチャンネルでは、糖尿病性足潰瘍の予防・評価・ケアについて医師がわかりやすく解説しています。

    👉 さくら在宅チャンネル(YouTube)


    📘 詳しくはこちら

#在宅医療

#超音波検査

#エコーの基礎

#音響インピーダンス

#医療の可視化技術

#音速と減衰

#臓器の見え方

#白黒の仕組み

#身体の中を音で見る

#高エコーと低エコー