在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する10~超音波画像の見方入門:基本走査・エコーレベル・描出の実際

1. 縦断・横断走査の基本

体幹部の走査法

  • 縦断像(長軸):モニター画面の左が「患者の頭側」、右が「足側」

  • 横断像(短軸):モニター画面の左が「患者の右側」、右が「左側」

● 四肢の走査法

  • 縦断像(長軸):画面左が「近位」、右が「遠位」

  • 横断像(短軸):画面左が「外側」、右が「内側」

💡モニターの左右は体位とボディマークにより変わるので、確認してから評価しましょう。


2. エコーレベルの基礎知識

エコー画像では、組織の密度や反射特性により以下のように分類されます。

種類 特徴 表現
高エコー 強く反射し白く映る 骨、結石、脂肪の境界など
等エコー 周囲組織と同等の明るさ 一部筋肉、臓器境界
低エコー 弱く反射し黒っぽく映る 筋肉、実質臓器など
無エコー 音が通過し完全に黒くなる 液体(尿、血液、嚢胞など)

3. 組織別のエコー像の見え方

● 実質臓器(例:筋肉・肝臓など)

  • 低エコー~等エコーの層構造

  • 筋肉:横縞構造(筋繊維)

● 骨・関節

  • 骨表面は白く強い反射(高エコーライン)

  • 骨の内部は音が届かず、後方減衰(シャドー)

● 液体(膀胱・血腫など)

  • 無エコーとして黒く抜ける

  • 境界は白い輪郭線


4. 走査部位別エコー像の実例(図5より)

部位 観察画像と所見例
前腕 骨・血管・筋肉層を確認(尺骨・橈骨の区別)
下肢血管 カラードプラで血流確認、静脈瘤やDVTの評価
皮下組織 脂肪層・筋膜の厚み・浮腫の有無

5. 機器による画像差と精度

● 装置による膀胱画像の違い(図1参照)

  • 同じ被検者でも、機種によって尿の無エコー領域の輪郭に差が出る

  • 高画質な機種ほど、膀胱壁や内容物の境界が明瞭

● 尿量計測精度(図2)

  • 複数機種による測定結果の比較では、おおむね実測値と良好な相関あり(r = 0.85〜0.94)

  • 信頼性の高い手持ち型装置でも、使い方と観察者の技術により再現性は変化する


まとめ:エコー画像を読む力を磨こう

  • 「何が白く」「何が黒く」映るかは、エコーレベルの基本を知ることで理解できる

  • 見え方には体位やボディマークの向き、プローブの持ち方も影響する

  • 装置の特性も画像の明瞭さや計測値に影響を与えるため、目的に応じた機種選定が重要


🔍 実践のヒント

  • 肉眼でわかりづらい浮腫や血流変化も、エコーでは客観的に評価できます

  • 頻用プローブ(リニア・コンベックス)を理解し、基準画像と比較する習慣をつけましょう